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ガンジー(元爺)サーガ  作者: タマ
114/206

大物釣り2

翌朝はミニラの声で起こされた

「海のカプカプ何度か頭を狙って見たけど、直ぐに海に潜るから無理だったよ。パパ」

ミニラの言葉に首を傾げ


「どう言う事かな?」

と聞くと


「あいつ弱いよ、パパ。ブレスも使えないし。海に隠れるだけだし。でも、どの方向から近付いても分かるみたいなんだよね」

身も蓋もない言われ方するカプカプ


「そうなのか?人魚達でも勝てそう?」

そう聞くと


「硬いから人魚達には無理だよ、解ってて聞いてるでしょ?パパ」

日に日に進化するミニラの会話に驚きながら


「女神様に、又色々教わったのか?」

そう聞いて見る


「教わってないよ、パパ」

あっさり否定された


腹を着て顔を洗いメイドに案内されて、朝食の準備されたテーブルに着く。向かいの席にはアラミスが座っていたが、何やら困惑顔だ


「昨日は出過ぎた真似を致しました、申し訳ござい

ません」

それまで無言で立っていたシルエットが詫びと共に深く頭を下げる


「いや、俺も言い過ぎた。悪かったと思ってる」

そう言って軽く詫びた


朝食はメイドに任せず、シルエットが俺とアラミスの給仕をしてくれたのだが、シルエットの表情が読めず、居心地が悪く食べた気がしなかった・・アラミスも困った顔のままだ


食事が終わり、逃げるように屋敷を後にした俺は。

冒険者ギルドに行き、カウンターの受付の女性に。昨日作った模型を見せて事情を話すと。慌てて一旦奥に入り、再度出てきた受付の女性に案内されて。ギルド長室に通された


「ギルド長のキリーです、まず貴方が発見したと言われるモンスターですが。形容からアノドンと言われる両生系のモンスターだと思われます、大きさにより等級が変動する特殊なモンスターなのですが。15メートルを超える物は、50年程遡って資料を確認しましたが目撃されていません。ギルドとしての対応は、既に軍船が一隻犠牲になった可能性がある為。緊急対策法に基づいた告知となります。これは、依頼ではなく。偶然倒された場合の特典ななりますが、10メートルを超えた物が領域外で被害を及ぼした時点で災厄認定とされる事により、パトロンド限定となりますが。国から報償金が出ます、金貨千枚を基礎として1メートル大きさが増す毎に金貨3百枚が増額されます。冒険者として対処して貰えるので有れば、こちらを適用されるのがお得ですので。剥ぎ取り前に査定を申し付けて下さい」

キリーもギースと同じエルフだった、ギルドマスターはエルフが多いのか?と思ってしまう。話の内容や話し振りから、冒険者として対応して欲しいようなので合わせた


その後も色々質問に答えて貰い、アノドンについて分かったのは。大きさが増す程硬くなる為に等級が上がる事、10メートルクラス未満が海に出ても、別の海洋モンスターに食われるらしい事。弱点が火炎魔法だと言う事。5メートルクラスのアノドンは美味だと言う事くらいだった


他に情報が見付かれば教えて貰う事を頼み、館に戻る


「アラミス、巨大モンスターの名前が分かった。アノドンと言うらしいぞ」

そう言うと


「名前が解っても対処法が解らないと、手の打ちようがないよ」

アラミスの言葉はもっともだ、対処法は有るのだが火炎魔法では、今回は意味が無い


「軍船だと、体当たりされただけで沈むしな。様子を見てくるよ」

そう言ってその場を離れた、遠くから見ているシルエットの視線が淋しそうで辛いのだ・・


「ミニラ、偵察に行くから乗せてくれる?」

「はぁい、パパ」


ミニラに乗ってアノドンを探すと、直ぐに見付かったが。近付くと沈み、離れると浮き上がる。何回か繰り返して200メートルくらいが、浮き沈みのポイントだと思えた。


アノドンを倒さないと、カジャを迎えに行けないし。困った・・陸上なら対処法も考え安いが、海中では俺もミニラもお手上げだし


陸に戻り、アラミスに海中なのでドラゴンでは対処出来ない。と話し、何か策は無いかと二人で相談するが・・とにかく15メートル以上の巨体だ、網は無理だしロープでは切れるし。


ワイヤーを作るかと考えたが、とんでもない重さになるし。大人しく巻かせてくれるとも思えない。後は釣り上げるくらいしか思い浮かばない・・・


アラミスにアノドンを釣れないかな?と提案すると、頭は確かかと言われてしまったが。試すからと、豚を1頭縦割りにしたものを用意して貰う。


ミニラの背に乗り、ミニラの両手には豚の縦割りが片身づつ握られて。空へ飛び立つ上空3百メートルだと、アノドンは沈まないのでその位置から鼻先へ片身を落とした。鼻先で1度突いてから食べるアノドン、もう片身も同じ結果だった


後は仕掛けをどう作るかだけど・・水に沈まない糸を考えないとダメだった。海面付近を漂ってるアノドンに、餌が海底に沈んでは意味が無いのだから、まず頭に浮かんだのが女性の髪の毛。色んな本に出ていたのを覚えている


「ヤールー、髪の毛を10本抜いて縒り合わせて細い紐を作ってくれないか」

近くにいたヤールーに頼む、ヤールーは影のように近くにいる事が多い。所期の頃から


ヤールーに作って貰った紐を引っ張って強さを試す、結構強く引いても大丈夫だ。行けるかもと思いながら海水の中で引っ張ると切れた・・もう一度試しても海水の中だと切れる。次によく出てきたのがケブラー繊維だが、素材自体知らないので却下。次によく出てきたのが、蜘蛛の糸。これは成分も知ってるし、探せば現物を魔力を通して調べる事が出来る


「ミニラ、アノドンはこっちに来てないよな?」

「うん、居ないよ。パパ」

「ヤールー、近場でサメンかイカーンを1体狩って来てくれ」

材料調達に出て貰い


蜘蛛の巣を探すが肝心な時にはなかなか見付からない

「アラミス、蜘蛛の巣を何個か取って来て貰ってくれないか」

他力本願である


取って来て貰った蜘蛛の糸を魔力で同調して調べ、同じ物を同質の素材であるタンパク質から作り上げる。髪の毛と同じくらいの物を10本作り縒り合わせて、引っ張った。結構強い、髪の毛より丈夫そうだ。海水に浸けると・・かなり縮んだが、膨らんだ分の弾力性も有り切れない。これならいける!弾力が引き合う力の緩衝材として作用するのは理論的にも明らかだ


ミニラに偵察をお願いして、黒組にサメンを狩って貰う。人魚達に頼んで二枚に卸して、中骨を外して貰い。指くらいの太さの蜘蛛の糸を10本3百メートルの長さで作ったら。魔力枯渇寸前で立てなくなった・・・縒り合わせるのを人魚達に任せて。リンリンの膝で眠ったが、起きた時にはヤールーの膝だった。3人で交代したらしい


その日はそれだけで夕方になった、人魚達に夕食を食べるように言ってブラパンの館に行き。食事をしながらアラミスに明日軍船を1艘出撃させて欲しいと要請する


「出すのは良いが、沈め無いでくれよ。兵も奴隷も死なせたくない」

そう言うアラミスに


「明日は俺もドラゴンでは無く船に乗るから、心配するな。何ならお前も乗るか?」

と水を向けたら


「良いだろう、乗ってやろうじゃないか!俺もアノドンを見たいしな」 

乗って来た、酒を少し飲み楽しそうに話す俺達を。シルエットは淋しそうにただ見ているだけだった


その夜もブラパンの館に泊まり眠る


どれくらい眠ったのだろうか、伝わってくる温かさと共に移動する心地好い圧迫感に。目が覚めた、目の前で見覚えの有る小振りだが綺麗な胸が揺れている。前回の記憶が有るので状況が把握出来た事も有り視線を向けると、シルエットと目が合った


「悲しかったのです」

一言だけ告げるシルエット


ブラパンの秘伝は偉大だ、言葉を交わさなくても相手の愛情を知る事が出来る。シルエットの淋しそうな顔を見てると辛い、黙ってシルエットの頭を引き寄せ。唇を合わせた


翌朝、2度寝から目覚めた時には、シルエットが腕に頭を乗せて眠っていたので。起こさないように腕を外して支度をする


さあ、支度を始めよう。まずは釣り針を作らないとな


簡単には折れないように、不純物を混ぜた鉄を錬成して。1本1キロ半くらいの針を10本作り、外れないように戻しも付けた。戻しが有れば、刺さった時点で肉を引き裂かない限り外れない。1本の大きな針にすると直ぐに海底に沈んでしまう、大きさの耐久力を数で補う、釣りで言うなら団子釣り法。1つの餌に複数の針を隠して細い針と糸でも耐えられるように、負荷を分散する。数本の針さえ掛かれば、獲物が暴れる間に他の針も掛かる確率が上がると目論む。運任せになるのだが・・


針を沈めない為に浮きを付ける必要が有るので仕方無い。浮き袋が大き過ぎたら、食べない確率が確実にあがってしまう。次に牛の内臓を使って浮き袋を作り、針の1本1本に人魚の髪で作った細い紐で浮き袋を結べば浮力は得られるし人魚の髪がブルーグリーンで保護色に近く見えにくい。後は浮き袋の大きさを極力小さく調整すれば良い


メインの蜘蛛のロープは端から7メートル程は縒り合わせず、バラけた状態にしてある。その端の1本1本に針を繋ぐ為だ、ハリスに遊びが無いと複数の効果が殺される。針を繋ぐ時には結ばず折り返して融合させた、結べば切れやすくなる為だ


後は逆の端を大きな樽3個を繋いだロープに結べば準備は終る


早朝から準備を始めたが、既に昼に近くなった今頃になって朝食を食べてない事に気付く・・腹へった


「アラミス、積み込み頼めるか?俺、腹へったよ」

近くで指揮を取っていたアラミスに言う


「分かった、屋敷で姉上に言ってくれ」

笑いながら言うアラミス、シルエットが部屋に居たのを知ってるのかも知れない


「じゃあ、食べて来るよ。豚の縦割りを積むの忘れるなよ」

そう言って屋敷に向かった


ブラパンの屋敷に着いた俺はシルエットを見付けて

「腹へった」

それだけ言う


「はい、直ぐに」

シルエットは機嫌よく台所へ向かった


食事の後で紅茶を飲みながら聞かされたシルエットの話しに

「わたくしは、ガンジー様と、アラミスが楽しく話す様を見て、悲しくなりました。羨ましくもありましたが、自分が恐れたアラミスとの確執を簡単に回避したばかりか手懐けて見せた、ガンジー様の手腕に驚くと共に。ガンジー様の側近として仕えさせて頂いているのに、ガンジー様を信じ切る事が出来なかった、己自身の不甲斐なさに、悲しくなりました。悲しみを理由にして、あのような手段でしか許しを乞えないわたくしに、何も言わず抱き締めて下さったお心の深さに。わたくしは・・・」

涙を溢れさせ、言葉に詰まるシルエットを見て。心が痛んだ、シルエットが側に来て、まだ1ヶ月程しか過ぎて無いのだ。おまけに、国王や王妹にも言いたい放題の俺しか見てない。心配するなと言う方が無理だ。俺は少し後悔した


「俺は嫁には甘いんだ、それとお前には俺の思考の根源を今度話してやるよ。今日は時間が無いから無理だけどね」

シルエットの頭を撫でながら話して、立ち上がった。耳をモフりたかったが我慢した・・



今日はかなりの覚悟をしている、俺が海に入らないといけなくなるだろう。予定通りに行けばだが・・・


港に戻り、準備を終えた船に向かう前に、ロンロン、リンリン、ヤールーを呼んで指示を与える

「ロンロン、俺が合図を打ち上げる迄は、陸で待機。合図を確認次第、俺の所に全軍で向かってくれ」

「はい!」

「リンリンは青組の10人と先導、ヤールーは黒組3百人を率いて護衛に当たれ。決して許可無くアノドンに近付くな」

「「はい!」」


船に上がった俺に

「腹は膨れたか?」

ニヤニヤ笑いながら、アラミスが聞いてくる


「ああ、食事以外は何もしてないぞ。それより、豚の縦割り10頭分と浮き袋は作って載せて有るんだろうな」

わざわざ必要ない弁解に、ヘタレ臭を漂わせながら。ニヤニヤを止めないアラミスに確認する


「そう言う事にしといてやるよ、船を出すけど良いな」

まだニヤニヤするアラミス


「ああ、・・」

殴ってやろうかと思ったが止めた、昼は何もしてないが仲直りはしたのだ・・明け方に・・


「ミニラ、アノドンはどの辺にいるの?」

「御崎の沖500メートルくらいかな、パパ」

「分かった、気付かれないように高度には気を付けてね」

「任せて、パパ」


船の舳先へ行き結んで有るロープの太さと結びを確認する。緊急時の加速装置を接続する大事なロープだ、ミニラなのだが・・


船はゆっくり沖に向かって進み始めている。前方を青組が、周りを黒組に守られて海に乗り出した

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