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ガンジー(元爺)サーガ  作者: タマ
202/206

大遠征

「ミニラ、クライム迄の海岸の形と海沿いにある町の場所を覚えられるかな?」


「大丈夫だけど、なんで。パパ」


「俺は覚えるのが苦手だし、位置とか場所が把握出来ないんだよ。人魚達を連れて帝国に行かないとダメなのに、また薪や食料の調達で慌てるのも困るからね」


「わかったけど、クライムに帰ったら牛の丸焼きとケーキと添い寝だからね!パパ」


「牛の丸焼きとケーキは問題無いけど、添い寝は帝国に行く途中になるよ」


クライムに帰る為にイズモを飛び立った後の、ミニラとの会話である。偉そうに皇帝の首をすげ替えるとかほざいてる癖に、ミニラが居ないと何も出来ないダメな奴って言うのが現実だ。こんな奴が本当に好き放題やってて良いのだろうか・・


いつの間にか寝落ちたのだろう

「パパ、クライムに着いたよお」

のミニラの声で起こされた


「ミニラ、疲れたかな?もし大丈夫ならアスミーに向かって欲しいのだけど」


「いいよお」


不服も言わずに向かってくれるミニラには、感謝するしかないが。時間が足りないのも事実なのだ・・遠征軍を選抜しなければならないからだが。その為には嫁達を集めての会議が必要になる。人魚達の自立心を養う目的で決めたルールを決めた本人である俺が破る訳にはいかない


クライムに着いた時点で夜中を過ぎていた、アスミーに着いたのは深夜の1時過ぎ。


真っ先に目についたマールーの所に向かい

「マールー、クライムで緊急会議だ。皆を起こしてくれ」

起こした


集まった6人の嫁達の中に、眠そうにする者は1人としていない。初めての緊急召集に緊張した顔ばかりが並ぶが、説明を2回するのは面倒だ。クライムで全員が揃うまで我慢して貰おう


「先ずは報告から先にする。クライムから東へ1万キロ離れた場所にあるガミラス帝国と言う国で、1000名足らずだが人魚達を保護した。内訳は15才以上の人魚が19名と子供達が978名だ。子供達を保護し、育成すると共に。帝国に抗議を申し入れる為に軍を派遣したいと思うが。お前達はどう考える?」


「それだけでは状況が解らないので、詳しい説明をお願いしたい所ですが。1万キロも離れた場所の人魚達に手を差し伸べる理由を聞いても宜しいですか?同胞達のことは気の毒だとは思いますが、1万キロも離れた場所となると。向かうにしても帰るにしてもかなりのリスクが伴うと考えられます。それを圧しても軍を進める理由がガンジー様の中には有ると思うのですが、聞いても宜しいですか」

流石国政を6年も司さどつてきたサールーだ、感情には流されず冷静に判断している。同族に対する同情や哀れみより。身近な仲間の命を優先するのは正しい、正しいがそれだけでは駄目だと今回の帝国行きで思い知らされた


「サールーが言う事は正しいと思う、遠くの付き合いもない同胞の為に仲間の命を危険にさらすのは愚策だ。だが、自分達の子供達、孫達の為に命を賭けるのは意味のある挑戦だと思うんだ。今の状況はローレシアとパトロンドに限り、人魚達の国と認められ。敬意を払って貰うことも出来ているが、それ以外の他の地域では以前として人魚は奴隷と言う認識が変わった訳ではない。至る所で虐げられているのが現実だ。何処かで大国が興り侵略の手が伸びたり、近隣の国家がパトロンドより強国になっただけで現状が変わったりすることも考えられる。それを防ぐには、人魚は好き放題に捕まえて奴隷に出来ると言う認識を、人魚に迂闊に手を出せば痛い思いをするという認識に変えさせないと無理だということに気付いたんだよ。それが出来るのも、俺とミニラが居る今しか出来ない事だとね。俺は今回、帝国皇帝の首を取ろうと考えているんだ。人魚達を理不尽に殺した対価として見せしめになって貰おうかと考えているんだけど。皆はどう考えるか教えて欲しい」


またやってしまった・・理由を聞かれて説明した時点でほぼ可決が決まってしまう。嫁達は俺の望みを叶える事が使命みたいな所がある・・本当は人魚同士で意見を戦わせて欲しいのだが


軍の派遣はあっさり決まり、桁の上がった者で死ぬかも知れない旅になるのを受け入れられる者だけを選ぶように頼んだ


会議の間中、頭を撫でろとばかりに側で寝転がっていたミニラの手の平に乗って岬の小屋に送って貰う。隣にはシールーも一緒に乗って来ている


「シールー、約束した時には至っていないが。お前は俺がお前に発情することを望むか?」

「望みます!」

「膝に乗る権利を剥奪されてもか?」

「発情して貰える方が嬉しいです!」

「分かつた、今日からお前は俺の嫁だ。子種はやれないがそれでも良いか?」

「はい」

シールーは15才、少し早いとは思うが帝国から生きて帰れる保証は無い。待たせ続けて俺が死んだでは、9年余りの歳月が逆に重い枷になりかねない。余りにも哀れだと思ってしまった・・


膝に座る権利は、子供達と同じように前向きに座るものだと思って許可したのだが。横座りで首に手を回し、肩に顔を埋めやがった・・事有る毎に膝に座りベタベタするシールーを見て、人魚の嫁達が焼き餅では無くて、自分も座りたいと言う思いが募り平静でいる事が出来なくなり。ギスギスした空気が漂って困っていたのだ


悩みは解決したが、肩の荷物がまた1つ増えた気がした



翌日の昼前に迎賓館の1階に、シルエットとユーリアと全ての愛人達が集まっていた


その前で俺は土下座をしている。言って置くが昨夜のシールーとの営みがバレたからでは決して無い!


頭を上げて

「お前達に頼みがある、暫く俺に自由になる時間をくれないか」

そう一息に告げていた


「先ずは話せるならばで結構ですので事情を説明して下さいませ」

ユーリアが聞いてきたが、事情も説明せずに時間をくれとは話が通らないと反省するが。戦争に行くとは言い出し難いのだ・・ここの女達は自分も行くと言い出しかねないから怖い


「東の帝国と呼ばれる国が、人魚達に苛酷な扱いをして9割りにも及ぶ死者を出している現状をどうにかしたいんだ」

正直に現状を話したが、既に保護したことや、これから成そうとしていることは話していない


「それでどうなさいました?」

静かに見詰めるように問い掛けるシルエット・・その目は止めて欲しい、全て見透かされている気持ちになってしまう


「こ、子供達を1000人程保護したな。大人の人魚の生き残りは19人しか居なかったんだ。それも5体満足な者は皆無だった」

少し逃げ出したい気分に襲われる、静かに見詰められるのは苦手だ・・


「それで、どう為さりたいのですか?」

・・・全て話せと言われている気がする


「このまま放置すれば、同じ事が繰り返されるだろうな。だから愚かな皇帝の首をすげ替えようかと考えている。今の状況では、クライムとパトロンド以外の他の地域では人魚は好き放題に捕まえて奴隷とし、道具として使い捨てるのが常識として罷り通っているのが現実だ。その認識を変えなければ、クライムの人魚達に未来は無い!人魚国を敵に回すと痛い思いをすると言う認識を他国に、それも出来うる限り遠方迄鳴り響かせたい。その為には帝国の皇帝はうってつけの生け贄になってくれるだろう。だが相手は大国、かなりの時間が必要になるだろう。お前達の側に居られないことを許して貰う為に頭を下げたんだが。駄目だったか?」

誤魔化そうとしたのにやっぱり無理だった。仕方無く全て正直に話す・・テレサ母さん達とシルエットに隠し事など出来ないと知りながら隠そうと足掻く。懲りない奴である


「なるほど、そう言うことでございますか。ガンジー様らしい考え方だと納得致しました。クライムの事はお気になさらず存分にお働き下さいませ」

「「「「「「ご存分にお働き下さいませ」」」」」」

微笑みながらそう告げてくるシルエットに、愛人達も唱和する


「えっ???」

予想外の反応に、不覚にも一瞬固まってしまった


「何が、えっ?なのじゃ」


「そ、それはだな。戦いに赴くなら私たちも参りますとか言い出さないかと心配してたんだよ!」


「勝算の薄い戦いにお前が挑むと言うので有れば、当然ついていって共に戦うと申すが。勝つと決まった戦にわざわざついていって肝心のクライムを留守にするような愚かなおなごは、ここには居らぬわ!」


「相手は大国だ!勝てるとは限らないんだぞ」

クリス相手にまたムキになるが


「お前が1万キロも離れた場所にわざわざ赴くのじゃ、勝算が9割り以上は確実じゃと見たがのお。それとも何か、淋しい故ついて来て欲しいと申すのか?ほれ申してみよ」

反対にからかわれる始末である


「頼んだからな!」

いたたまれずにその場を去るが、未だにこの世界の女達の心得と常識が掴み切れないガンジーである


暫く留守にする為に、パトロンドで借り受けた酒場の建設予定地をどうするか話し合う為にライオスの王宮を尋ねたが


「そんなものはお前が建てたいと思う大きさと希望を元に、図面を引いて金さえ渡して置けば、後は族長達が全てやりおるわい。それで半年や1年は問題無い筈じゃ。それとも何か?お前は5年も10年も留守にするつもりか?」

ラビト爺さんに問題外発言されてしまった


「そう言ってもなあ、相手が大国だから簡単には片付かないと思うんだよなあ」


「大国とは、一体何処の国と戦をするのだ?」


説明するのが面倒だったので、遠方で人魚達が虐殺されているから。馬鹿な国王の首をすげ替えに行ってくると告げたのたが・・状況が掴めないゴロウが聞いてきた。結局説明することになるのだから、手を抜かない方が楽なのであった・・・・


「東のガミラス帝国と言う国だ」


「ガミラス帝国だと!俺の6代前の婆さんの故郷を滅ぼした国か?東に1万キロ余りの所に有ると聞いたが」


「東に1万キロなら多分お前が考えている国と同じ国だろうな、婆さんの故郷の名前は何て言うんだ?」


「パンダリオンと言う、かなりの隆盛を誇った国だと聞いていたんだがな。もし王家の生き残りがいて幽閉されるか奴隷に落とされていたら、出来ることなら情けを掛けてやってくれないか。逃げ延びて困窮しているようなら金貨を渡してやって貰えるとありがたいのだが」


「パンダリオンなら滅びて無いぞ、当時開拓中だった島に移り住んで難を逃れたと聞いたな。もっとも、島の開拓が国を奪われる元になったらしいがな。お前の親戚なら見に行ってやろう、クリスの親戚でもある訳だからな」


「助かる、滅んだと言う話を聞いたのが3年前。その時に既に1年もの時が過ぎていると聞かされたからな。婆さんが嫁いで来なければ、今の俺は生まれてこなかったかも知れんのだ・・」


この世界は血に拘る、己のルーツに対する思い入れが大きくなるのは当然の成り行きだ


ラビト爺さんに、店舗の方は後回しにして。店舗の奥に、先に20人が生活出来る寮の建設をする事を頼み。それぞれの領地の責任者達に渡して貰う為に金貨を用意しようとしたら。

「立て替えさせて置けば良いわ!その位の金額で困る族長は今のパトロンドには居らぬでな。この6年程は、お前のお陰で戦も部族間の争いも起こっておらぬのじゃからな。ワハハハハ」

笑い飛ばされた・・


「俺はこれから戦に行くんだぞ、死んだら払えない。それでも良いのか?」


「気にせんで良いわ、種を残して貰っておるでの。お前が死ぬなどとはとても考えられんが、もし死んだとしても香典代わりじゃ。さっさと行って、とっとと戻って参れ」


ランの爺さんだから、俺にとっても爺さんみたいなものなのだが。血生臭い場所に行かなければならない者にとって、温かい軽口は心地良かった


「ああ、行ってくる」

そう告げて、ライオスの王宮を後にした

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