晩御飯
訓練、訓練、訓練の日々が続き
ガンジーは7才になった
マーニャ母さんが男の子を産んで待望のお兄ちゃんにもなった。
姉2人は弟の側に張り付いて居るのでやっと解放され、晴れ晴れとした日々を過ごせている
独りで町を出て南に向かって歩いているガンジーの手には穂先が鉄製の短槍が、腰には細身のショートソード。上半身には母テレサが手拭いで作ったモンスターの皮のベストとフル装備。
爺ちゃんも父ちゃんも母さんも相変わらずの甘甘で有る。
この半年程剣術の訓練も午前中に済ませ弁当持参で町から南に3キロ離れた海岸に通って土魔術の練習に没頭してるのには理由が有る
領地の南に果てしなく広がる紺碧の稜線である海と
左右にせり出すように続く緑である山と裾に広がる森が
領地の最南端から見える景色の全貌
東の山も西の山も海に突き出て岬になって視界を遮り
山裾には1キロ程の森が双方の山に
巨岩がゴロゴロする荒れ地の先に在る海岸線は東西に三キロ余りの崖が続く。
これが視界に入る全幅6キロ程の景色の全て。
崖の高さは最低が15メートル、最高が20メートル程で海岸に降りる為にはロープを下ろして降りるしかなく危険過ぎる
不満に思った俺は毎日海岸線を削り始め半年間で海辺から60メートル、横に150メートルの砂浜を作り上げてしまった。
崖の土砂はアダマンタイト53グラムに変質してポケットに収まってる。
独りだから眠るのは危険な為に眠気に襲われる前に休憩を繰り返し作業を続けてやっと納得出来る景色が出来上がり満足感に充たされる。
因みに家族には内緒である。
流石に驚かれるか、呆れられるのが解ってる為に。
さあ!
「釣るぞ!」前世では釣りも趣味の一つ
海が有るのに釣れない...
食卓に海産物が登った事がない。
海が近いと知ってから納得出来ない想いを抱く日々を解消する為に毎日7時間程度コツコツと努力を積み重ね、目の前にはやっと想い描いていた景色が広がってる
さぁ!家族に美味しい魚を。
ポケットから出した糸束に魔法で作成した針を結び、海岸の石を捲って餌を探す
ミミズに似たイソメっぽいのがいたから手袋越しに掴んで針に刺す。
糸の長さ一杯に使って投げる距離は15メートル程
竿はないので糸を直接手で持っての脈釣りだ
「早!」
直ぐにガツンと当たりが。結構強い引きを感じるが手袋が有るので問題無く対処出来る
石鯛に似た50センチ程の大物が簡単に釣れた
持って来た袋に放り込んで再度挑戦
「何これ」
又1分もしない内に強烈な当たりが
今度も同じ魚だがサイズが一回りデカイ
家族全員でも2匹有れば十分足りるハズ
鮮度も落としたく無いので今日は帰るかな
結構重い...13キロくらい有りそう
重いし家に着くまで身体強化使って魔力も消費しなきゃね。
「母上今晩のオカズを獲って来ました」
「お帰りなさい。え?これって高給魚の..」
「そうなんですか?簡単に獲れましたよ」
「本当に簡単そうに言うのね」
笑いながらテレサ母さんは何時ものように頬擦りしてから台所に行こうとするので
慌てて魚の入った袋を取り上げて運ぶ
「ウフフ、ありがとう」
「訓練して来ますね」
照れながらの退出に又笑われる
「このイシガキは何処で獲ったのだ?」
晩御飯の席につくなり爺ちゃんが聞いてくる
「南の海ですが」
「あそこは断崖で海に近付けないであろう」
「はい、ですので土魔術で道を作りました」
いつかはバレるので正直に答える
「あそこは水棲モンスターが多い、気を付けるのだぞ」
「そうなのですか?気を付けます」
「特にイカーンと言うモンスターが凶暴じゃ。水辺から10メートル程は上がって来るしの...美味なのじゃが危険過ぎる」
「御教示ありがとうございます」
「うむ」
晩餐の一幕なのだが爺ちゃんの心配そうな雰囲気が...
過保護である
でも魚は旨い
家族全員がニコニコ美味しそうに食べてる
明日の朝の稽古は海迄2回ランニングかぁ
同じ事2回言われるのも確定だし
就寝前の特訓して早めに寝なきゃ..
翌朝思った通り海岸迄のランニングが爺ちゃんから課せられた。海岸を見た爺ちゃんの反応も予想通り
「これをお前1人で成したのか?」
あんぐりしてた顔を引き締めて爺ちゃん
「はい」
「そうか...」
「暫くは内密に御願い出来ないでしょうか?」
「うむ、解った」
余程驚いたらしくこれ以上の会話は無く帰宅する事に
父ちゃんも全く同じ展開と会話に
本当に行動も思考も似ている