2話:聖劔《明剱》
息を呑んだ。その美貌に、目を奪われ、一時、呼吸すらも忘れた。それほどまでの、美しさ。何者なのか、そんなことはどうでも良くなるほどの美しさだったのだ。朱色の艶やかな髪。《漆黒》の瞳の無機質さは、それを冷美として、一層引き立てる。そして、白い肌は、雪のように透き通っている。顔立ちは、美人そのもの。
「やあ、《天月》」
「貴様ァ!何故、何故生きている?!」
何故、生きている。どういうことだ。神主は、この人が死んだと思っていたのか。
「ありえん。ありえんぞ?!少なくとも、百年は前の人間だ。それが、何故生きているのだ?!」
百年は前。それだとしたら、瑠璃さんと同系の人なのか。
ありえないことではない。前にも少し触れているが、瑠璃さんは、一四二歳だ。それは、体内の魔力をコントロールし、身体の成長を、調整して、年取らない、いや、性格には、身体を成長させないで居るのだ。瑠璃さんの場合、最も体が動かせる年代である、二十代に固定している。この人も同様なのだろうか。
俺は、別段驚きもせず、その様子を見守った。
「別に、ありえない話ではないだろう?それにしても、《剣》を返してもらいたいんだが。どこにあるんんだい?」
「なっ!あの剣は、家のものだ。貴様のものではないッ!」
剣…?あの《剱》のことか。そう思った、その時、一瞬で、彼女の姿は消えた。
そして、あの《剱》を持って、再び現れる。
「《剣》は、返してもらう」
「まて、それは、《聖剱》だ。我ら、《天月》しか持つことを許されていない!」
フードの女性は、《剱》をもって行こうとする。
しかし、異変は、突如起きる。女性の右半身全てに、黒い羽のような印が浮かび上がる。そして、それが、蠢くように舞う。
「なっ、これは、《呪印》…?!」
《呪印》?聞いたことが無い。しかし、彼女は、その体に浮かびあがる、それに蝕まれるかのように、苦しむ。そして、《剱》を落とした瞬間にそれは消えた。
「なんだ、今の」
俺は、思わず、口にしてしまった。
女性は、再び消え去るかのようにして、その場を去った。《剱》を残して。そして、俺は、《剱》を掴む。瞬間、頭を締め付けるような痛みが走る。
「これ、は」
眩むように、視界が狂う。そして、一瞬だけ、この《剱》の真の持ち主をみたきがした。それは、朱色がかった銀色が特徴の女性。
「なんだ」
《剱》は光を満たし、俺の腕を包むかのように、光を解き放つ。
「馬鹿な。我ら以外の一族に反応するはずなぞ・・・」
「《聖剱》…。違う。これは、聖劔《明剱》。」
そう、これは《明剱》。何故だろうか、とても、懐かしい。




