天界規定第3条「光輪、双翼、弓矢揃い天使とす。」
「第2位階下級天使、ユーリカ。神の名のもとに、有罪と認定する」
審判官の声は冷たく、空気を凍らせる。
私は必死に抗弁する。
「ま、待ってください!!私は……私は渡された資料に従っただけです!!こ、これは事故です!!」
けれど、天界の法廷は感情では動かない。
規定、証拠、裁定。それだけが真実だ。
「……刑を宣告する。天使ユーリカ、貴様の神聖を剥奪し、下界追放の刑とする!!」
――下界への追放。
光輪が剥がれ、翼が切り取られる。
身体から神聖さが剥がれ落ち、天使はただの人間として下界に追放する刑。
***
「執行までの間、虚獄に貴様を幽閉する!!」
虚獄は無限の暗闇。
光も希望も、全て吸い込む黒。
ここで私は、刑が執行されるまで「罪の映像」を延々と見せられることになる。
最初は必死に目を背けた。
だが、鎖も壁も、映像の光も、私を逃がさない。
繰り返し、何度も、殺めた者たちの顔が押し寄せる。
――泣き叫ぶ者たち、怯える者たち、無辜の命。
「な、なぜ……なぜ私が……」
「嫌……お父さん!!」
「嘘だ!!あぁぁぁぁぁ!!」
叫びが、虚空に反響する。
これは…‥私が導いてきた人たち。
私は理解し始める。これまで自分がしてきたことは、善意ではなく……罪だった。
映像が続くうちに、心の奥で小さな疑問が芽生え始める。
――なぜ、プリスカ様は私に渡す資料を、確認もせずに信じさせたのだろう。
――なぜ、天界は人々を無理やり異世界に連れていくのだろう。
――なぜ、未来に罪を犯すことがわかっているのに、それを防ぐのではなく、殺めるのだろう。
『神様……どうか……お兄ちゃんを……返してください。』
もう何十回めと繰り返される映像に私は、ただ傍観するしかなかった。
小さな違和感は、やがて胸の奥で膨らみ、疑念に変わる。
そして、胸を締め付ける罪悪感の中で、天界のあり方そのものの異常さが、少しずつ明らかになってくる。
「……神様って本当にいるのですか?」
絶え間なく流れる罪の映像の牢獄の中で、私の信仰も、善意も、すべてが溶けていく。
思えば、私は一度も神様にあったことがない。誕生した時から幼礼院でも教令院でも神様のことは教えてもらってもあったことも声を聞いたこともない。
――私は、これまで何のために働いてきたのか……。
ーー神様、あなた様がいらっしゃふのならなぜ無辜の民を殺めるのですか?
本当に彼らは未来で罪を犯すのですか?
闇が、私を包み、光も、希望も、正義も、消えていく。
永遠に続く罪の映像の牢獄で、私は絶望に沈んでいく。
ーーあぁ、神様。
もし、あなたが本当にいらっしゃるのなら
ーーどうか私を、許さないで下さい。




