9話:発生光
放課後、おそらく、奴らがまた見張っているだろうと思い、美希とは、少し時間差をつけて、出ることにした。美希を追って見張りが動くのを観察しようと思ったのだ。
予想通り、奴らは、美希を追って動き出した。それを気付かれない様に、尾行する。やはり、二人いるようだ。何者なのかは分からないが、一応、正体を掴まないと、こちらまで危害がある可能性があるのだ。《劉水》家である可能性が現状で一番高いのだが、そうとは限らない。
現在、敵の有力な候補は、《劉水》家、《水飛沫》家だ。そのどちらかであるのか、どちらでもないのか。それが分からない事にはどうしようもない。その見分け方についてなのだが、元々の《水素》家持っていた、ポテンシャルである《水術》と《水精技》のどちらを使うかだ。
《水素》家持っていた、《水術》と《水精技》について。《水術》とは、《水操戦術》の略称であり、いつしか《水術》が定着したものである。《水操戦術》はその名の通り、水を操り闘う技で、水を弾丸のように放ったり、剣のようにしたりと言う技である。
一方、《水精技》だが、《水精霊召喚技》の略称であり、いつしか《水精技》が定着したものである。《水精霊召喚技》とは、その名の通り、水の精霊を召喚して、使うものである。その技は、大気中の水分を操ったり、水に干渉したりと、直接的攻撃は少ないものである。
《水素》家が分裂した際に、《水術》は《劉水》家に、《水精技》は《水飛沫》家に、それぞれ受け継がれたのだ。つまり、《水術》を使えば《劉水》家、《水精技》を使えば《水飛沫》家と言う事になるのだ。
技そのもので、判断するのは、大変難しくなる。例えば、大気中の水分を操ると言う結果だけなら、《水術》でも再現できる。ある程度の水を放出すれば、大気中の水分は高まる。いや、そんなことをしなくても、水を操れば、変動的に、その周囲の大気の水分も減るのだ。それだとしたら、どうやって判断するのかと言うことだが、それには、少々込み入った説明が要る。
判断の仕方だが、魔法と言うものには、発生光というものがある。発動時に魔法陣が現れるのだ。その色は、魔法の属性によって分類される。例えば、《火》は《赤》。しかし、それだけではなく、その色の中でも、威力のある魔法は濃い。逆に、威力の少ないものは薄い。何故このような事になるのかと言うと、威力の強い魔法には、多くの魔力が必要になる。多くの魔力が集まると、色も濃くなると言う訳だ。逆も同様に、威力の弱い魔法には、少量の魔力で十分になる。少ない魔力がだと、色も薄くなると言う訳だ。これを、《水術》と《水精技》に当てはめると、《水術》は、普通の青色になり、《水精技》は薄い水色になる。普通の青と言うのがポイントで、《水》は、前述のように、もっとも魔力を消費しない魔法である。つまりは、《水》は、威力がなく、スピード重視のため、濃い魔法陣はない。しかし、《氷》の魔法は《藍色》から《紫色》になるため、あえて言うなれば、《氷》が、水の最も威力の強い魔法である。
一応記すとすると、《木》が《緑》、《火》が《赤》、《土》が《茶》、《風》が《黄》、《水》が《青》となる。追記するならば、《夜》は限りなく黒に近い《紺色》。《氷》は、《藍色》から《紫色》。《闇》は、限りなく黒に近い《藍色》。特異魔法は、それぞれ色が違う。
特異魔法。これの説明を忘れていた。特異の名の通り、特殊で異質な魔法だ。能力は、様々で、《変装》や《治癒》と言うのもこれに入る。しかし、それらの特異魔法は、代用の可能なものもある。例えば、《変装》は、《風》の中に《風装》と言うものがある。《治癒》は、《水》の中に《癒し》と言うものがある。つまりは、特異である意味がないのだ。しかし、中には、代用の聞かない魔法がある。それが、《輪廻》であったり、《終焉》であったり、《創世》であったりするのだ。それらは、とてつもない威力であったり、人智の届かない技であったりするのだ。それらは、伝説の魔法となっている。《創世》は、世界の始まりの魔法使いが使ったと言われているし、《終焉》は、世界を終わらせる魔法使いに受け継がれると言われている。《輪廻》にいたっては、存在の確認すら儘ならない。そんな特異魔法の伝承は、様々あるが、ある一定の人数が使える《通常特異》と、数百年に一人現れるかどうかの《究極特異》と分類されるのだ。
属性に分けられる魔法の中でも特異魔法に近いものがある。《夜》なんていうものがそうだ。使える人数が少なく、多大な魔力を使用する。それは、元々が、別の魔法の複合体であるのだ。《夜》は《闇》と《影》の二つを混ぜ合わせたものに成っている。他には、《土砂》は《水》と《土》だ。その様に、使い手の少ない上に、複合の多大な魔力が必要なものが多いのだ。簡単に言うと、元々使い手の少ないのに、他の魔法と組み合わせたり、魔力が多大に必要だったりするので、特異に近いのだ。
中には、そう言った魔法も、特異に入れてしまって構わないのではないかと言う意見もあり、《準特異魔法》と呼ばれることもなるのだ。
また、分類不可能な魔法も存在している。それが《雷》だ。《雷》を使用する魔法使いはいるのだが、属性に分類されないが、属性と同じくらいの使用人数がいる。だから、《特異魔法》ではないし、《属性にも分類されない》。なので、《雷》も《準特異魔法》と呼ばれているのだ。
話が大幅に逸れてしまった。つまりは、発生光で、どの魔法かを判断する事が出来るということだ。《水術》は、普通の青色になり、《水精技》は薄い水色になることを踏まえて、奴らの魔法を観察する。




