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ガンジー(元爺)サーガ  作者: タマ
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親バカ、孫バカの集い

「ミニラ、最近又大きくなったけど。食事とか不自由してないか?」


「んとねぇパパ、お腹はあまり空かないけど魔石は食べたいかな~」


ミニラと虎族の領地に向かい、船から謎の酒の大樽を片手で掴んだミニラがラバーニュに向かって運んでます。本当に大きくなりました・・5千年後の姿を想像したくはありませんが・・


「ならサンドイッチとか牛の丸焼きはもう必要ないな」


「何を言ってるのパパ。あれは食事じゃないよ、心の潤いに必要なんだよぉ」

ドラゴンなのに潤いとか言ってるし・・手を抜かないでね!って釘を刺された気分です


ミニラとの付き合いも後半年と経たずに10年になる。ミニラにとっては一瞬に等しい時間でも、人の10年は長い。今更だがミニラの居ない生活は淋しくて仕方無いだろうな等とらちもない事を考えてた


ラバーニュに着いたのは夜の10時を過ぎた頃、ヒイロの事でかなり時間を費やしてしまったので、ライオスを出る頃には夜になってしまっていたのだ


いつものようにミニラにドラゴンの姉妹亭の裏庭に降りて貰い、裏口から中の様子を伺うと忙しく働くラビィさんの背中がみえた


いつものように抱きつこうと近付く、完全に悪戯っ子だ


「バチン!」

ラビィさんの気配を察したかのような裏拳が、容赦なく俺の左頬に炸裂した。不意を突かれたとはいえ、避けるのは簡単だったがこの後の展開に繋げる為に敢えて受けて。尻から床に落ちた


「痛いよお、殴られたよお、シクシクシク」

わざとらしいのにも程がある棒読みで・・身体を張った関西芸人である


「なんだいガンジーかい、最近変なのに付きまとわれてるんだから。後ろから近付くんじゃないよ!」

叱られた・・


「なんだいガンジーかい、ではない!いきなりの打擲とは、名誉最高顧問に対して無礼だとは思わんのか」

叩かれた痛みの元を取ろうと、悪乗りを続けるが


「御子様扱いして欲しいようだねえ?」

笑いながら瞳に剣呑な光を宿したラビィさんに


「ま、参りましたあ!」

素直に降参する。尻餅を付いた時点でローラさんに後ろから抱き付かれて頭を撫でられているので、威厳等有るわけも無く喜劇にしか見えないのだが・・


「あんた子供もポコポコ産まれてるんでしょ。そろそろ大人になったらどうなのさ」

パンシーさんに突っ込まれるが


「大人なんて詰まらないじゃ無いですか!生涯イタズラ小僧を目指すんですよ俺は!」


「何年経ってもあんたは変わらないねえ」

麦酒のコップを片手に、ラビィさん、ローラさん、メロディさん、パンシーさん、ミネアさんと全員がやって来るので


「皆で来てしまったら、店はどうするんですか?」


「心配無いさ、妹分達が増えたからね」

確かにラビィさんが言う通り、知らない娘達が増えていた


「それならゆっくり呑みましょうか♪裏庭に何時もの大樽を運んで有りますよ」

そう言うと、ローラさん以外がスッと立ち上がり。厨房から瓶を持って来る者と、裏庭に向かう者に分かれた。ローラさんは俺の後ろから抱き付いたままなのだが、最早気にならなくなってる俺も俺である


酒と肴を堪能しながら

「さっき誰かに付きまとわれてる、って言ってましたよね。困ってるのなら手助けしますよ」


「手助けねえ・・無理だと思いますよ。何せランプ兄さんが次代の族長候補の最右翼になったせいですからね」

珍しくミネアさんが一番に答えてくれたが、分りやすいので助かる


「それが何の問題になるんですか」

 

「ただの族長の一族の娘と族長の妹では、受ける恩恵も格の上がり方も違って来るのよ。序列争いをしている連中には、ほんの些細な事でも大切なのよね。藁にでもすがり兼ねないくらいだわ」

呆れたように言うミネアさん


「何でいきなりランプが族長候補の筆頭になってるんですか」


「今月の初めにラバーニュの恒例の祭りがあったんだけど、祭りの催しの部族統一武道会の剣の部で優勝しちゃったのよね。ランプ兄さん」

あらら・・


「その上あたしがこれ持ちだと言うのが広がってねえ」

胸のメダルを見せるラビィさんに。全部俺のせいだった・・料理の達人ならぬマッチポンプの達人と呼ばれそうだと思ってしまう


「正直に言いますが、ランプはそれ程強くは無いですよ。うちに居るランの方が確実に強いですし、まだ訓練中のランチにさえ負けるんじゃ無いですかね」 


返事を待っていたが、全員が固まって唖然としている


暫くして

「あの泣き虫ランが兎族最強ってのは笑えないね」


「本当だわね、あのウジウジ君のランチが強い何て考えられないわ」

ラビィさんに続きメロディさん迄が酷い事言ってます


「まあ、後2日もすれば男の子達が来ると思うので。自分の目で確かめて下さいよ」

説明するのも面倒なので、本人達に丸投げした


翌朝昼前に起きて、ランプの焼いた牛の丸焼きをミニラの口に放り込んでいると

「ガンジー、お客さんだよ」

パンシーさんが呼びに来た


店に入ると9人衆が勢揃いしていた。未だ夕方に近い時間だが太陽は西の空にある、予定より半日程早いな

「早いな、お前達。かなり飛ばして疲れたんじゃ無いのか?」


「いえ、疲れたと言う程ではありません。将軍」

「そうです、この程度の移動は師範達の訓練に比べれば遊びです。将軍」


9人衆には俺の事は将軍と呼ぶように言ったが、人魚達の事は自分達で勝手に師範と呼ぶようになったのだ。遠回しに人魚達の訓練が厳しいと言われている気がするのは間違いでは無い筈。何せ指導しているのが、メイリン、ロンロン、ヤールー達なのだから・・


「あいつらは、強くならなければ生きて行けないと言う事が身に染みてるから仕方無いのさ。海の中は帰らずの森の奥深い所みたいなもんだからな、お前達もサメンの狂暴な姿を何度も見てるだろ。あのサメンの60匹とか70匹の団体がたまに出るし、他にも15メートルくらいある大蛸も出る」

サメンは雑魚扱いで、大蛸は桁上がりの特典付きで指名率ナンバーワンの美味しいお客さん扱いなのだが言う必要も無い・・


顔をひきつらせている者達を見て、初めて聞いた時は俺も焦ったんだからお前達も驚け!とか思ってるガンジーはガキそのものである


「へえ~、へなちょこランチとは思えない良い面構えになってるじゃないのさ」

「ホント、ウジウジ君だとは思えない良い顔になってるわね」

「とてもあの根性無しだった、シバアとは思えない目をしていますね」

ラビィさん、メロディさん、ミネアさんがやって来て。からかい始めるが、ラビィ姉さん、メロディ姉上、ミネア姉様と小声で名を呼ぶだけで反論も出来ないヘタレ衆。幼い頃からの刷り込みは中々消えないものである・・面白いのはランチがラビィさんとメロディさんとに対する呼び方の違いかも、二人の幼い弟分達へのしつけ方が想像出来てしまうのだ


「ラビィさん、弟分達を苛めるのはそのくらいにして。こいつらに部屋を宛がってやって貰えないか、その後は旨い飯を用意してやって欲しい」


弄ってた自覚が有るのだろう、笑いながら

「分かったよ」

とだけ告げて二階へ向かった


「お前達は、馬の世話を済ませた後。店内に集合だ」


「「「はい!」」」


駆け出して行く部下達を見ながら、ふと考えてた。


ラビィさんに皆の世話を頼むと告げて、裏庭にミニラを呼んだ


「ミニラ、近くて悪いけど。族長の館まで送ってくれるかな」


「距離は関係無いけど、一緒にいられる時間が短すぎるから遠回りするよお」


「さっき牛の丸焼きを作ってやっただろ」


「あれはあれ、これはこれだよ~パパ」


急ぐ用事でも無いのでミニラに従った、一緒に居たいと甘えて来るのが嫌な訳がない。忙しい時に言われると困るのだが・・


1分で着く距離を20分掛けて到着したのに満足したのか、ミニラは機嫌良く飛び立っていった。俺は歩いて来るのと変わらない時間だなと思いながらも、家族サービスだと思う事にした。ミニラは間違いなく俺の家族なのだから


何時もの無計画な思い付きでアポも取らずに押し掛けたので、不在も覚悟していたが爺さんは館に居て応接間に通して貰えた


「紅茶をどうぞ」

「焼き菓子ですが御召し上がりくださいませ」

と娘達が俺の前に紅茶と焼き菓子を置くが


相変わらず

「孫じゃ」

で済ます爺さん


「孫達に愛人募集の件は打ち止めだと、ちゃんと伝えてくれよな爺さん」


「心配要らぬわ、部族間のバランスもあるでのお。既に二人も血を貰っておるのじゃ、他が動かぬ内はワシも動けんわい」


「話は変わるがランプが次代の族長候補の最右翼になって、厄介な事が増えたとラビィさんが言ってたが。何とかしろよ爺さん」

実は自分のやらかした事の後始末を丸投げしに来たガンジーである


「何とかしろよと言われても難しいのじゃ、部族の若手の中で一番の猛者になってしもうたからのお」


「だが放置してたら、ランプは多分早死にするぞ」


「分かっておるわ、強さだけは増したが。あ奴にはまだまだ心構えが出来ておらんでのお。なまじ強さがましたせいで回りから持ち上げられて増長もしておる。このままでは辺境で野党やキングリーが暴れた時に、担ぎ出されても断れずにそこであ奴は終わろうの」


「ランプの強さは大したこと無いのだがな・・ランの方が確実に強いぞ」


「そ、それは真か?」

爺さんの目が光った気がした・・


「ああ、それにランチにさえ負けるだろうな」


「なんじゃと、今のランプがあのヘタレたランチに負けるじゃと!」


「明日見せてやるよ、何処かに人を集めて大晦日の出し物として。ランプの鼻折り大会何てどうだ爺さん」


「ランプには可哀想じゃが、その方があ奴の為にもなろうのお。して相手は誰にするのじゃ?お前が相手をして勝っても意味など無いぞ」


「パトロンドの国境に集めた落ちこぼれの9人を覚えているか?今回は全員を伴って来ているから、そいつらに相手をさせてやるよ」


「まさか幾ら何でも、あ奴ら全員がランプより強いとは言わんじゃろうな?」


「そのまさかだよ、爺さん」


「折角付いた自信もへし折れ落ち込むじゃろおのお・・あ奴の為とは言え不憫な事じゃて」


「今回パトロンドに来たのは、落ちこぼれ達の最終調整だ。ギルドで5万は換金してやるから、爺さんがランプに金貨100枚も持たせて娼館に浸からせてやれば。ランプの事だから問題無く立ち直ると思うぞ」


「それが納得出来ると言う所が情けない限りじゃのお・・」


ランプの居ない所で張り巡らされた渦巻く陰謀、ランプの運命や如何に!とか心の中で吹き出しが流れるガンジーである

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