5話:炎魔
《炎魔》家について、俺が知っている事を、まず上げていく事にしよう。
《炎魔》家とは、古くは、鎌倉の時代から続く、古い陰陽術師の一家だ。そもそも、鎌倉の頃には、陰陽術が、鎌倉幕府を中心に広まって、それなりの範囲に陰陽術師がいた。中でも有名な、安倍清明は、《土御門》家の人間で、五属性の《木》、《火》、《土》、《風》、《水》の中の《土》に当たる。残る属性に当てはまるのが、《炎魔》家は《火》、《木也》家は《木》、《風塵》家は《風》、|《水素》《みずもと》家は、《水》となっている。この五つが鎌倉名家と呼ばれる名家なのだが、《土御門》家は、古い陰陽道のみを主体とするため、弱体化してしまい、今はそれほどの戦力は保持していない。なので、あまり表へ出てくる事が無くなった(魔法の世界の表であって、現実的表ではない)。
そもそも、今の魔法は、陰陽術に西洋的魔法を混ぜ合わせた、日本固有の《極東魔法》と海外に呼ばれているものである。なので、西洋にはなく、東洋にもない魔法なのだ。だから、海外の魔法使いは、日本にあまり来たがらない。だからこそ、日本国内での、家同士の争いが勃発する現状が起きるのである。海外からの攻撃と言う状況で、日本にある名家が協力体制に入れば、日本は、安定するだろうと考える人間もいる。
話がまた逸れてしまった。《炎魔》家とは、古くは、鎌倉の時代から続く、古い陰陽術師の一家で、《火》を基本として扱う家の総元締めであると言っても過言ではない。莫大な火力で、名家の中で、威力的なことではもっとも強いといわれている。だが、その分の魔力の溜め時間はもっとも長いので、戦うときは、魔力の溜めの少ない家が戦えば、序盤は有利に闘えるらしい。序盤は、の理由は、終盤に魔力を溜めた大威力魔法が放たれ、圧倒されるから。瑠璃さん曰く、スロースターター。
その様な、事しか分かっていないが、瑠璃さんは、もっと詳しく知っているようだ。だが、聞いても教えてくれないため、少ない情報になってしまう。そもそも、今、《炎魔》家は、《劉水》家と闘って、戦力が、減少傾向にあるのだから、こちらに、人を送る必要性がわからない。因みに《劉水》家は、《水素》家が分裂した片割れだ。江戸の末期辺りに、《水素》家に双子が生まれ、《劉水》家と|《水飛沫》《みなしぶき》家に分裂したのだ。
話がまたまた逸れてしまった。つまりは、人員がただでさえ減った現代で、さらに戦闘で人員が減ったのにも拘らず、別の場所へ人間を、送ってくるなんて言う可能性はないと思う。
それを、瑠璃さんに話してみる事にした。すると、俺とは、別の見解が帰ってきた。
「むしろ、人員が少ないからじゃないかしら?」
「少ない、から?」
「そう、例えば、戦力を失わないために、最高戦力を別の場所に移して、安全性の確保とか、子孫を確保することで、安泰化を謀るとか」
なるほど、そう言った考え方もあったのか。それなら、どちらの可能性もあるが、まあ、美希の実力次第。やはり、直接接触した方がいいのか?
「接触は控えた方がいいわよ。別の一族の魔法使いは、敵とみなされるわ。それが、たとえ、名家の家系でもなんでもなく、ただの凡人でも、魔法が使えたら敵よ」
それも、そうか。
「だから、向こうから、接触してきたときだけね。相手は、《炎魔》家の可能性があるから気をつけないとお陀仏よ」
「分かりました。気をつけます」
「さてと、じゃあ、晩御飯作らなきゃ♪」
翌日、俺は、昨日と同じ時刻に家を出た。すると、昨日と同じように、声を掛けられた。だが、それは、時雨さんではなかった。もちろん、御影でもない。
「ヒノキくん、おはよ」
「ん?ああ、美希か。おはよう」
美希が、挨拶してきたのだ。朝から元気な奴だと思った。しかし、向こうから声を掛けてくるとは、困りものだ。俺は、見張っているだけで済まそうと思ったのに。
「美希、お前って、何のために転校してきたんだ?」
一か八か、聞いてみる事にした。
「ふぇ?何のためにか…?う~ん、お父さんの都合って昨日言ったじゃない、あれって嘘なの。実はね…」
言いかけたその瞬間、後ろに、殺気を感じた。言い知れない殺気。一般人が発する殺気ではない。殺人のプロ、暗殺者の殺気である。素早く周りを確認する。すると、電信柱の上にいる人物を確認した。無論気配は消しているし、姿も消している。しかし、俺には、通じない。瑠璃さんにそういう訓練を受けている。なので、見ないように視ると言う、器用な技を使って確認したわけだ。何者だろうか。おそらく、美希を観察しているので、近づいた俺に殺気を放ったのだろうが、これでは、美希の敵か味方かが分からない。どちらにせよ、美希は只者ではないのは確かだ。
「どったの?ヒノキくん」
「ん?ああ。ちょっとな」