4話:朱野宮椛
翌朝、俺は、昨日の言葉の意味を知った。
教室がざわついている。
「ヒノキ、おはよ。編入生が来るんだって」
編入生……?この時期に?
「どんな子だと思う?四之宮くん」
「ボクは、一般の男子だと予想したんだけど、ヒノキの意見は?」
御影も時雨さんも俺に意見を聞いてくる。
「わからん」
俺は、その一言で話を終わらせた。しかし、俺は、知っていたのだ。いや、知っていたけど知らなかったのだ。その編入生を。
編入生が、教室に入ってきたそのときに、ざわつきは消え、静寂に変わる。
あまりの綺麗さに、誰もが、息をするのも忘れる。太陽の光に反射して、煌びやかに、赤っぽい髪がなびく。桃色や朱色、緋色、茜色、赤色など、様々な色がグラデーションのように見える。
その黄金に輝く、太陽のような目に、誰もが吸い込まれるのではないかと思う。そして、見入る。見とれる。
大きな目を彩るような二重の瞼に、すっと通った鼻。ほんのり赤く染まった頬は、可愛さを引き立てる。小さい口の周りを飾る唇は、健康的なピンク。
体型は、子供っぽく、胸はそこまでないものの、それが、幼さと可愛さを引き立てる役割を担っている。身長も同じで、俺よりも頭一つ分小さいが、それが幼さと可愛さを引き立てる。
纏っている白を基調とした、うちの学校の制服が髪の赤を、より一層目立たたせている。
そして、彼女が黒板に名前を記す。
――朱野宮 椛
そう、彼女の名前。編入生は、モミジだったのだ。
明日を楽しみに、と言うのは、このことだったのだろう。モミジが入ってきてから数秒が経過したにも関わらず、誰も何もしない。いや、出来ない。
モミジが、口を開く。
「朱野宮モミジと言います。よろしくお願いします」
まだ、時は動かない。鈴の音のように高く、綺麗で透き通った声。彼女の声は、耳から入り、心の奥底まで浸透するような、そんな感じがする。そして、彼女の声が、凍りついた時を溶かしたように、一気に歓声が沸きあがる。
そして、そんな中で、モミジは俺の方を向く。そして、にっこりと、天使の微笑みを向ける。俺も笑い返す。
「二時間ぶりだね♪ヒノキくん」




