16 武術祭 ──二つの煌めき──
驚愕の第一試合は誰も理解できず、中には何らかの魔法を疑う者もいたが、魔力感知に引っ掛からなかったため特に問題にはならなかった。
続く第二試合は、槍使いの青年と刀を持った逞しい中年の男だった。
「続いての試合は、槍術士オーウェンvs居合いマスター、ガディウスです!」
割れんばかりの歓声が起こる。そんなに人気者なのか?
「槍術士のオーウェンは、なんと、世界に名を馳せたあのオルブライのご子息!そして、その父を超える才気という噂の持ち主!彼の突きは光をも超えるっ!!」
あのオルブライって誰?世界一の槍使いとかかな?
「対するは、ガディウーース!言わずと知れたドラゴン狩り!納刀の音を聞く時、彼の前には何者も存在できないっ!」
な、ドラゴン………だ……と?この世界に本当にいるのか!予想はしてたが早く見たいなぁ。
「第二試合、開始!」
開始と同時に動くかと思われたが、お互い出方を伺っているようだ。
ジリジリと両者の間合いが狭まる。そして………ついに動く。
先に動いたのはオーウェン。力強い踏み込みから、目では追えない程の速さで乱れ突きを放つ。
カカカカカーーーン!
指で鍔を弾き抜刀したガディウスは、迫りくる槍の雨を寸分違わず弾き返していた。
「なっ」
オーウェンは驚いた。父以外にも防ぐ者がいたことに。同じ理由で高揚もしていた。
そして、相対するもう一人も。
「いいーねぇー。じゃあ、今度はこっちの番だな!」
ガディウスが一瞬で懐に入り、束で鳩尾を狙う。が、オーウェンも戻す柄の部分で受け止める。しかし、流れるような動作から来る袈裟斬りを、先程防御に一手を使わされたことにより、わずかに被弾することになる。
離れて槍の間合いに持っていくことでオーウェンが盛り返す。ガディウスは隙あらば瞬時に間合いを詰め、剣舞のように斬りかかる。
そうして、オーウェンの槍が今までよりわずかに強く弾かれた時、それは起こった。
剥き出しだった獣のような気配が一点に収束する。
ガディウスは半身を前に出し、弾かれた槍を戻し構えを取り直すオーウェンに向け、腰を鋭く捻る。
「来るっ。」
居合い切り………いや、それ以上の物をオーウェンは直感した。
隠れていた左腰の鞘から光が漏れる。
『瞬閃』
その光の後には全てが地に伏すという超光速の抜刀術。
彼はそのうち『三閃』を放った。
光速の太刀がオーウェンを襲う。腹部に向けられた一の太刀を槍で弾くが、返す二の太刀が足を、三の太刀が首を同時に狙う。
(く、こりゃ無理だなっ)
オーウェンは諦めた。全てをかわすことを。
「ここだっ!」
オーウェンはニの太刀を下がることで避けつつ、青い光を纏った槍を放つ。
「うおぉーーっ!!」
彼が放ったのは『グングニル』。それは紹介にもあった彼のスキル。光をも追い抜くという突きがガディウスに向かう。
膨大過ぎるエネルギーのぶつかり合いにより、土煙が二人の戦いを包んだ。
「勝負あり!」
やがて見えた結果は、身体を捻って槍を紙一重でかわしたガディウスと、首筋に三の太刀を寸止めされたオーウェンの姿であった。
「勝者、ガディウス!」
一拍おいて沸き起こる代喝采。二人の健闘を讃える声が会場を包みこむ。
「あー、負けたかぁ。まぁ仕方ないか!あんなもん見せられたらな。」
「お前ぇ、良かったぜ!まだまだ荒削りだがよぉ。また、やろーや!」
「ぷっ、僕を荒削りですか!面白い人だなぁ。あなたのその高い評価に見合うよう、次はもっと楽しませてあげますよ!」
両者は固く握手を交わし、舞台を降りた。