05闇の世界
「うっ、うっ」
二日酔いのような気分の悪さと共に目を覚ますヒロト。開いた視界には黒い太陽のある夢で見た光景だった。
うつ伏せに倒れていた状態から、身体を起こし、立ち上がるヒロト。正面にはあのオンナがいた。纏っていた闇は消えていた。
「リエなのか?」再度、問うヒロト。
「・・・」何も答えないオンナ。
「ほう、そのオンナの名前はリエというのか。」
ヒロトの右側から聞こえる声。ふと、右に視線を向けるとヒロトの目には、身長3メートルはありそうな巨大な黒い犬がいた。犬は、不思議な顔をするヒロトに言う。
「我が名は、ロザリオ。ここは、闇に覆われた闇の世界だ。」と。
「何故、俺がここに?何故、リエが?」ヒロトは、こんがらがる頭を整理しようと、落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせながら、冷静を装った声で言った。
「そのオンナは、少し前にこの世界に迷い込んできたようだ。たぶん魂の残骸だろう。オマエが、何故、ここに来たかは我にも分からぬ。我の予想だが、そのリエというオンナの心の中にある1番強い思念がオマエを導いたのではないか?」とロザリオ。
「すまん、俺はヒロトだ。ロザリオさんは敵なのか?」と警戒しながらヒロトが言う。目の前に、自分より大きなトラよりも強そうな奴と何普通にしゃべってんだよと自分で自分に突っ込むヒロト。
「今は、敵ではない。我は、ただ、祠を守護するものだ。」とロザリオ。
ヒロトは、ロザリオの後ろに目を向ける。そこには、人が何とか入れる位の黒い扉があり丸い小さな祠があった。今日は、リエに黒い猫に犬に、本当に変な日だ。夢なら、早く覚めろよなとふと思うヒロト。
「ふぅ、敵じゃないのか。」とヒロト。
ロザリオは、「そうだ。」の一言。
やや安堵して警戒を解くヒロト。気になる言葉を思い出す。
「リエの心の中に俺がいたということか?」
「そうだ。」また、ヒロトの問いに一言で返すロザリオ。
「祠には何が?」とヒロト。
「我にも分からぬ。我の使命は、祠ね守護だけだ。」とロザリオ。
祠の中に、もしかしたらリエと俺が元の場所やな帰る手掛かりがあるのではと考えるヒロト。
ヒロトの考えに気づいたのか、ロザリオは「入れるならば入ってもよい。ただ、我は入れたものを知らんがな。」と。
うじうじしても仕方がない、と今日、何度目かの覚悟を決める。