9.ケルベロス登場
「うーん。やっぱりふくらはぎのお肉はおいしいね~。次はどこにしようかな~」
この女は俺の脚を何ともうまそうに食っている。。
俺は本当にこのままこいつに喰われて死ぬのか・・・・。
「おーい?お兄さん?次はどこを食べてほしい??私的にはもう片方の目を食べたいかな~。ふふっ」
女の手が俺の右目に迫ってくる。
くっそ。このままこいつの思い通りに喰われるだけか…。
「じゃあ右目も頂きますね~。…えっ?」
俺は女の指を2本食いちぎってやった。
「はぁ…はぁ…。ざまぁ…みろ…」
「どうやら今すぐに死にたいようですね。……お前を殺した後に逃がした奴らを食いにいって、すぐにあの世で会わせてやるよ」
この女豹変しやがった。
このままじゃみんなが危ないことにかわりがないじゃないか。
俺はいったい何やってんだ…何も守れないのか…。
こいつがこのまま村に行ったらみんなが…エレンが危ない。。
「死ね!!」
女の右手に黒い球体のものが出来上がっていた。
やばい死ぬ。
「なっなんだ?この床の魔法陣は?どこから現れた?まさかっ…お前の仕業かっ??」
女が俺に向かっ話しかけてきたが、もちろん俺の仕業ではない。
なんだこの黒い光を発している魔法陣は…みたことない術式。
床から何か出てきた。
「なっ…。召喚魔法陣?。それにこの膨大な魔力量…ありえない」
今までの様子とはうって変っておどおどし始めて震えている。
俺には分かる。この女は怯えているんだ。
自分よりも圧倒的に強い存在に対して…。さっきまでの俺たちと同じように。
「なんで…なんでこんなところに!!」
女がそういうと魔法陣からは3つ首の犬が出てきた。
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「「「ガルル…。アグリ。やっと見つけた」」」
「ケルベロス…私を追ってきたのかな~?」
「「「そうだ。お前が我らから奪った大罪の一つ【暴食】を返せ」」」
なんだ…このでかい犬は。
頭が三つでしっぽは蛇…神話で伝わる【冥府の門番ケルベロス】そのものじゃないか。
「もう何年も前の話じゃない?もう時効じゃないかなな~」
「「「うるさい。早く返せ。でないと力づくで取り返すぞ」」」
「あはは。だよね~。あっ!!この人間をあげるから私を逃がしてくれないかな??」「「「この死にかけの人間がなんになる。話は終わりだ。死ね」」」
そういうとケルべロスの中央の口から黒い炎が放たれた。
「ちっ。地獄の炎をいきなりぶっ放してくるなんて…」
アグリがそんなことをつぶやきながら炎を避けた先にはすでにケルべロスが待ち構えている。
「なっ。はや…」
ガブッ
ケルベロスの3つの口がアグリの頭、左腕、右腕にかみついて引きちぎった。
あの絶望的に強かったアグリがケルベロスの前では赤子も同然のように殺された。
そして残ったアグリの身体からは黒い血が噴き出ている。
「「「アグリの身体はこのまま主のもとに待って帰ろう」」」
ケルベロスは俺には目もくれていない。
魔法陣がまた光りだし、ケルベロスが帰ろうとしている。
「待…って。俺は…強く…なりたい。誰にも…負け…ない強さが…。頼む…俺をあなたの弟子に…してくれ…。頼…む」
俺は何を言ってるんだ。
死にたくないからといって魔獣に命乞いをしているのか。
さらには魔獣の弟子になりたいだなんて…何をとちくるっているんだ。
いや。エレンを残してこのまま死ぬなんてあり得ない。
エレンを守れるのは俺だけだ。セントラルの思い通りにはさせたくない。
セントラルからはよくない感じがするんだ。
なりふり構ってなんかいられない。
今は…今は生きることを最優先に考えるんだ。
「「「…………何を言っているんだ。人間が我らの弟子だと…?」」」
「あはははははははっ、面白い。面白いな、人間の少年よ」
黒い魔法陣から銀髪のロングストレートで黒いワンピース、真っ赤なリボンを付けた銀眼の少女が出てきた。
「綺麗だ…」
思わず口に出してしまった。
「あははっ。私をきれいだと?ありがとう。人間の少年よ」
「「「リリー様。なぜこちらに?」」」
「ポチが遅いから迎えに来たんだが…。どうやら面白いことになっているみたいじゃないか。そこの少年も連れて行こう。帰るぞケルベロス」
ここで俺の意識は途絶えた。