エルフとドワーフ5
国境を出ると、既に町が見えている。多分国境から町まで1キロも無いだろう。兵士達には冒険者ギルドの倉庫へ素材を運んで貰い、白大金貨を3枚渡して、皆で別けて好きに飲み食いするように伝えた
ギルドの食堂で食事をしながら、査定が済むのを待っていると。見覚えの有る顔に声を掛けられた
「将軍、お久し振りです。今日はモンスターを狩られたのですか」
確か、北の国境を越えた所に家族が居ると言っていた3人組の一人だ
「ああ、ロアンヌの領内で暴れてたモンスターを掃除しただけだがな。他の二人も元気にしてるのか」
「はい、あいつらは今日は家でゴロゴロしてると思いますよ」
「少し聞きたいのだが、この町へは盗賊達が襲って来ないのか?」
「それはロアンヌとの盟約が有りますから」
「盟約?」
「はい、町が盗賊に襲われたらロアンヌの国境警備隊が救援に駆け付ける代わりに、国境に盗賊が攻め寄せた場合は町の男達が盗賊の背後を攻めると言う盟約が結ばれているのです」
「かなり大きな町では有るが、そんなに戦える男達が居るのか?」
「この町は大した産業は有りませんが、その代わり殆んどの若者は冒険者になって護衛の仕事やモンスターを狩るのを生業にしてますから。戦える男が500人以上は居ますよ」
命を対価に働く者達の町だと言われた
「話に聞いただけだが、山賊がかなり暴れてるらしいが。護衛の仕事は危険過ぎないか?」
「確かに俺達が奴隷から解放されて戻ったら、山賊の数がかなり増えたみたいで危険ですね。知り合いが何人かは犠牲になってますし、昔は山賊の数も少なかったんですがねえ」
「戦争も起こって無いのに、何で山賊が増えたんだろうな」
「戦争が起こらないから山賊が増えてるみたいな事をききました、聞いた話しだと戦争が起き無いから、仕事にありつけずに食い詰めた傭兵崩れ達が、流れ込んだって事らしいです」
素材の査定が終わったと呼ばれたので
「お前達の知り合いに酒を売る商売をしてる者が居るなら、酒を大量に仕入れる事を勧めてやってくれ。後10日もしない内にドワーフの団体が通る予定だからな」
「団体ってどれくらいの数何ですか?」
「詳しい数までは解らないが、数千てところだろう。俺は呼ばれたから行くが、頑張れよ」
「はい、教えて貰って助かりました。ドワーフが来たら俺らの呑む分の酒まで無くなるんで。買い出しに行きます」
俺はギルドのカウンターに向かい、アイツは外へ駆け出して行った。名前を覚えて無いからアイツなのだが、名前を知らなくても結構会話は成り立つ。エルフやドワーフ相手だと殆んどが爺さんで済んでしまうのだから。名前を覚えられない俺には楽な世界だ
兵達を率いて東北部のモンスター領域も軽く間引いて、後はドワーフ達に任せようと考えてロアンヌ公爵の館に戻る事にした。国境周辺だけは国境警備隊の兵達がモンスターを狩っていたので間引く必要は無かったからだ
「公爵殿、北西部と北東部のモンスターの間引きは済ませて置きました。国境の北は面白い地形になってますが、何故あのような形で国境の北側を残してるんでしょうね」
「ああ、あれですか。あれは父上がこの地を領地に貰い受けた時に、父上が奴隷を使うのを好まず。この地に奴隷として使われていた奴隷達に、国境の北を開拓したならば解放すると約束して援助を与えた結果、あのような町に迄発展したのです。その後様々な盟約が結ばれましたが、山賊がこの地に入り込めないように手助けをしてくれています」
国境の北に五キロ四方くらいの四角い平地があり、その先にモンスター領域に挟まれた細い道が有るのが不思議だったのだが。そう言う事だったのかと納得した
「公爵殿話は変わりますが、後5日でエルフが食糧と薬を。7日後にはドワーフが食糧と牛を運んで来ます。国境で品物の量を聞いて領内の倉庫へ振り分ける為の人材の選別をお願いします。私は1度クライムに戻らないといけないので、4日後の夕方に改めて来ることになると思うので、エルフやドワーフの到着が早かった場合の対処をお願い出来ますか」
了承を貰い、ロアンヌを後にした
途中、クレスタのメリーナ姉さんの所に寄ってシモン子爵に、なたね油とオリーブ油とチーズをそれぞれ金貨千枚分ロアンヌに届けて貰うように頼んで。クライムを目指した
クライムに戻ると、既にテンテンとメルメルに子供が産まれた後だった
「テンテン、メルメル。大事な時に側に居られなくて済まなかった」
「気にしないで下さい、人魚のお産は軽いですから」
テンテンに言われ
「そうですよ、お仕事が忙しいのは仕方無いですから」
メルメルにも笑顔で告げられた
取り合えず二人に回復魔法を掛けて、子供達を抱かせて貰い。名前を考えてる、前もって決めて置けば良いのにダメな父親である
「テンテン、子供の名前はデジーにして欲しい。願いを叶えて欲しいと思って付けたよ。メルメル、子供の名前はサニーにして欲しい。日の当たる場所で暮らせるようにって思いが込もってる」
子供達は、昨日と一昨日に産まれたそうです。少し残念な気分で皆と食事にする
群島の子供達と二日間過ごし、アスミーの子供達と1日過ごした翌朝。乾燥させて置いて有るパンを袋に2つ詰めて袋の口を縛り、袋と袋を紐で繋いでミニラの首に掛け。ロアンヌに向かった
約束の期日にエルフが幌馬車3000台と精霊魔術師2000人、総勢8千人でやって来た。500台が薬で、残りの2500台が食糧の野菜や果物。かなり大きな幌馬車なのに明細を見ると金貨で10枚前後分の品物しか詰めないらしい、後もう一回運ぶのだそうだ・・明細を見た後に、何か希望の品は無いかと聞かれたので、玉葱と人参を頼む事にする
荷物を各倉庫に納めて、幌馬車隊は再度の荷運びの為に戻って行ったが。精霊魔術師達を作業の為に残して行ったが、その8割りくらいが女性なのに驚いた・・精霊魔術は女性の方が巧く使えたりするのだろうか?
精霊魔術は初めて見るが見ていて心底御驚いた、土の中を土竜が進むように地面が盛り上がっていくのだ。それを一人が1度に5列同時進行で掘り返し、30メートル程進んで消滅する。2回繰り返せば出来上がりだとか・・ジャガイモを植える積もりなので宜しくと伝えて有るので、畝上げ迄綺麗に仕上げてくれた。
何しろ2000人掛かりだ、一人が1メートル×30メートルを耕して畝上げをしても。1回の作業で2キロ×30メートル完成する計算になる、瞬く間に辺り一面が耕された作付け待ち状態の畑に様変わりした
公爵が用意した、耕地予定地を案内する者達に後を任せ。ロアンヌの屋敷に公爵を尋ねた
「公爵殿これがエルフが届けた食糧と薬の明細書です。最終的には、この食糧の4倍の量の食糧が届くと思いますので、保管場所の準備をお願いします。後牛が詳しい数は分かりませんが、かなりの数と豚が2万頭程届く予定ですので。受け入れの準備もお願い出来ますか」
「ガンジー殿、何から何まで揃えて頂き感謝の言葉も有りません。このご恩をどうして返せば宜しいでしょうか?」
「困った時は相身互いと言います。もし人魚国に災厄が降りかかった時に尽力して頂ければそれで宜しいかと」
「それでは、私の気が済みません。何か形になることを申し付けて貰えませんかな」
「それでは、何か考え付いたらと言うことで」
そう言って逃げた、このまま話を続けたら。娘を妾にとか言い出しそうな雰囲気だったのだ、勘弁して貰いたい
忙しく過ごす内に、今度はドワーフ達が来た。それも凄い軍勢で・・戦士が4千人、幌馬車5000台、牛が8千5百頭。幌馬車の御者と助手で1万人、牛を追う牧童が1千人。計一万5千人もの大所帯だ
ノルドの爺さんの話だと、隣の部族の族長が親友でどうしても噛ませろと言われて断り切れずに。共同で荷物と戦士の手配をしたらしい
戦士達は公爵が選んだ係りの者に頼んで東西に振り分けて貰い、モンスター領域の掃除を頼む事にした。幌馬車も同様で公爵の選んだ者達が領内の倉庫に案内する
最初の内は、エルフの大半が女性だと言う事も有ったのか、ドワーフ達も大人しくしていたのだが。エルフの2回目の幌馬車隊の到着を期に、エルフ達とドワーフ達があちこちで揉め事を起こしていると報告が入った・・
エルフとドワーフの仲の悪さは、聞いていたとはいえ表に現れて目に見える形になると頭が痛い・・仕方無いのでエルフの責任者として来ている長老のリーナスと、ドワーフの責任者として来ている族長のノルドに話をすることにした




