第3章 一日一生 その10
レースは第三泳者の登場へ――
梨々香はにやりといたずらっぽい笑みを浮かべると、周囲の期待を一身に受けて勢いよくパーカーを脱ぎ捨てた。
その瞬間、揺れ動く大きな胸が視線を一気にさらい、太陽の光を浴びて肌は艶やかに輝いた。
はじけるようなピンクと黒のビキニが露わになり、観客席からは思わず息を呑むような歓声がどっと沸き起こる。
「おっと、これはたまらん! パーカー脱いだ瞬間のあの揺れ……胸がまるで生きてるみたいだ!」
実況席の声は興奮に満ち、マイク越しに弾んだ。
「梨々香選手の圧倒的な存在感! 力強さと大胆さが混ざり合った、その動きに観客の目が釘付けだ!」
その隣に静かに立つのは天音。瞳は冷静にレースを見据えている。
「さあ、バタフライの女王たちが揃いました! ギャルの小悪魔、梨々香選手! いつだって力強く豪快! ビキニ越しに見える筋肉の躍動がたまらない! そして天音選手! まるで水の妖精のようなしなやかさ! 流麗な曲線美と透明感に満ちています! この真逆の個性が激突する、見逃せない一戦です!」
スタートの合図とともに、二人は勢いよくプールに飛び込んだ。
梨々香は全身の力を込めて、力強く腕を振り上げた。水面を激しくかき分けるたびに、彼女の豊かな胸が水に押しつぶされるように揺れ、まるで波を乗りこなすかのように躍動する。
その蹴り足は跳ねるようにリズミカルで、水しぶきが高く舞い上がり、観客の視線は一瞬も彼女から離れなかった。
力強く押し出す腕と跳ねる足の動きが一体となり、梨々香のエネルギッシュな魅力を余すところなく伝えていた。
「さあ! 梨々香のバタフライだ! 力強く豪快な腕のかきで水面を激しく打ち破る! 体が水面から出るたびに胸が揺れ、その躍動感が観客の視線を釘付けにしている! ただのパワフルじゃない、魅惑的なエネルギーが炸裂だ! この小悪魔がプールを支配するか!? 見逃せないぞ!」
一方、天音はまるで水と一体化したかのように滑らかに体をくねらせた。しなやかに波打つ腰の動きが水面に優美な波紋を描き、その白く透き通る肌は淡く光を反射している。
彼女の泳ぎは静かでありながらも芯が強く、まるで水面を舞う水の妖精のように繊細な動きで水を切り裂いていく。
水に触れるたびに、天音の胸はそっと水面を押し上げ、しなやかな曲線が観客の視線を引き寄せた。
「そして注目の天音選手! その泳ぎはまるで水と一体化したかのような流麗さ! 繊細なしなやかな体の動きで水面に美しい波紋を描き、柔らかな胸の曲線も優雅に揺れている。神秘的な雰囲気に包まれ、まるで水の妖精が舞い踊っているかのようだ! この静かな強さが勝負の鍵を握る!」
水中で激しく弧を描く二人の体は、勢いと優美さ、破天荒と清楚という対極の個性を鮮やかに映し出していた。
そして終盤、天音がわずかに差をつけ、静かに前に出る。
プールの両端からは歓声と興奮が入り混じり、会場の空気が熱く高まっていく。
「フィニッシュ! わずかな差で天音選手が勝利を掴み取りました! まさに優雅さと力強さが融合した最高の泳ぎ! 観客の心を揺さぶるドラマティックな勝負でした!」
水から上がった天音は、ほのかな笑みを浮かべながらも、凛とした落ち着きを保っている。
一方、隣の梨々香はお転婆な笑顔で水しぶきをあげながら、勝者のもとへ元気よく駆け寄る。
「くそ~負けた! 天音強すぎだよ~!」
梨々香が元気よく手を差し出すと、天音もそっと手を伸ばし握り合った。
観客席から惜しみない拍手が送られ、どちらのチームにも温かな空気が満ちている。
戻ってきた梨々香に、摩耶が穏やかな笑みを浮かべて声をかけた。
「悪くなかったんじゃない?」
朱音も顔を輝かせてうなずく。
「うん! めちゃくちゃカッコ良かったよ!」
陽翔は目を輝かせ、少し興奮気味に言った。
「本当に泳ぎがうまくて、まったく目が離せなかった!」
その言葉に梨々香は思わず頬を赤らめ、照れくさそうに視線を泳がせながらぽつりとつぶやいた。
「陽翔も……頑張ってね」
陽翔は軽く拳を握りしめ、力強く頷いた。
一方、Bチームでは――冴が静かな口調で天音を讃えた。
「本当に美しかった……」
ゆかりは微笑みながら言葉を添える。
「このままいけば、優勝しちゃうかもね!」
楓は力強く腕を組み、大きな声で宣言する。
「よし、最後は俺の出番だ! この輝きをしっかり目に焼き付けておけよ!」
そんな楓に、ゆかりは優しく微笑みかけた。
「うん、頑張ってね、楓。私たち、ずっと見てるから」
楓は少し照れたように顔を背けながらも、確かな決意を秘めた笑みを返した。
レースはまだ続くが、いまここにある幸せな時間を、誰もが心から楽しんでいた。