01はじまりのとき
真夜中。また、同じ夢で目を覚ます。
体中から出る冷たい汗。何とも言い難い気分。何故、毎回、こんな夢を見るのか?
ベッドの側にある携帯に目をやる。
時刻は、午前2時過ぎ。嫌な時間だ。あと何度、俺は、同じ夢を見るのだろう?そんな疑問がふと頭を横切るヒロト。
今年で30歳になるヒロトは、平凡なサラリーマンだ。狭い1kの部屋に一人暮らしで彼女はいない。あまり物の多くない部屋。必要なものや大切なものはたくさん欲しくなかったのだ。生きて行くために必要最低限でよく、すぐに、どこにでも行けるように、消えれるようになんて考えのもとに。
明日も仕事だから、少しでも寝たいのに。
こんなことを思いながら再度目を閉じる。
ヒロトは、目を閉じてなんとなく夢を振り返る。夢の中で、ヒロトは剣を握っていた。目の前には、人間のオンナ?本当に人間なのかも分からない。顔はボヤけていたのかはっきりと認識できなかった。黒い髪、白い肌、細いカラダ。黒いワンピースに黒いハイヒール。それを、闇のような黒い煙りがもわもわとオンナの周りを覆っていた。
ヒロトの後ろには崖。場所のイメージとしては、グランドキャニオン?だろうか。
木や草などの緑はなく、岩ばかりの灰色の場所。そこに黒い太陽?黒掛かった光を放っている。灰色と黒色の世界だ。
ヒロトは、迫るオンナによりじわじわと崖に追い詰められ、オンナから黒い闇がヒロトに向かって広がってくる。行き場をなくしたヒロトは、どうもがいても、最後は必ず闇に押されて崖から落ちる。
毎回、ここで目が覚め、夢が終わる。
飛行機から落ちるようなガクッとした落下する感覚。何というか、ジェットコースターが落下するのをもっと強くしたような、死を覚悟するようなそんな感覚に冷や汗をかきながら。
「リエ、、」。ヒロトが1人でポツリと囁く言葉。昔は、何度も相手に向かって言った言葉も相手がいなくなればどこにも行くあてのなくなる言葉。夢を見たあとに習慣のように言うようになっていた。言ったあとで、ようやく痛みを制御できるようになったのに、また、胸が苦しくなって後悔するだけなのに。本心からくるこの言葉は、上手く操れなかった。
結局、この夢がなんなのか、ヒロトは分からなかった。何を意味するのか?そもそも意味などあるのか?ただ、何かが変わるような予感だけが胸を掠めた。それが良いことなのか、悪いことなのか、それは分からないし、恐くもあり、好奇心を抱くこともあり、どうでもいいやと思うこともあった。