ヘタレ衆のララバイ3
8人のヘタレ衆と人魚達のお見合いは、俺のイタズラ心を大いに満足させてくれた。8人の男達の顎が揃ってカコンと落ちたまま暫く惚けたように見とれていたのだから
女性は綺麗に洗って着飾らせ、ほんの少し頬紅と口紅を挿すだけで。まるで別人のように変わってしまう・・特に美人魚達の変貌は凄まじい
くすんだ感じが取れ、輝いて爽やかな色香が匂い立つようだ。目元に漂う優しさに、普段の厳しささえ何処にも見当たらない。8人が見惚れるのも理解出来てしまう・・
「お前達の正面に座って居るのが、お前達の愛人となってくれる人魚達だ。誰か不満の有る者は居るか?」
たとえ居たとしても無視するつもりだが、一応聞いておく
「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」
全員が惚けたまま言葉も出ない、それも当然かも知れないな。綺麗になっているとはいえ、ランチ達も気付いた筈だ。前に座っているのは、普段鍛えて貰っている師匠達だと、人魚国の幹部達なのだと
「しょ、将軍。何の冗談ですか!師匠達を愛人になど出来る訳が無いじゃないですか。分不相応に過ぎます」
ようやく息を吹き替えしたランチが言ってくるが
「なんだ、ランチはレイレイが気に入らないのか?」
「そ、そうでは有りません。師匠と私では格が違うと言っているのです」
「レイレイ、ランチはお前の格が下だから自分とは釣り合わないと言っているぞ」
その言葉を聞いて、悲しげな顔をするレイレイに
「な、何を言っているのですか!将軍。私の格が下だから釣り合わないと言ったのです!私が下です」
分かっていながら無理矢理振った嫌がらせに、必死になって抗弁するランチが面白くて。吹き出しそうになるのを堪えるのが大変だ
「なら、格下の方から不満を言うのは間違いだと理解出来るな!有り難く人魚達の好意に甘えろ。ただし人魚達に触れる事は許すが、体と反応速度の調整が終る迄は入れる事は許さんからな!その事だけは守れよ」
当分は人魚達の厳しい指導の元で、ランニングと素振り。そして巻き藁に打ち込む訓練が続くだろう
そして疲れた体を人魚達が膝枕で寝かし付けるのだ、当然抱き締められたら胸が当たるし、胸を吸うのも問題無いが入れるのは拒否するように人魚達にも言ってある。別に調整が終わらなくても最後まで行って問題無いのだが、性格の悪い俺の単なる嫌がらせだ。
生殺し状態を満喫して貰おう♪鬼である
次の日から夜更けに、岩〇宏美の聖女達のララバイが聞こえるようになった。
俺が好んで口ずさんでいた曲の題名を聞かれ、ララバイの意味を聞かれて(子守唄)だと教えた為だろう。人魚達には歌詞が気に入られたみたいだ、特にサビの部分が
このまちは~♪戦場だからあ~♪男はみんなあ~♪傷を負った戦士~♪どうぞ~心の痛みを拭って~♪小さな子供の昔に帰って熱い胸に~~甘えて~♪♪♪
人魚達には戦場と戦士のキーワードが受けたのかも知れないな、戦闘狂達の集団だけに・・
残ったロウガの指導員だが、愛人ではないので特別に、最高に優しくて教え方がもっとも上手く最高に厳しいヤールーに任せる事にした。必然的にロウガの貞操の危機は黒組の有志達が守る事になる。今回の愛人に黒組のメンバーが1人混じっていたので、若干の不安は残るが・・・・
クーガーとミラージュは、クライムで暮らす獣人の子供達の明るさや伸び伸びした態度に目を見張り。ヒイロを交代で抱いて、手の空いてる方が子供達に稽古を付けるジョン爺ちゃんとウエイン爺ちゃんに手合わせを求めてあっさり負けていたのは見ない振りをすることにした。俺との手合わせを求められても面倒だ・・
そう言えばエリーゼが強くなった、剣ではユーリアに少し圧されているが、槍ではユーリアを余裕であしらっている。後少ししたら最後の桁上げに連れて行っても問題無さそうだ
俺はカジャの所に行き
「爺さん、酒の出来具合はどんな感じだ?」
「おお、呑んで比べて見たぞ。3ヶ月の時間が待ち遠しかったがな」
「それで?」
「1回の方は旨いがちともの足らんな、2回の方はガツンと来る感じが堪らんぞ。じゃが酒に馴れておらぬ者には少々キツいかも知れんな」
北の公爵領で作る酒の下準備の結果を聞いた。蒸留酒を作る為に蒸留装置を作り小樽で3ヶ月熟成させたのだ。本体には厚さ10センチの大理石を代用して上部の鶴口はカジャに銅で作って貰い、鶴口をモンスターの腸で覆ってモンスターの腸に冷水を流す仕組みに作り上げた。本体を銅で作った場合、費用が膨大な金額になるのだ。銅は土魔術では精製出来ないからだ
後は本体を据えて下から炊く台を作り、鶴口を冷やす為に本体の上部から上2メートルの位置に水槽を作って常時腸内に水を少しづつ流せばいいだけだった。水槽に水を張り氷を浮かべるのは人魚達が交代でしてくれる
蒸留回数を増やせばアルコール度数は上がるが、その分風味が飛ぶ。樽の材料のブナやナラの風味は乗るのだが・・まあ試飲を重ねるしかないか・・
「それと煙り玉の方はどうなってる?」
「それならとっくに出来とるぞ、だいたい1個で20分程しか持たんが。簡単に作れるから問題無いじゃろ」
「助かるよ、ありがとう」
人魚達の駐留地に狼煙台を作って緊急連絡用にしたかった。パトロンドに帰る子供達と愛人の事が心配で考えてたら、浮かんだ案を実行する事にした。これなら人魚達が大怪我をしても、手当てが間に合う可能性も出てくるのだ
忙しい忙しいとボヤキながら、自分の仕事を増やす事になるのを知りながらも不安を少しだけ解消出来ると喜ぶ甘い奴である・・
ミニラのご機嫌取りを兼ねて気楽な気分で煙り玉の設置に向かう。煙り玉を収用する為の小さな小屋を建てる事を頼み費用の金貨と煙り玉を預け、小屋を建てる場所の横に狼煙を上げる台座と受け皿を設置するだけの簡単なお仕事。3日で全ての人魚達の配属地に設置が終了した、後は小屋が完成すれば、稼働状態に入れる
狼煙の欠点である昼間限定と言う問題は残るが、確実に1歩前進したと喜びたい。人魚達には狼煙を見付けたら、狼煙が上がった地区よりクライムに向けてのみ狼煙を上げるように言ってあるので必然的にクライムで狼煙を発見→クライムを出発→狼煙の終着点が問題発生地となるので上空から降りていちいち確認する必要もない。
煙り玉の種類は赤と青の二種類のみだ、赤が緊急事態発生(死人や大怪我をした者が出たり、対処不可能な強者が現れた場合用)青が相談したい事有りの信号として使用する事にする
一応、距離の開いている場所と途中に山などの視界を遮る場所は試験的に狼煙を上げて確認が必要だろう
忙しい中、エリーゼの桁上げの為にミニラにエリーゼと二人で乗りメリットに出向いた。パトロンドに動向した見覚えの有る女性冒険者7人に剥ぎ取りを頼み、キングリーとダイコを狩る。2度足にはなるが、エリーゼをクライムに戻して介抱をユーリア達に頼んで再びメリットに。女性の痛みの軽減為なら手間隙は惜しまないガンジーである。男性達の痛みには無頓着なのだが・・・・
メリットの冒険者ギルドへ行くと、既に剥ぎ取った素材は試算を終えて受け取るだけになっていた。素材の代金を受け取り、女性冒険者達に礼を告げて帰ろうとしたら
「ガンジー将軍、久し振りに会ったんだから。食事くらい奢ってよ」
と言われたので、食事くらいならと気安く了承すると
お洒落な感じの静かな酒場に連れて行かれたが、何やら空気が不穏な気がする。隣に座った女の子がしきりと視線を向けて来るのだ
「その子、この4年間彼氏も作らず将軍の事を思い続けてるんだよ。なんとかしてやっておくれよ」
正面に座った女性冒険者に言われたが、俺には恋愛ゴッコをしている余裕も時間も無い。その上、シルエットとユーリアに平民には手を出すなとキツく釘さえ刺されているのだ
「気持ちは嬉しく思うが、俺は来月にユーリアと言う娘と結婚するんだ。悪いが答えて上げる訳にはいかない、済まない」
そう言ってテーブルに大金貨を1枚置いて、立ち上がった
前世なら美味しいシチュエーションなのだろうが、今世では女難が過ぎる。全て女神様の加護のせいだとは思うが、果報も過ぎれば苦痛でしかない・・
又女神様が何処かで笑っているのだろうかとか考えてたら、(フフフフ)と女神様が笑う声が聞こえた気がした




