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1 強くてニューゲーム?

 ここはどこだろう。


 自分の部屋ではない。夢の中みたいな、ぼんやりとしたどこか不思議な空間だ。そんな疑問に首を傾げていると、ゆらゆらした人影のようなものが現れ、俺に声をかけてきた。


 それは性別も年齢も読み取れない、不思議な声質だった。



「御主は死んだのじゃ。そして新たな生を迎えることになるのじゃが、次の世界は今までの世界より少々厳しいかもしれん。魔法もあるし、モンスターもおるぞ。まぁ御主風に分かりやすく言えば、異世界転生ものみたいな話の流れじゃな。御主の今世があまりにも不憫だったので、次は頑張ってほしくてな。」


「うおっ、まさか神様っ!?………て、ちょっと待て。今何て言った!?」



 なんか第一声で死亡通達された気がするんだが。それに異世界転生? ていうか、俺の人生そんなに不憫でもなかったぞ?



「御主は死んだのじゃ。そして新たな生を迎えることになるのじゃが、次の世界は今までの世界より少々厳しいかもしれん。魔法もあるし、モンスターもおるぞ。まぁ御主風に………」


「もういいよっ!」



 さっきと全く同じ台詞を言いやがった。こいつ………できる!


 どうやら俺は死んだらしい。いつの間に死んだんだろう。死ぬ直前って何してたっけ?たしか会社の同僚と飲みに行って、帰って風呂に入ろうとして………って、そこから記憶がないぞ!?もしかして風呂で寝て溺れたのか?うーん、そんなに酔っ払ってなかったと思うんだけど。



「なぁ、俺どうして死んだの?」


「………世の中には知らぬ方が良いこともあるぞ。」



 風呂で溺れるのも恥ずかしいといえば恥ずかしいが………あれっ、違うのかな?


 そう思いつつ先を促す。



「いいんだ。ばっさり言ってくれ!」


「そうか………わかった。ならば話してやろう。御主の直接の死因は風呂で溺死じゃ。風呂場の入口に石鹸が落ちており、それを踏んだ御主は滑って湯舟に真っ逆さま。絶妙なバランスを保ちながら、さながら某探偵物の死体ように倒立しておったぞ。なかなか天晴れな姿じゃった。ある意味、人生最大の見せ場じゃな!カッカッカ。」



 おお、神よ。なんということでしょう。そんな無様なポーズで生涯を終えることになるなんて。しかも頭隠してアレ隠さずな状況で現場検証とかされたんですか?されたんですね?ぬぉぉぉ、穴があったら入りたい!第一発見者はさぞ驚いたことだろうな。事件だと思われないか心配だよ。



「ち、ちなみに第一発見者は?」


「御主の彼女じゃよ。」



 ぐふっ!あー、やっぱりそうか。

 まぁ、俺は一人暮らしだから彼女である桜か会社の人あたりだろうとは思ったけど………。イヤなお別れになっちゃったな。



「とまあ、ここまでが表向きの真実じゃ。」


「ん? 表向きも何も、俺が石鹸踏んで滑って○神家になったってだけの話だろ?他にも何かあるのか?」


「あぁ………裏の真実がな。実はだな………」



 ゴクリ。

 今明かされる真実。俺の不運な死に、一体どんな真相が待ち受けているというのか。

 一気に緊張が迸る。



「………あ、すまん。そろそろ時間がなくなってきたんでの、また気が向いた時に教えてやろう。それより早く生まれ変わる準備をせんと。」



 ガクッ。



「ちょっ、えーっ!?何だよそれ。すんごい気になるだろ!!」


「まぁ落ち着け。このままじゃと御主、貧弱村人Aに生まれてスライムに一発KO。またもや○神家エンドじゃぞ?」



 くっ、そう言われては仕方がない。生まれ変わってもそのオチはさすがに屈辱すぎるな。とりあえず従うしかないか。



「強い方がいいか?それとも普通でいいか?」


「そりゃあ強い方がいいに決まってんじゃん。せっかくの新しい人生なんだ。目指せ、世界の頂点!」


「んじゃ、強ニューじゃな。」



 強ニュー? あぁ、強くてニューゲームってことかな?



「それとな、ここにあるやつから一つプレゼントじゃ。何でもよいぞ。好きなのを選ぶがよい。」



 次の瞬間、眼前には光輝く剣や槍、神々しい杖、魔力を内包してそうな古びた重厚な本など、いかにも伝説級といった武器などが用意されていた。


 ふむ、ここで伝説級の装備で電撃デビューもいいな。だが、俺の答えは既に決まっている。この場合の正解は………これだっ!



「お前だ。お前を連れていく!だって神様なんだろ?なら、これが正解パターンのはずだ。」


「な、なんじゃと!?まさかそんな選択をするとは。くっ、仕方あるまい。そう、指名されては仕方ないのじゃ。ではいくぞっ。ポチっとな!」



 結構あっさり受け入れてたな。ていうか最後の方、なんかノリ良くなかったか?


 目の前が少しずつ暗くなっていく。


 そして徐々に薄れゆく意識の中、微かに聞こえた気がした。その不透明な声がどこか不穏さを帯びていくのを………。



「ふふっ、計画通り。」


 と。

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