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【1】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ1(前編)※連載版と同じ内容です

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第十九話 文化祭後編〜夕焼けの屋上とシステムエラー!?

文化祭の賑やかな喧騒から少し離れ、生徒会室へ戻ると――。

「あれ?」

長テーブルに突っ伏したまま眠っている人物がいた。

窓から差し込む昼下がりの陽光を受けて、さらりと流れる金髪がきらきらと輝いている。

鬼塚烈だ。

(姿が見えないと思ったら、こんなところでサボってたんだ?)

起こさないよう、そっと近づく。

いつも自信たっぷりに細められている金色の瞳は閉じられ、長い睫毛が静かに影を落としていた。

こうして見ると、なんだかいつもより幼く見える。

「ふふ……可愛いなぁ〜」

自然と笑みがこぼれる。

そのまま顔を近づけると――。


「いや〜ん。……エッチ。」

「!?」

ぱちり。至近距離で金色の瞳と目が合った。

「ふぎゃあああぁぁーーーーっ!!」

「おいおいっ!? 叫ぶのはこっちだって!」

突然の絶叫に、烈も飛び起きる。

「しっ! 会長! みんな来るから!」

慌てた烈に後ろから抱き止められ、口元を押さえられる。

(ち、近い近い近いっ!!)

背中から伝わる体温。耳元にかかる吐息。

ドクンドクンと鳴り響く心臓の音。

――どっちのものか分からない。

「お、おい……落ち着けって。」

「~~~~っ!!」

声にならない。数秒後――

状況を理解した烈が、慌てて身体を離した。

「あー……悪ぃ。」

「う、ううんっ!」

二人揃って真っ赤になりながら、視線を逸らした。


烈には不思議な魅力がある。

からかったり冗談も多いけれど、どんな話でも最後まで受け止めてくれる包容力があった。

だから――。

最近うまくいかないことへの不安。

みんなに心配をかけてしまっている申し訳なさ。

胸の奥に溜まっていたものを、気づけばぽつぽつと話していた。

烈は何も言わない。ただ、うんうんと頷きながら聞いてくれる。

その空間が、とても心地よかった。


「ありがとう、烈! すごくスッキリした!」

そう言うと、烈は少し目を細めた。

「元気出たみたいで何より。」

穏やかな笑み。

いつもの豪快な笑顔とは違う、どこか優しい表情だった。

「そういや会長、文化祭はもういいのか?」

「うん、だいたい全部回ったかな?」

「なら……俺のとっておきの場所に連れてってやるよ!」

そう言って立ち上がった烈の後を追いかける。

上へと続く階段。案内された先は――。

「屋上?」

「正解!」

ニヤリと笑いながら、烈が鍵を取り出した。

「えっ!? 鍵持ってるの!?」

「まぁな。生徒会の特権ってやつ?」

カチャリ。扉が開く。

目の前に広がったのは、夕暮れに染まり始めた学園の景色だった。


「わぁ……!」

校舎の向こうに広がる校庭。

模擬店の呼び込み。

遠くから聞こえる吹奏楽部の演奏。

文化祭を楽しむ生徒たちの笑い声。

賑やかな世界を、一段高い場所から見下ろす。

風が心地よく頬を撫でた。

「すごい景色……こんな場所があったんだ!」

「いいだろ?」

烈は手すりにもたれながら、静かに眼下を見つめる。

その横顔を見て、ふと思った。

(あぁ……この人は、こうやっていつもみんなのことを少し離れた場所から見守ってるんだ。)

ゲームをプレイしていた頃の記憶が蘇る。

夕暮れの屋上。ヒロインと二人きり。そして――。

『何があっても……俺のこと、信じてくれるか?』

(あ……)

烈ルートの告白イベント。確か、この後――。


「……なぁ、会長。」

「え?」

ゆっくりと振り向いた烈。

夕陽を背にした金色の瞳が、真っ直ぐ私を見つめる。

「何があっても……俺のこと、信じてくれるか?」

「……え?」

ドクン――。

思わず息が止まった。

今の言葉。今の表情。まるでゲームの中と同じ――。

「それって、どういう……」

「……いや。」

烈はふっと視線を逸らした。

「悪ぃ。今のは忘れてくれ。」

「烈?」

「気にすんな……。」

そう言って、いつもの調子で笑う。

けれど、その笑顔はどこか寂しそうで――。

私は結局、その意味を聞くことができなかった。


校内放送が流れ始める。閉会まで、あと少し。

「さぁ、そろそろ戻んねぇと。みんな心配するだろ?」

「烈は戻らないの?」

「あぁ。俺はもう少し、ここで休んでく。」

「そっか!」

私は笑顔で手を振った。

「じゃあ、また後でね!」

「おう。」

パタン。

屋上の扉が閉まる。

階段を下りていく小さな足音。

それが完全に聞こえなくなってから――。

夕焼け色に染まる空の下、烈は小さくため息をついた。

「……俺の意気地なし。」


烈と別れて、私は足早に階段を下りていた。

顔が熱い。

豪の時といい、烈の時といい、今日はやたらと心臓が騒がしい。

だから――。ちゃんと前が見えていなかった。

階段を下りた先の曲がり角で、一人の生徒とぶつかった。

「っ……ご、ごめん! 大丈夫!?」

ぶつかった衝撃で、その生徒の持っていた携帯端末が床へ落ちた。

「あっ、ごめん……端末!」

反射的に拾い上げようと手を伸ばす。

指先が端末に触れた――その瞬間。


バチバチバチッ!!


激しい電流が、指先から全身へ駆け抜けた。

閃光が辺りを包み込む――。


『▶システムエラー発生』

『▶キャラクター「如月玲」を初期化します』


脳内に無機質なエラーコードが流れ込む。

(え……? な、に……?)

視界が白く染まり、意識が急速に遠ざかっていく。

そして――。世界は、真っ白になった。

▶恋エグメモ


【神城 豪】=【74/100】

(玲を守りたい想いは恋心へと変わり始めている。玲の笑顔と無事が、何より大切なものになりつつある。)


【鬼塚 烈】=【73/100】

(屋上で二人きりの時間を過ごし、想いが大きく加速。特別な存在になっている。)


【白砂 律】=【70/100】

(玲を最優先に考えるようになり、独占欲が芽生え始めている。誰にも譲りたくない気持ちが強くなっている。)


【千早 絢】=【68/100】

(玲を守れなかった後悔から、執着と決意を深めている。玲のための覚悟を抱き始めている。)


【黒崎 冴】=【66/100】

(玲を失う恐怖を知り、以前のように割り切れなくなっている。失いたくない特別な存在として意識し始めている。)


【サクラ】=【58/100】

(玲と共に過ごす時間を大切にしている。憧れだった感情は、少しずつ恋心へと変わり始めている。)


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