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ガンジー(元爺)サーガ  作者: タマ
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夢に向かって6

ミニラに城の練兵場に降ろして貰い、いつもの儀礼を消化する


「ガンジー閣下、今日はどのような御用件でお越しになられたのですか?」


「国王陛下に面会を頼めるか、妻と共に来ていると伝えて欲しい」

ヒイロを抱いたシルエットが後ろで控えている


連絡に走った兵士が直ぐに戻って来て、案内され。玉座の間の隣の国王の私室に通された


「久し振りだなガンジー、シルエット殿は美しくなられたなあ、子を抱かせて貰っても良いのだろうな?」


「ああ、久し振りだなゴロウ。子供はヒイロと言う名の俺の長男だ、勿論抱いてやって欲しいが。その前にクリス姫と、城に詰めて居る場合のみで良いからクーガー父上も呼びにやってくれないか」


侍従達を走らせ、目尻を下げてヒイロを抱くゴロウに

「初めて産まれた男の子なのに、俺の長男だと言うのに。たった10年しか手元に置けないんだぞ!酷いと思わないかゴロウ!」

さっそく愚痴っているガンジーである


「何処が酷いと言うのだ、お前がパトロンドで暮らせば済む問題ではないか」

笑いながら言うゴロウに


「お前のせいでパトロンドは居心地が悪いんだよ、人間扱いして貰えないからな。御子かせいぜいが種馬だ。あのコリンヌでさえ、俺が望むなら息子の想い人であろうと差し出すと言いやがった」

心底嫌そうな顔のガンジーである


「う、うむ。すまんな・・これでも一応は責任を感じてはいるのだ」


「陛下、お呼びになられましたか」


ドアがノックされ、ゴロウが入れと告げるとクーガーが入って来た


「俺ではない、司令の孫殿がお呼びなのだ」


一瞬何を言われたのか解らない顔のクーガーが、俺の顔を認め、シルエットの顔を認識した途端。状況が把握出来たのか・・立場も身分さえも忘れたように、ツカツカとゴロウに歩み寄り


「私にも抱かせて下さい、陛下」


ゴロウから奪い取る勢いで取り上げたヒイロを抱くクーガーの顔が、ゆっくりとだが溶け崩れて行く


「お久し振りでございます、父上。その子の名はヒイロと申します」

一連の流れに呆気に取られ、挨拶が未だなのを思い出して挨拶したが


「うむ」

としか返って来ない、心此処に在らずである


シルエットは大きな溜め息をつきながら、やっぱり・・と面倒そうな顔をしている


「何事なのじゃ?おお、シルエットの子供を連れて参ったのか。どれ妾にも抱かせるのじゃ」

いつのまにかノックもせずに現れたクリスがクーガーに歩み寄り、命ずるも


「断る!」

一言の元に切り捨てられている


顔をひきつらせるクリスに

「話が有るから、ちょっと付き合ってくれ」

そう言って部屋から連れ出し


「立ち話も出来ないから、何処かに使える部屋はないか?」

続けて聞いたが


「ベッドの有る部屋迄は遠いぞ」

と笑いながら言われた


「真面目な話だ!」


「ならばその部屋で問題なかろう」


指差された直ぐ近くに有った部屋に入りソファに座り、クリスが向かいに座るのを待って

「突然だが、結婚の予定は有るか、好きな男とか居るのか?」


「ほんに突然じゃのお、結婚の予定は無いが好きな男ならおるぞ。目の前にのお」


「俺が男を紹介してやると言ったらどうする」


「どうもせぬわ、肌を見せるのも肌に触れさせるのも生涯に一人で充分じゃでの。それよりお前は妾を政治の道具に使おうと申すのか」

言葉の途中迄ののんびりした雰囲気が変わり、突然刺すような空気を伴って言葉が放たれる


「政治の道具にされるのは嫌か?」


「決まっておろうが!」


「そうか・・残念だな。俺の愛人は政治の道具の意味合いが強いから無理そうだな」


「ま、まて。待つのじゃ!今何と申したのじゃ、確かお前の愛人と申したように聞こえたのじゃが」


「ああ言ったぞ、熊族から愛人を一人迎える事になってな。そこでお前に頼もうかと思ったのだが、嫌なら仕方が無い。他を探すよ」


「他など探さずとも良い。なるぞ!愛人になるのじゃ!妾を愛人にするのじゃ!愛人にしてくだされ・・・・」


俺の性格は変わらない、とことん嫌な奴である。イタズラ出来る時には容赦はしない。めったに勝てないクリスに勝つ絶好の機会なのだ


「姫さん条件が有るが良いか、そのぐうたら根性が直せるなら愛人になって貰いたい。お前の事は好きだしな」

笑いながら告げた


クリスが愛人になれない理由の1つにパトロンドとローレシアの力関係の図式が有ったが、今では俺がローレシアを離れて人魚国の代表扱いになっているので解消された


数さえ増え過ぎ無ければ、幾ら力を増そうと人魚達は陸に住む者達の脅威にはなり得ない。パンと果物と甘味しか陸に求めないのだから、唯一脅威になり得る子種問題も人魚達が計画通りの行動にさえ出てくれれば年に500人の増加を維持出来る。その数で有るなら幸運な男達の喜びで有って、脅威等と言うのは言葉さえ浮かんで来ないだろう


人魚達が力を研鑽し探査区域を広げ、資源を確保すればするほど陸に住む者達の生活も豊かになるのだし


「ゴロウ、クリス姫を俺の愛人として貰い受けても問題無いか」

ゴロウ達の元へ戻って、俺はゴロウに確認を入れた。ゴロウがクリスの保護者なのだから


一瞬クリスに視線を向け、クリスの表情と頷きを確認して

「構わんが、何故クリスなんだ?熊族にも美女は多いぞ」


「そんなの決まっている、討ち死に覚悟でクライムに切り込まれたら堪らんからな」


「なっ!」


真っ赤になったクリスと、大笑いするクリス以外の者達。平和である


クリスに半年後に迎えに来るから、身の回りの整理を済ませて置くように頼み。謎の酒を1樽渡して


シルエットと、ヒイロを抱いて離さないクーガーを伴ってブラパンの館に向かったが。クーガーがゴロウに当分出仕は致しませんので、と休みをもぎ取っていたのには笑えた


「母上、お久し振りです。ヒイロを連れて来るのが遅くなって申し訳ありません」

「お母上様、ただいま戻りました」


「ガンジーさんもシルエットさんも久し振りですね。孫はヒイロと名付けたのですね」

そう言うと


「あなた、わたくしにもヒイロを抱かせて下さいな」

ツカツカとクーガーに歩み寄り、優しそうな口調とは裏腹な有無を言わせない視線がクーガーに襲い掛かった・・


「シルエット、お前の母上と俺の母上達。どっちが強いんだろうな」

思わず呟いた俺にシルエットは優しく微笑むだけである・・


ヒイロを代わる代わるに抱くミラージュとクーガーに言葉を挟む隙を見出だせず、シルエットの手に戻ったヒイロを見てやっと口が開けた


「母上、これは前回お渡しした物と同質の酒です。父上と御一緒にお楽しみ下さい」

部屋の隅に置いた樽を手で示す


「まあ、それは嬉しいですね。幾ら探しても見付からず残念に思っていたのですよ。所で今回のパトロンドでの日程は決まっているのですか?」


「はい、私には部下を鍛える目的が有りますが、シルエットには王宮の新年の祝賀会に2人で出席する以外は母上達とのんびり過ごすように言って有りますので」


満足そうに頷いたミラージュが

「未来の王を抱いて新年を迎えられる等とは、何と言う贅沢なのでしょうね」

とんでもない爆弾を投げて寄越しやがりました


「母上、息子本人が望まぬ限り。私は息子を王等にするつもりはありませんが?」

慌てて少し強めに言ったが


「ガンジーさん、貴方とシルエットの間に出来た子供なのですよ。必ず抜きん出た存在になるのは間違い無いのではなくて?」

何処吹く風とばがりに流された


「ヒイロは炎の魔法が得意な者に育つとしか女神様より伺っておりませんが」

それでも食い下がるが


「ガンジーさん、貴方はこの世で女神様のご信託を受けて産まれる子供が何人居ると思っているのですか」

のんびりした口調なのに、確実に急所を押さえられて動けない小動物みたいな有り様になった。多分信託を授かって産まれる子供等・・ヒイロくらいだろう


項垂れそうになる頭を横に向けてシルエットを見たが、微笑む横顔に。こいつもかと思ってしまった


諦めて椅子に座り直し、暫くしてから王宮に用が有ると言って退室した。感情に任せて退室すればクーガーと同じになってしまう・・それではあの時クーガーに向けた視線の言い訳が出来なくなってしまうのだ


王宮に戻り、ゴロウに愚痴ろうと思って部屋に入ると。未だ帰らずにクリスも居たのでこれ幸いと

「ミラージュ母上が、息子は未来のパトロンドの王になるとか言うんだが。俺は王等には絶対したくないんだ」

現王の前で王等とか言ってる奴が居ます


「多分そうなる可能性は高いじゃろうが、何が気に入らないのじゃ?」


「自由は無いし、責任は重いし、何より面倒だ。王等、息子に勧められる職業では無いだろう」


「確かに面倒ではあるが・・お前の中では、王は職業なのか。だがそれはお前の意見で有ろう?息子は違う考えを持つかも知れんぞ。それとも、お前も息子が思い通りにならぬと気に入らないとか言う者達の同類なのか?お前は親の言い付けだけを守って生きて来たのか?」

面白そうな顔をしてゴロウが割り込んで来た


「兄上の言う通りなのじゃ、お前は親バカになるじゃろうとは思っておったが。あのような幼子の未来の話でここまで大騒ぎしおるとは、親バカの度が過ぎておろうが。親などと言うものは子供が困った時に初めて手助けしてやれば良いのじゃ、子供が進む道も子供に決めさせてやるのが優しさと言うものであろうの。どうせお前は子供達の母親と共に子供達を強くする為に鍛えるのであろうが!パトロンドの王は強き者か優れた者が選ばれるのが習わしじゃぞ。お前が全力で鍛えたのなら、どれ程の強さになる事やら想像もつかんがお前の子供達がそれぞれの部族で最強の者達になるのもあながち夢では無かろうな。次代の王に選ばれる可能性は高いわのお。兄上で3代目である熊族と熊族の前の代の王である獅子族以外からにはなるがの。それともお前は子供を鍛えず弱いままで簡単に死ぬる事を望むのか?」

折角さっき勝った筈のクリスに、返す言葉も見付からない。どうして未だ未だ先の子供の将来の事であそこまで焦ったんだろうか?とか反対に考える始末である


「そうだな、子供達には子供達が望むようにさせてやりたいな」

意地を張っても干からびるだけなので、素直に自分の非を認めた


冷静に考えれば避けられない現実なのだ・・全ての部族に俺の子供達が居るのだから。子供達はパトロンド国の国民なのだ、人魚国派と言う派閥に属し人魚国からの支援を受けられると言う特典は有るが


俺は勘違いしそうになってた、パトロンドから人魚国大使館のような形で土地を切り取っては意味が無いのだ。大地に根をしっかり張り巡らせた人魚国派と言うパトロンドの実力者達こそが人魚達の将来に繋がる、国民ならば派閥が力を持てば発言力が増すだけだが、他国の大使館では国の方針次第で閉め出されるのだから


ゴロウ達に新年の祝賀会には出るからと伝えてブラパンの館に送って貰った


「母上、先程は失礼な事を申しました。ヒイロの未来はヒイロが決めれば良いことです、私はヒイロが望む事の手助けをすれば良いのだと思い至りました」


「気にしなくて良いのですよ、母は子に甘いものなのです」

優しげな言葉と同じく目にも柔らかな光が瞬いていて、ほっとした


「シルエット、俺はランチ達の面倒を見る為にラバーニュに向かうが。ヒイロの事は任せたよ」

そう言ってブラパン家を後にした


小舟を王宮に置きっぱなしには出来ないので、ミニラに運んで貰いお気楽3人衆の中洲に置かせて貰う為に向かったら。3人共に娘を抱いていたのには笑った


ゴロウには明るい家族計画(避妊)は無理そうだな・・

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