少しづつ4
翌朝
海岸に行くとトラサーンが走っている所だった
「将軍、ここは俺にとっては天国みたいな所ですね。人魚師匠は厳しいですが丁寧に教えてくれますし。学校と言うのですか、あそこに行けば元気な子供達に会える。離れたく無くなりそうです」
「お前には仕事が有るだろう、早く強くなって孤児達を保護しないといけないんだぞ。それより今までに何回、位階が上がった痛みを経験した事が有るんだ?」
「ハッキリとは覚えて無いですが、6回は有ります」
「そうか、今の内に天国を満喫して置けよ。次は位階の上がる地獄が待ってるからな」
ニヤリと不気味な笑いをトラサーンに向けて、その場を離れた
「ガンジー様」
「どうしたんだ、嬉しそうな顔をしてるな」
ユーリアが、ニコニコしながら声を掛けてきた
「今朝の剣の練習で、お爺様に驚いて頂きましたの、ガンジー様にもお見せしたかったですわ。驚かれたお爺様のお顔を、顎が落ちそうなお顔をなさってましたのよ。ウフフフ」
思い出し笑いを始めたユーリアを見ていると、後ろから
「また、何かなさったようですね。ガンジー様」
笑いを含んだシルエットの声が聞こえたので
「また何かしたって言い方は酷く・・はい、しました」
振り向いて文句を言おうとしたが、シルエットの視線を追い掛けて。言葉を変えた
そこには体の動きが別人のように軽くなり、綺麗な姿勢で子供達と遊ぶビクトリアが居た。それだけなら自分がした事なので別に驚かないのだが、顔迄別人のように変わっていたのだから
「何をなさったのですか?」
「顔は弄ってないぞ!」
「そんな事は分かっております。あれ程バランスの取れた動きが出来るようになった理由と、あの自信に満ちた顔の訳を伺っているのです」
優しいと言える程穏やかな口調で聞いて来る、シルエットに抗う事が出来ない・・
昨日迄は、猫背でバランスの悪い動き。自信無げな振るまいと、かさついた肌にくすんだような顔色。滲み出る優しさだけで、子供達の相手をしていたビクトリアが
今日は伸びた背筋に、バランスの取れた動き。自信に満ちた表情と艶を取り戻した肌に健康的な顔色。滲み出るオーラのような物を振り撒いて子供達と遊んでいる。
何処にも昨日迄のビクトリアは居なかった・・
「骨盤のズレと背骨の歪みを治したな」
「他には何をなさいました?」
「色々心得を教えたな」
「他には何をなさいました?」
「あ、脂を少し抜いたな・・」
「他には何をなさいました?」
まるで母さん達と話してるようだ・・抗えない
「ら、来年の春に子を作る相手をしろと言ったけど・・ダメだったかな?」
優しく聞かれてるだけなのに、追い込まれたネズミ状態になってます・・
「そうなのですね、それで納得致しました。昨日ガンジー様の元から帰って来たビクトリアがニコニコしながら、これまで口にしなかったステーキを食べ。サラダを食べてから、パンを一口食べたそうです。朝も穀類には少ししか手を付けなかったようですが、野菜と魚介をしっかり食べて。昨日迄とは全く違うビクトリアの食欲に、驚いた娘達がガンジー様の好みは太った者なのか?と聞いて来た程です。早く何とかしないと、クライムの海岸は肥った娘達でいっぱいになりますよ。ウフフフ」
何が嬉しいのか、機嫌良く笑うシルエット。俺の頭には???しか浮かばないが、太った娘達が増えても困る。別にぽっちゃりが嫌いな訳では無いが、自然が良いと思う
「俺が他の娘に子を作るのが、そんなに嬉しいのか?」
「いけませんか?他の娘がどうこうと言う問題では有りません。ガンジー様の夢が前に進み始めた事が嬉しいのです。あの娘達もわたくしの同志なのですから」
前世の常識に囚われて、嫉妬を気遣う俺と。この世界の常識を基に、俺と一緒に夢を見たいと想うシルエットの論点が交わる筈も無く白旗を上げるだけである
「シルエット、ミーニャとシンホニーとタマモを呼んでくれないか」
「はい」
頷いて去って行くシルエットの背中が嬉しそうな事に、溜め息を付いたのは仕方が無い・・
3人が来るまでに、俺はデザイン画を書いている。女神様に支払う対価、コスプレの為のデザイン画を。女神様にエリザベスの加護を頂いた時に俺の頭に有ったのは、エリザベスの事を見てつい浮かべてしまったメンソ〇ータムの缶に描かれた女性の意匠、頭に大きな看護帽を被った中世末期(勝手に思ってる)の看護婦さんの服装を着たエリザベス。エリザベスの優しそうな微笑みに、その服装で孤児達と遊ぶ姿を想像してしまってた・・
前世での俺はコスプレ女性を見るのが好きだった、下らないコスプレはどうでも良いが。時々素晴らしい出来映えのコスプレを目にすると、現物が見たくなったものだ
自分ではノンケだと思っていたが、この世界に来て本物のケモ耳の女性に接している内に、自分はケモナーかもと思い始めた・・
「お前達には、昨日の罰としてこの服装で少しの時間だが過ごして貰いたい」
3人の前に、それぞれのデザイン画を置いた
「うわあ、無理!ハレンチだ。この変態野郎が」
「これは恥ずかしいですね、どうしてもガンジー様が、見たいと仰るなら。お望みの通り着させて頂きますけど」
「これで許されるなら、問題無いです」
「お前達の昨日の返答を思い出して見ろ!唯一正直に聞こえたタマモにだけは、弛めの罰にしてあるがな」
タルマルモールと言う名を縮めてタマモと呼ぶ狐族の娘には、日本の巫女装束をデザインして渡した手前。適当な言い訳をこじつける
真っ赤になってブツブツ言ってるミーニャを見てるのは、面白かったが。微笑みながら余裕かまして見詰めて来るシンホニーに悔しくなって
「その罰を終えたら、お前達を抱きたいと思ってるけど。嫌か?」
肥った娘達が増殖するのも困ると言うのも有り。告げた
「雄と認めたあんたが望むなら、どんな格好でもしてやるよ」
「えっ?あ、あの本当ですか?」
「は、はい。あ、い、いいえ。あ、あれ・・」
一番恥ずかしそうにしていたミーニャが、逆にハッキリと言葉を紡ぎ。初めてシンホニーが、これ迄1度も見せなかった狼狽えたような姿を見せ。余裕が有ったタマモが恥ずかしそうに言葉を失った・・
期待以上の反応に満足して、3人にはビクトリアを呼んだ後に勤務に戻るように頼む
「お前にはこれを着て貰うつもりだから、そのつもりでいてくれ」
従うのが当たり前のように告げる
昨日から意識して命令口調を使っているのは依存させる為だ、依存状態にも様々な形が有る。信頼出来る相手に色々な指示を受ける事によって、自分であれこれ悩む心配が無くなり確実にストレスが減るのだ。結果が出なくても、責任は自分に無いのだから気楽に出来る事も重要な要素になる。俺は逆に責任重大になるけど裏技が有るから問題無い
「はい!」
当然のように良い返事を返すビクトリアを、近くで見て更に驚いた。栄養をちゃんと採ると肌が元気になる事は知っていたが、たった一晩でここまで張りと艶が出るのか・・18才か、若いって凄いな。と感心する16才のガンジーである
保母さん達を信じる事に決めた俺は、昼休みを使って
「お前達には、人魚国の強さの秘伝を伝授するつもりだが、伝授する前に誓って欲しい事が有る。1つはお前達が産んだ子供達にしか教えない事、子供達にはその子供以外には教えるなと教育する事を誓って欲しい。誓えるか?」
そう言ってから一人づつ順番に返事を聞いたのだが・・
何を言ってるんだコイツはみたいな顔をした娘達に、誓いの言葉に添えて言われた言葉に。俺の認識の甘さを思い知らされた
要約すると
俺の子を産むと決めた時点で、国も部族も捨てている。俺の力になる為にはどうしても発言力が必要になる。国に戻ったら手を尽くして発言力をどう上げようか考えていたが。その為には当然力も必要になる、強くなる方法が有るならさっさと教えろ!手に入れた力を外部に漏らす馬鹿など何処にもいない。との事だった
他にも、ちゃんと構え!とか、個別に一緒に過ごす時間を作れ!とか、色々言われたのは黙殺しましたが・・
その日から海岸で、人魚師範の弟子達が海岸にて稽古を始める姿が増えましたが、一番弟子がトラサーンになるのか?とか考えたのは秘密です
その日の夕食はシルエットの家で食べたのですが、ブラパンシスターズの最年長のセリカが
「私はどのような衣裳を着れば良いですか?」
と聞いて来たのでシルエットを見ると
ニッコリ微笑むだけ・・
18人だと思ってたのが、23人に変更されてました・・こうなりゃヤケだと、デザイン画を書きます。シルエットだと眼鏡教師のコスプレが確定してるのですが、何故か同じブラパンなのにメイドのエプロンドレスを書いてました。それも膝上サイズで胸と袖口には大きなフリルを着けて、ホワイトブリムも外せません!
セリカに見せると
「素敵なデザインですが、足が見えるのが恥ずかしいですね。何と言う服なのですか?」
と聞かれたので
「メイド服だよ」
と答えましたが
ニーハイの代わりにロングブーツにしたから、足が出る部分は少ないのですが。それでも淑女には過激なようです・・ミーニャの衣裳はやり過ぎたでしょうか。アマゾネスファッション・・




