表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法-夜と剣-  作者: ぴーちぷりん(せす)
日常
3/38

2話:学校

 俺は、素早く、アンケートを回収すると、急いで、家から出た。時間的にはまだまだ余裕綽々だ。しかし、家には、長居したくないのだ。早足で、学校に向かうことを、頭の中で、決めた。早々、学校が見えてきた。そして、校門から入る、そのとき、不意に後ろから声がかけられた。

「おはよう、ヒノキくん」

「ん?ああ、御影」

こいつは、風見御影。見た目の感じが女子そのもので、茶髪のショートヘアに、端整な顔立ちで真っ白い肌をしている。しかし、男であると言うのだ。その真偽は、俺には分からない。体育の授業は、生まれつき身体が弱い、日光にあまり当たれないなどの、複数の理由から、常に休みになっている。彼(一応男だから彼としておく)が、女ではないかと疑っているものは、クラスに数十人単位で存在する。男女問わず、彼が、女ではないかと疑っているのである。と言うのは、流石に冗談だ。雨月さんや俺は疑っているものの、他の人間は、男として接している。いや、雨月さんも俺に話を合わせているだけなのかもしれない。何故、其処まで疑われることがないのか、疑問も甚だしい。魔法の関与も思わず疑ってしまうくらいに女々しいのだ。

「こんな時間に校門にいるなんて珍しいね。いつもは、もう教室で寝ているか、読書しているかでしょう?」

「ああ、アンケートを取りに戻っていたからな」

まあ、性別はさておき、それが気にならないくらい、仲の良い友達なのだ。親友といっても過言ではない。

「アンケート?ああ、文化祭のアンケートだね。早く出さないとダメじゃないか」

まるで、姉が弟を軽く叱る様な口調で注意された。

「それで、何を選んだのかな?」

アンケートで決めるのは、文化祭で何を行うのかだ。アンケートにあるのは、喫茶店や焼き蕎麦の模擬店、たこ焼き、統計グラフの資料展示(先生案)など多々ある。その中で、俺が選んだのは、休憩所だった。

「休憩所」

「あはは、やっぱり、休憩所だった。予想通りだよ」

何故だか、居心地の悪い雰囲気になったので、無理やり話題を転換しようと、御影に聞き返した。

「じゃ、じゃあ、お前は何を選んだんだよ」

半ば、怒鳴るように聞いた。すると、御影は、笑いながら、答えた。

「ボクかい。ボクは、喫茶店だよ。料理は元々得意だからね」

ますます、女々しい奴だ。そんな感想を抱きながらも、納得してしまうのが、俺だった。その料理の腕前は、普段から持ってきている弁当の中身を見れば一目瞭然だ。丁寧で美しくも見える弁当なのだ。たかが弁当一つに大げさな、と思うかもしれないが、実際に見れば分かるのである。ちなみに、俺は、瑠璃さんの手作り弁当である。


 そんな談笑をしながら、教室に向かう。いつもと違う時間のため、人が多く、少々手間取ってしまったが、数分で教室にたどり着けた。すると、教室に入った途端に、声をかけられた。

「四之宮くん、遅かったね。大丈夫だった?」

雨月さんだった。心配したように、俺に、声をかけてきた。全く持って問題などなく、大丈夫も何もないのだが。

「また、心配をかけたのかい?全く、ヒノキくんは、もう少し気をつけないとダメだよ」

「おいおい、別に心配をかけた訳じゃない。勝手に心配されたんだ」

俺は、心配される様なことは何もしていない。勝手に心配されたのに、この言い草はいかがなものかと思う。普段のこともそうだ。俺のやる事を一々無駄に心配を勝手にするため、この姉のような態度(本人曰く兄)で注意を受ける羽目になるのだ。俺が一体何をしたと言うのだろうか。

「似たようなものじゃないか。結果的に心配されているキミが悪い」

断言されてしまった。この反応は、理不尽極まりないと思うのだが、なかなか賛同してもらえないのだ。

「それで、四之宮くん。アンケートは持ってきたの?」

「あっと、これだよな。はい」

アンケート用紙をさっさと渡した。

「はい、確かに受け取りました。これからは、なるべく遅れないように気をつけてね」

気をつけてっていわれても困るのだが。その前に一つ忘れている事があるような気もする。何だ、何を忘れているのだろうか。そうだ、確かあの時、『あれって、今日までだったよね』と言っていたはず。待てよ、今日まで(・・・・)だと。

「遅れてないじゃないか!今日までだっただろ!」

「………あ、そう言えばそうだったね♪」

そうだったね、じゃないだろ。散々注意しておいて、結局、俺は何も問題を犯していないじゃないか。いつものことながら、酷い言い草だと感じられる。


 そんな、一悶着があっても落ち着いているのが、我がクラスだ。流石に慣れるというものだろう。うちの学校は、クラス替えという、学校の楽しみの一つが、最初から失われているというのだ。よって、二年生である、今現在のクラスは、一年の時をすでに共にした仲なのだ。一年以上も一緒にいるのだから、流石に、このやり取り(俺が御影と雨月さんにいじられる)を気にも掛けないレベルだろう。慣れと言うものは、やはり恐ろしい。昔は、それなりに、大なり小なり、反応があったのに。酷い時は、クラス全員からの追撃や大爆笑など、集団いじめと見紛うほどのことだった。まあ、いじめでもなんでもないのだから、訴えたりするということもなく、普通に過ごしていたのだけれど。今考えると、このクラスもこのクラスで、色々と酷い奴らなのではないかと思う。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ