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知らない冒険者パーティーが家に来て追放宣言をするのだがって、犯人はうちの子だった!

作者: 山田 勝

「「「お前を追放する!!!」」」


「最初は愛想が良くて、よく働くと思ったけども」

「クエスト中、リーダーの命令を聞かずにあちこちに行く」

「しかも、よくワナにはまる!いえ、ワナがなくてもはまる!」



 え、突然、冒険者パーティーが家に来て、追放宣言された。私はべレッカ、一応、精獣使いだわ。


 と、とにかく・・・


「あのどちら様ですか?私は冒険者ではないのですが・・・」


「「「その聖獣だ!」」」


「ワン!」


「リスキーちゃんが?冒険者パーティーに?」


「そうだ!」

「ワンワンなついて、イケメン聖獣だと思ったが」

「すぐ、あちこちに行く!」


「そんなー!リスキーちゃんはうちの子です。パーティーに参加していませんわ!」




 ・・・・・・・・・・




 フウ、何とか帰ってもらったわ。この子は光と共にやってきた。


 ピカッ!と光り。私の前に神々しく現れたのよ。

 姿は狼にも似ている。白が基調で、灰色が所々ある。毛並みは良い。人なつっこい。

 とっても、フレンドリーな子なのよ。


 うちに住むことになったが、日中、あちこちに行く。

 まさか、冒険者パーティーに参加しているなんてね。



「リスキーちゃん!ダメよ!勝手に村のお外にいっちゃ!」

「ワン!ワン!」


 もお、どうしようもないわね。食事をあげて、日中は村の人達に世話を頼むが、リスキーちゃんは体力がある。すぐに振り切る。もう、縄をつけるしかないかしら。



 それからも、私が仕事に行っている間に、リスキーちゃんは冒険者パーティーに参加し、迷惑をかけているらしい。


「「「追放する!!!」」」


「だ、か、ら、冒険者で情報を共有していないの!リスキーちゃんは冒険者ではありません!」


「「「ヒィ」」」

「何だ!」


「ワン!」


 尻尾をフリフリしてこんな状況下でもリスキーちゃんは嬉しそうだ。


「ワン!ワン!」

「あ~、はい、はい、ウンチね」


 リスキーちゃんは変わっている。ウンチをするとき、私をジィとみる。


「埋めるからね」

「ワン!」


 よほど、育ちが良いようね。


「君は一体、どこから来たのかしらね」

「ワン!ワン!」

「あ、また、どっかに行って!」



 しばらくして、リスキーちゃんは聖獣ではなく、単なる犬ではないかと噂が立つようになった。



「何か、言葉は分かっているようだけども・・・」

「ただの犬じゃないか?」

「犬としても、毛並みは良い。お大尽に売っちゃいな」


「売りません!」

「村としても役に立たない聖獣の面倒を見る余裕はない」

「そんな」


 否定出来ない。でも、聖獣じゃなくても犬でも良いわ。


「君は大事な家族だからね」

「ワン!ワン!」


 あ、マンス商会のヴェロ様が来たわ。あら、親戚の子かしら。令嬢と一緒ね。村まで来てもらえるなんて嬉しいわ。



「ヴェロ様!」

「父上から聖獣使いだから、べレッカと婚約しろと言われたけどさ。聖獣じゃないじゃん。ほら、婚約解消だ」


 チャリン♩


「え、これは・・」

「解消の違約金だよ。ついでに商会クビな。これ、紹介状」

「まあ、これがベレッカ様・・・プウ、本当に村娘ね」


 ヴェロ様が連れて来た令嬢はドレスを着ているわ。それに比べて私は作業用の服だわ。


「ワン!ワン!ワン!」

「お、こいつか。人なつっこいな」

「でも、馬鹿そうよ」


「馬鹿ではありません。少し世慣れしていないだけです」

「犬の世慣れって何だよ」

「行きましょう。それにしても臭い村だわね」



「ウ、グスン、グスン・・・」


 リスキーちゃんのおかげで商会の若旦那と婚約できたのね。

 気がつかなかったわ。私はダメな子だわ。


 私は、リスキーちゃんの首に縄をつけた。


「ワン!ワン!ワン!」


 縄をつけたのに嬉しそうだ。


 そして、森の奥に行き・・・・捨てる。リスキーちゃんは帰り道分からないだろう・・・


「ワン!」


「ダメ!ごめん。リスキーちゃん!」


 私は最低だわ。思わず抱きしめた。


「ワン?」


「ごめんね。ごめんね。一緒に帰ろう。食事の事は後で考えよう」


「ワン!ワン!ワン!」


 仕事がクビになったわ。両親は小さな畑を残してくれたわ。耕し野菜を作る。

 森でワナをしかけ獲物を捕る。川で魚を捕る生活を続けていた。


 何とかリスキーちゃんの食事代も稼げるようになったわ。


「ワン!」

「今日は野鳥がかかっていたよ・・・あら、冒険者さんたちが多いわね」


 村に冒険者さんたちが多く来ていた。

 見かけた顔がいたので声をかけた。



「知らないのかい?この村に三ツ目グリズリーの群れが来る」

「5体よ!」


「ええ、それでしたら、領主様が討伐してくれるのではないですか?」


「この村は聖獣がいるから、大丈夫だとの仰せだよ」

「俺たちも村に雇われた。でも、依頼料少ないからね。期待するな」

「この先にマンス商会あるじゃない。村人を食べれば、マンス商会まで来ないだろうとの目論見だわ」


 村人は避難できない。他に行くところがない。他の村に親戚があっても食べ物に余裕がないわ。



「おい、来たぜ!やっぱり、5体だ」

「全員、避難だ!」

「ダメだ。矢が刺さらない!」


「「「ガオオオオオーーーー」」」


 柵を越えて来た。もうだめだ。

 私はリスキーちゃんと家に籠もろう。


 その時、リスキーちゃんは、三ツ目グリズリーに突っ込んで行った。


「ダメよー!君は犬でしょう!」


「ワン!ワン!ワン!ワン!」


「「「ガオオオオオーーーー」」」


「ワン!ワン!ワン!ワン!」


「「「ガオオオオオーーーー」」」



「ワン!ワン!」

「ガオ?!」

「ガオ!ガオ?」



 リスキーちゃんはワンワン吠えて、三ツ目グリズリーと・・・・


 仲良くなった。


「ワーン」

「ガオーン」


 そして、三ツ目グリズリーを連れて、村を素通りして、街に行ったわ・・・・・


 ☆☆☆マンス商会


「ウワー!三ツ目グリズリーが来たー!」

「逃げろー!」


「ヒィ、倉庫が、荒らされている」

「あの犬が導いているぞ!」



 マンス商会の倉庫を襲撃し、お肉をいっぱい食べたらしい。



 三日後、リスキーちゃんは村に帰ってきた。



「ワン!」

「君って子は」


 冒険者さんたちはリスキーにかけより謝罪をしたわ。


「すまない。追放は間違えだった!戻って来てくれ」

「リーダー今更言っても遅いわよ!」


 村長さんも村で面倒を見てくれると言ってくれたわ。


「村長として謝罪する。いつまでもいて良いぞ。村の共益費から食事代を出そう」

「ワン!」


 とっても良い子。奇跡的に人は死ななかったそうだわ。



 しかし、


 私とリスキーちゃんは裁判にかけられた。



「ベレッカは魔女だ。魔犬を使いマンス商会の倉庫を襲わせた!」


「そんなことありませんわ!」

「ワン!」


 この地の領主、男爵様直々の裁判だわ。

 マンス商会長とヴェロ様と婚約者も同席している。



「村も同罪だ!よって、村の財産をマンス商会の補償にあてる」


「はあ、領主様が守らないから、こんなことになったのではないですか?」

「「「そうだ!そうだ!」」」

「ワン!」


「村人は奴隷として売る!」


「横暴だ!」

「そうよ。どっちみち、リスキーがいなければ私達は死んだのよ!」



 その時だった。

 リスキーちゃんが遠吠えをした。


「ワオオオオオオオーーーーン」



 リスキーちゃんが向いた方を見ると馬車と騎兵が見える。あれは、都の騎士団だわ。


 馬車からは、見た事のない種族の方が降りて来た。

 黒髪・・黒目だわ。剣を持っている。冒険者にしては身なりが良いが騎士様ではないわ。その方は降りるなりリスキーちゃんにまっさきに向かった。


「うわー!ハスキー!シベリアンハスキーだ!」

「ワン!ワン!ワン!」


「あの、どなた様ですか?ワシはこの地の治める男爵、魔女と魔犬の裁判をしておるところじゃ」


 騎馬の先頭にいた方が、


「ほお、貴族学落第だな。この旗は陛下直轄の近衛騎士団なるぞ」


 と言うと。男爵様は、


「ホエー!」


 吠え面をかいたわ。


「こちらの方は異世界から転移してこられた勇者リヒト様だ!リヒト様と同郷の犬ということだな。つまり、勇者犬だ」


「「「「何だってーーー!」」」」


 皆は驚くわ。勇者様は気さくに話しかけてくれたわ。


「すごいよ。君がお世話をしたの?ハスキーは一緒に暮らすの難しい方だよ」

「そうなのですか?」

「名前は?」

「リスキーちゃんです」

「いい名だね。犬種と被りそうで被らないで性格が出ているよ」



 何でも、三ツ目グリズリーが出たと言う事でリヒト様が都から急行されたそうだわ。


「俺のいた世界でも、ハスキーがいなくなって、飼い主さんがドローンで捜索したら、熊の家族に混じっていたニュースがあったよ。ロシアの話だけどね」


「そうなのですか?」



 都の鑑定士に見てもらったら、とんでもないスキルがあったと判明した。


「コミュニケーションスキルマックスと出ております。これは魔物とすらも仲良くなれます・・・と翻訳スキルワンダフルですな」


「まあ、言葉が分かるのですね」



 あれ、私はなんで都まで来ているのだろうか?


「ベレッカさんは勇者パーティーの聖獣使いだよ。嫌かな」

「い、嫌じゃないです」


 その後、王国中をまわる事になったわ。


 男爵様は領主の職務不十分で爵位と領地を取り上げられ、勇者様の領地になる予定だわ。


 マンス商会は破産した。



「ワン!ワン!ワン!」

「君は、分かってやっていたのかしら」


 そろそろ、リヒト様と一緒に村に凱旋する。村の皆に婚約の報告に行く予定だわ。




最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
なんでリスキー(risky:危険な、冒険的、悪い)と名付けようと思ったんでしょう?名は体を表すみたいになっちゃってますね(苦笑)。 とはいえ、ハスキーは可愛い。 子供の頃、我が家にもいたので思い出し…
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