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第十八話 どんぐりのお供え

「まさか、本当に大魔王様はこの世界を攻め滅ぼす気になったダニか……そのために封印をといているダニか。それなら、つじつまが合うダニ。これはやばいダニ」


「こ、これは、僕の感なのですが、たぶん、魔王様は攻めてこないんじゃ無いかなー」


「神様がそう言うならそう思いたいダニ。ただもし攻めてきたら、いくら神様でも勝てないダニ。でも、安心するダニ。神様はオラ達が命をかけて守るダニ」


「そうデェス。ユウキもエイリとノブコも、命にかえても守るデェス」


 三人の言葉を聞いて神様は満足そうな顔をしています。

 でも、あなた達、神様より弱いのを忘れていませんか?


「よ、よかったですわ」


 エイリが震えながら言いました。

 神様が震えるエイリの姿を鋭い目つきで一瞬だけ見ました。


「ダニー。皆は認識阻害の魔法が使えますよね。と、言うことは姿を変えて見せることも出来るのでしょう?」


「出来るダニ!」

「出来るズラ!」

「出来るデェス!」


「じゃあ、人間の姿になってくれないかなあ。その姿のままだとエイリとノブコが怯えてしまうんだ」


 神様が言うと三人の姿が一瞬にして人間の姿になりました。

 これも、一種の認識阻害と言うことなのでしょう。


「これでどう……」


 三人が同時に言いました。

 三人が同時だったため語尾が、「ダニ」と「ズラ」と「デェスか?」が混じって聞き取れませんでした。

 ダニーは胸に大きなエスの書いてある超人クダークケンタのようなムチムチマッチョの姿に。

 ズラーは、アーノルドシュバイツアーネッガーのような恐い感じのムキムキマッチョの姿に。

 デェスはヨスダナガサユリのような清楚な美しい女性の姿になっています。でも胸だけは乱暴な巨乳になっています。


「ええっ!!」


 思わず神様とエイリとノブコが驚きの声をあげました。

 もちろん私も声を出しました。

 そして、全員が綺麗な二度見です。


「デェスは、女性だったのですかー?」


 神様が失礼な事を言いました。


「ええっ?? まっ、まさか!? 神様は、お、おらがどう見えていたデェスか?」


「ええっと、ダニーとズラーと同じ姿に見えていました」


 またまた、失礼のオンパレードです。


「えええっ!! 全然違うじゃ無いデェスかーー!! こんなおじさん達と同じにしないデェーほしいデェース。どう見ても可愛い乙女じゃないデェスかーー!!」


「しかたがねえズラ。おら達だって、神様達の姿はほとんど同じにしか見えないズラ」


「あはははは」

「うふふふふ」


 ズラーの言葉に全員で笑い合いました。

 こうして、笑い合うと、エイリとノブコの震えも収まりました。

 エイリとノブコの震えが止まると神様は安心して、三人を連れて安土山の神社に帰っていきました。


「ちょ、ちょっとー! まってぇーーーー!!!!!! こんな所に置いていかないでぇーー!!!!!!」


 廃病院のさみしい広い地下室に、ユウキとエイリとノブコの悲痛な叫びがこだましました。

 でも、時すでにおそし、神様達にその声は届きませんでした。

 ちゅちゅちゅと、巨大などぶねずみの笑い声だけが返って来ました。






 翌日の早朝、神様はいつものように神社の石畳をホウキで、はき掃除を始めました。

 カッパ三人衆は人間の姿が気に入ったのか、その姿のまま黙って神様を見ています。

 一通りの掃除が終わると神様は気が済んだのか、神社のおやしろの前に立ち両手を合せます。

 神様は毎朝、ユウキがやっていた事の真似をします。


「神様、おら達に命令はないダニか?」


「ありません。自由にして下さい。でも、そうですね、清く正しい行動をして下さい」


「なんだか、よくわからねーズラ。清く正しくとはどう言うことズラか」


「そうですねえ。じゃあ、感謝をして生活をして下さい」


「こうデェスか?」


 デェスが神様の横で手を合せます。


「ふふふ、そうです。そして、昨日一日無事で生きられたことに感謝です。そして、これから食べる朝食、それを食べられる事に感謝です」


 この言葉を聞くと、ダニーもズラーもおやしろに手を合せます。

 仕方が無いので私は、おやしろの中でちょこんと正座をしました。

 神様は、そんな私の姿を見てうれしそうに笑顔になりました。

 カッパ三人衆は、私の姿がみえないので、神様の笑顔の意味がわからず不思議そうな顔をしています。


「ここの山神様はすごいのですよ。回りの山々の実りを豊にする力があるのです。だから、森から恵みをいただくときには、山神様に感謝をしましょう」


「神様はこんな所でずっと一人で暮らして来たダニか?」


「一人で暮らしたいと思っていました。でもユウキが毎日来てくれました。とてもありがたかった……」


 神様はユウキが遊んでいた場所をじっと見つめます。


「だから、ユウキ様が特別なのデェスね。神様にとって娘さんのような存在なのデェスね」


「そうですね。では、朝食をたべましょう……あーーーーっ!!!!」


「どうしたデェスカー??」


「昨日、大きなねずみを捕まえたとき、それを逃がしたら美味しい物を食べさせてもらう約束をしていました。それを今思い出しましたー。こんなことなら大ネズミをそのまま捕まえて持って帰ってくればよかったーー。仕方が無いので今日の朝食は煎ったどんぐりです」


 神様は神社のおやしろの前の階段にカッパ三人衆を座らせるとそのひざの上に一握りの焼いたどんぐりを置きました。

 カッパ三人衆は向って左からダニー、ズラー、間を開けて右の端っこにデェスが座ります。

 そして、デェスの左横に神様が座りました。

 階段の真ん中は二人分ほど間が開いています。

 神様は何も言っていませんが自然とそうなりました。

 まるで、私に四人のど真ん中に座れと言わんばかりです。

 仕方が無いので、ど真ん中では無く神様の左横にちょこんと座りました。


 神様は、チラッと私を見ると、膝の上にどんぐりを一つ置きました。

 当然石段の上に落ちます。見えるだけで実体はありませんからね。

 カッパ三人衆まで神様と同じようにどんぐりを置きました。

 まるで、お供えですね。


 そう言えば、ユウキのおばあさんが小さい頃、まだ村がにぎやかだった頃には、多くのお供え物がこの神社にも供えられました。

 今はそれが何も無くなりました。久しぶりのお供えです。

 この国は、ドンドン良くない方に進んでいるように感じます。

 あの戦争が終わって、アメリカ軍が来てから日本人は大きく変わりました。

 除夜の鐘まで無くなろうとしています。神社へのお参りまで外国に文句を言われて出来なくなっています。

 でも、相変わらず貧乏に必死で耐えることだけは忘れていません。

 偉い国民だと思います。


「いただきます」


 四人は感謝しながら質素な食事を口に運びました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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