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第十九話 異世界人のアジト

 カッパ三人衆はどんぐりをあっという間に食べ終わります。

 神様は硬い外の殻をむきますが、カッパ三人衆はそのまま全部食べてしまいました。

 神様は、そんな三人をやさしく見つめます。


「食べ終わったら後は自由です。山に行って遊んで来て下さい。きっと、どんぐりだけでは足りないでしょう。デザートに山で猿を捕まえて食べて下さい。あいつら、僕が食べないのをいいことに増えてしまって、老人達の大切な畑を荒らしています。このあたりに近寄らないようにおどかしてやってください」


「はっ!!」


 三人衆は大げさに頭を下げて返事をすると、おやしろの後ろの藪の中に入って行きました。

 やぶの木のざわめきが、あっという間に遠ざかり三人の移動する音が山の中に消えました。


「は、速いニャ」


 余りの速さに思わず声が出ました。


「本当にはやいですね。アヅチ様、少しお願いがあるのですが」


 神様が二人の時には、私を呼ぶとき安土様と呼んでくれます。


「あらたまって、何ニャ?」


「廃病院から、真っ直ぐ南に魔力を感じました。調べてもらえませんか?」


「まさか、魔王の魔力ニャのか」


「いいえ。魔王のものではありません。人間のもののように感じました」


「さすがは神様ニャ。そこまでわかるのニャら魔王と知り合いニャのか」


「そうですね。面識はあります。一言話しただけですが……」


 神様は、そう言うと悲しげな表情になりました。

 なにか因縁でもあるのでしょうか。

 でも、私は神様の表情を見て、これ以上この話を続けることはできませんでした。




 私は、目を閉じて分体に意識を集中しました。

 廃病院ならユウキの学園の近くです。

 ユウキの所の分体をさらに分けて、南に向って飛びました。

 南には日本の魔都東京があります。

 上空から見たこの都市には緑がありません。

 私は寒気がしてぶるっと体が震えました。


「あれは……」


 私に探せるのかと疑問がありましたが、巨大な空気の揺らぎのような物が見えます。

 きっと、神様と長く一緒に暮らしてきたので、神様に私が見えるようになったのと同じように、私にも神様が魔力と呼んでいる物が見えるようになったのかもしれません。

 私は空気の揺らぎを目指して進みました。


 そこは、集会所のような場所です。宗教施設……でしょうか……

 外にはスーツを着た見張りのような人がいます。

 空に揺らぎが出るほどの魔力です。

 大勢魔法が使える人が集っていそうです。

 少しのぞいてみましょう。


「貴様は何者だ!?」


 ――えっ!!!!


 私の気配が分かるのでしょうか。

 私が前を通ろうとした瞬間に、見張りの男が言いました。

 恐ろしい人です。

 バレてしまいました。


「おいてめーー!!!!」


 もう一人の見張りが言いました。


「ニャッ!! おっ、お前達は、わ、わた、私が、みっ、見えるニョか?」


 私は声をかけました。


「まったくよーー!! てめーそれをやめろと言っているだろーー!! ビックリするんだよ!!」


 もう一人の見張りが言います。

 私の言ったことに対する返事ではありませんね。


「ひゃあーはっはっはー!! 適当にこう言っていれば、目に見えない奴が来ても追っ払えるだろう!!」


「ちっ、目に見えないような奴が来るかっていうんだよ!!」


「貴様は何者だ!?」


 また、見張りの男が言いました。

 まったく!! 見えていたわけでは無いようです! まぎらわしいです。

 私の声すら聞こえていないようです。


「やめろっ!! つってんだろーーっ!!!!」


 とうとう殴られました。

 意外と効果があると思いますよ。

 少なくとも私は、逃げ帰ろうと思いました。


 大扉を入るとロビーがあり、見張りの数が増えます。

 その奥の扉をくぐり抜けると、礼拝堂のような場所があります。

 さらに奥へ行くと地下へ続く階段がありました。

 薄暗い階段を降りると、また見張りのいる扉があります。


「ゲンバ様、すべて準備は整いました。そろそろよろしいのではありませんか?」


 部屋の中は会議室のようになっています。

 一番奥の壁に大きな国旗のような物が貼り付けてあります。

 その前には大きな体で軍服のような服を着た、髭面の男がこちらを向いて、贅沢そうなイスに足を組んで座っています。

 その手前にいる、やせた若い軍服の男が髭面に向って言いました。

 ゲンバと呼ばれた髭面の男は目を閉じて首を振りました。


「そ、そうです。なぜ、それほど恐れるのですか」


 もう一人の太った軍服を着た若い男が言いました。

 どうやら若い将校と言うところでしょうか。


「お前達は、いくつになった?」


 ゲンバが苦虫をかみつぶしたような表情で聞きました。


「はっ、二十五歳になりました」

「わたくしも同じであります」


「それじゃあ、十年前は十五歳か。じゃあ、あのお方の恐ろしさを直接知らないのか。しょうがねえなー。口で言うと余計に嘘っぽくなってしまうしなー」


 ゲンバが困った表情になりました。


「色々、エイゼン様の事は聞きましたが本当の事なのでしょうか」


 やせた男が言いました。


「何を聞いたかは聞かねえが、それの数倍はすごいお方だ」


「それほど、すごいお方なら既にこの世界でも何か情報があるはず。何もうわさが無いと言うことは、すでに死んでいるのか。この世界にいないのでは」


「そう願いたいが、もし、もしだ! エイゼン様がこの世界にいて、俺達の敵に回ったら、絶対に勝てねえ」


「ゲンバーー!!」


 突然声がして、黒い西洋人形の様な服を着た女性が現れました。

 神様の瞬間移動とおなじものでしょう。


「おおっ、ライシャ。どうだった?」


 ――うおっ、王国の大魔導師ライシャ様だ。


 若い男二人が小さな声で驚いています。


「ふふふ、どこの国にもエイゼン様の噂はないですね。若い人達はもう止められなさそうです。そろそろ始まるでしょう」


「バカが、エイゼン様の事を何もわかっていねえ。せめてこの国にエイゼン様がいないことを祈るしか無いな。ところでライシャ、お前はエイゼン様がこの国にいたらどうする?」


「それを聞くのですか。あなたと同じですわ」


 ライシャという女性は不気味な笑みを浮かべました。


「俺は少しライシャと話がある。お前達は行っていいぞ」


 そう言うとゲンバは若い男にシッシという素振りで手を振りました。

 若い男二人は一礼すると部屋の外に出て行きました。


「ふふふ、アッガーノ王国元帥ゲンバ様も歳を取り過ぎたようだな」


 太った方が言いました。


「ああ、俺達の軍は、魔人達をじゅうりんした。この世界の人間など、魔人よりはるかに無力。すぐに植民地に出来るはずだ」


 やせた男が広げた手の平を胸の前で握りました。

 どうやら、神様の世界の人が、この世界を狙って集っているようですね。


「五年もの間準備をしたんだ。これ以上まてるかよ」


「だな、ふふふ」


 若い二人はゲンバの言うことも聞かずに暴れる気満々のようですね。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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