星屑を浮かべよう
少し前に書いてみたものをひっぱってきました。珍しく内容をさらりとしたふうに書いてみました。
「星になりたい」
ぽつり、呟いた。横にいる彼がゆっくりと私を見つめるのがわかる。
世界は今や水色ではなく、暗い、でも黒にけして染まらない紺色が覆い尽くしていた。らんらんと、まるで針で刺して出来た穴のように、空には白と赤の星が輝いている。
ふぅ、息が白く染まる。
「星に、なりたい」
「どうしてだい?」
もう一度呟けば、彼はその夜空と同じ色の髪を揺らして私に言った。ゆっくり私は首だけを動かして、彼と顔を合わせる。私の目と、彼の小宇宙のような目が合った。
「星はずっと空にいて、夜になるとあの優しい紺色の海に浮いて輝くよ」
「そうだね」
「それにこの地球を空から眺めることができる」
「うん」
「そうしたら貴方を、貴方の幸せをずっと見守れる」
「……」
「そしてさいごには、流れ星になって、あなたの願いを叶えるの」
まだまだ言いたいことがある。「星になりたい」今言った理由だけじゃ到底足りない程の、表せられない程の想いが込められている。彼はそのことに気付くのだろうか。
「知ってるかい?」
「なにを?」
「流れ星っていうのはね、星が僕たちに落ちてくる最中に燃えて、消えゆく姿なんだよ」
「知ってる」
「星が一番輝くのは寿命を迎えた最期の時だっていうことも?」
「知ってるよ、星は貴方が好きなモノだから。自分でいろいろ本を読んだし、前に、貴方言ってた」
「そうかい?」
「そうだよ」
「そうか」
「自らを燃やして消えゆく流れ星を僕たちは綺麗と言う。心からそう想う人もいるだろうし、一瞬だけ思う人も、口だけそう言う人だっているよ。言葉は同じはずなのに、重さが違う時が沢山ある。
君が身を焦がして僕を幸せにしたいと願うのは、僕にとって、この空から追い出された星屑と同じだよ。そらからこぼれ落ちた星屑のように、君の幸せが抜け落ちて、ボロボロの石のように灰へと姿を変えるなら、僕の幸せも蜃気楼のような幻へと姿を変えるんだ。
君と幸せを育む夢を、願いを、未来を、僕は欲しい。
北極星のように、僕の道しるべになってくれないか。僕の、帰る場所へ。」
きらり、小宇宙に星が煌めいた。




