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ガンジー(元爺)サーガ  作者: タマ
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心のあり方

食事をしながら話をしていると、女神様の御言葉が聞けると言うだけで。

「どうして俺はこれ程敬われないといけないんだ!」

と言う愚痴と言うか不満が俺の口から出ていた


「粗略に扱われるよりは良いじゃろうが」


「その挙げ句が種馬扱いだぞ、確かに女達は優しいしありがたいとは思うが・・女達と子供達の将来の設計を立てるのにどれだけ苦心してると思うんだよ」


「確かにあの数では、養うのも満足させるのも大変なのは解るが。羨ましいとも思うぞ」


「シルエットに振られた奴にはそうだろうな」


「ぐっ!」


「それより爺さん、獣人達がおおらかで生真面目な者が多いのは分かるが。信仰心が厚過ぎ無いか?俺みたいな若造で、それも人間に頭を下げるなんておかしく無いか?」


「それは女神様を敬ってはおるが、畏れてもおるからじゃ。今世の死は覚悟さえ有れば然程恐ろしゅうは無いが、死んだ後の世界が永遠に続く苦痛じゃったりしたらと考えたら恐ろしゅうは無いか?生まれ変わった来世が、人以外のものじゃったりしたらどうじゃ?ワシは恐ろしゅうて女神様の怒りを買いたいとは思わぬぞ」


「爺さんは、輪廻転生を信じているのか?ゴロウもか?」


「輪廻転生と言う言葉は知らんが、人は死んで魂だけが天に帰り。再びこの世に産まれると教えられたな、お前は違うと思うのか?」

ゴロウが逆に聞いてきた


「いや、俺は魂の存在は信じるよ。生まれ変りもな」

体験者ですから


「アマテール様がこの世の全てを創造されたのじゃ、死した後の魂の行き着く先もアマテール様の御心のままなのじゃ。それを畏れて何が悪い!」


「有るかどうか解らない死後の苦痛を恐れて、俺みたいな若造に頭を下げるのはどうかと思うがな」


「お前みたいな若造が他にもおって堪るものか、お前じゃからこそ頭を下げる事も苦にならぬのじゃからのお。竜を従え空を支配し、人魚を従え海を支配し。エルフとドワーフを動かし北のロアンヌ公爵領の民を救い、10年後までも見据える等と他の誰に出来るものか!お前は嫌がるが、見る者が見ればこの辺り一帯の盟主はお前じゃと一目瞭然なのじゃ」


面倒から逃げ出したい為に口から出た愚痴が、やぶ蛇効果で更なる面倒を呼び寄せそうだ


「俺は絶対にならないが、盟主になったら何か良い事でも有るのか?肩の荷が増えるだけだろうに」


「美酒に美食に美女が思いのままじゃぞ」


「爺さん、俺が店を始めたら俺の作った酒を呑んでみろ。最高に旨い酒だからな!盟主等にならなくても俺には全部有る。それより爺さん、シルエットの肝の太さを少しは見習えよ。女神様に祝福を貰っても女神様の言い付けを拒否するって言ってたぞ」


「ガンジー様、あれは女神様がそんな事は仰らないと思ったからです!」


「ガンジー、お前はシルエット殿に何を言ったのだ?」


「女神様が俺と別れろと言ったらどうすると聞いただけだ。ゴロウなら好きな女と別れろと言われたらどうする?女神様直々にだ」


「そ、それは悩むな。その時になって見なければ分からんぞ・・お前ならどうするのだ?」


「女神様はそんな事は言わないと思うが、万が一の場合は断るな」


「神の怒りを畏れぬのか?」


「先の心配より、俺は自分の心に正直に生きたいんだ」


「ガンジーよ、ワシにも女神様の加護を貰って貰えんかのお。出来れば死後の世界と来世の安寧を」


「構わないぜ爺さん、対価を払うならだがな。対価はアマテール様の教会を10ヶ所寄贈と金貨100万枚だけどどうする?」

断る理由を考えるのも面倒なので、無理な対価を提示した


「それは幾らなんでも難題すぎるじゃろうが!」


「簡単な対価だと他の者にもねだられて、俺には何かをする暇さえ無くなってしまうんだよ!諦めろ」


「酷い奴じゃの、話は変わるが。お前は何故愛人達をわざわざクライムに連れて行くのじゃ?春と秋にフラりとやって来ては気に入った娘が居れば、宿にでも連れ込んで種だけ蒔けばそれで済むじゃろうに」


「何て事を言うんだ爺さん、嫁のシルエットの前で。逆に聞くよ、何故そんな事をしなくちゃならないんだ?」


「お前も色々な娘と楽しみたいじゃろうが、他の者ならそうはいかんが、お前の血は特別じゃ。お前が望めばどの部族も喜んで畑を差し出すのじゃから種を蒔けばよい。後の面倒も心配も要らん一夜限りの契りでも構わんと口を揃えて言おうに」


「他の奴は知らないが、俺はそれを楽しいとは思わないんだよ。何より男達が女達を物扱いしてる事が気に入らない。それにな例え1000人の娘達を抱いたとしても、それ程違わないもんだぞ。爺さんなら分かるだろ、愛されてするのが一番だ」


「確かに他の女を抱いても、料理の味付けが少し変わる程度の違いしか無いのは知っとるわい。しかし好奇心と虚栄心が満たされるじゃろうが」


「俺はそんな下らない自己満足を満たす事より、女達に愛され続ける事の方が大事だから、必要以上の種蒔きはしない」


「女など、男を愛して子を産むのが仕事であろうに。気など遣わずとも愛してくれるもんじゃ」


この世界の族長の嫁達は離婚も許されず、特例を除き生涯他の男と交わる事もない。前世の記憶に有る、他の男と比較される不安も、女から切り出される別れ話も存在しない。男達はそんなぬるま湯に漬かるような環境に胡座をかいて女達を物扱いしている


だが、確実に女達は心の中に不満を隠し持つようになる。俺の場合はそれではダメなのだ、人魚達の将来を託さないといけないのだから・・


「シルエット、俺はお前を愛し続けるから。お前も変わらず愛してくれよ」

ラビト爺さんとの問答を打ち切る為に、シルエットに話を振ると


「はい!もちろんです」

赤くなりながらはにかむように笑うシルエットは、何年経っても変わらない


げんなりした顔のゴロウとラビト爺さんを残して、退出を告げる。クーガーは孫をあやすばかりで話にも加わらず、先に帰ると言うと頷くだけで此方には視線も向けない。


「シルエット、クーガー父上のヒイロを構う様は少し度が過ぎていないか?」


「ああなるのは分かっておりましたので、お気になさらずともよろしいかと思いますわ」


城の廊下を並んで歩きながらの会話なのだが・・クーガーの性格が理解不能になった


館に戻る為に馬車の手配を侍従に頼み、控え室に戻ると。エルザがソファに座っていたので


「エルザ、どうしたのですか?」

シルエットが問いかけたが


「シルエットお姉様、クライムにお戻りになられるのはいつ頃ですの?」


「ガンジー様、予定は決まっておられますの?」

エルザの問い掛けに、シルエットが俺に聞いて来たので


「天候次第だけど、多分7日か8日には出発出来るんじゃないかな」


「もしよろしければ、わたくしも共にクライムに参りとうございますわ」


「エルザ、折角目も治ったのだから。ご両親とのんびり過ごせば良いのではないか?」


「いえガンジー様、父上達とも話しましたが。わたくしは1日でも早くお側に参りとうございます」

素直な言葉なのだろうが、早く子種を寄越せと言われてる気がするのは、被害妄想気味なのだろう。折角の美女の言葉もだいなしである・・


「シルエット、任せて良いか」


「はい」


俺はトイレに行く振りをして部屋を出た


暫くして部屋に戻ると

「ガンジー様、馬車の準備が整ったそうですので。参りましょう」

「ガンジー様、わたくしもクライムに共に参る事になりました。宜しくお願い致します」


シルエットとエルザが告げて来たので

「エルザ、クライムの生活は大変だとは思うが頑張ってくれ」

「シルエット、行こうか」


淑女の礼をするエルザを残し、シルエットと馬車に向かった


走り出した馬車の中で

「エルザはどうしてゆっくりしないんだ?」


「エルザも春で22になります。少し焦ってるのかも知れませんね。ウフフ」

シルエットが子持ちの余裕をかましてやがりました


「エルザも剣と槍を、使えるんだよな」


「はい、槍はわたくしより強かった筈です」


「獣人達のお姫様って趣味が武術なのが当たり前なのか?」


「趣味とは少し異なりますが、敢えて言葉にするなら嗜みでございましょうか」


「嗜みなあ・・共に討ち死にするのが願いとか言わないよな?」

流石に勘弁して欲しい


「流石にそうは申しませんが、共に守りたいとは思いますね」

脳筋の美女が居ます・・でも頭脳明晰な者は脳筋とは言わないのかも・・


シルエットを送り、新年を満喫するためにラバーニュに向かった


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