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第十四話 轟く悲鳴

 三人の姿は、学園と川を挟んで向かい側にある巨大な病院の前にあった。

 でも、ただの病院ではありません。

 薄暗い現在の時間帯でも一つも明かりがついていません。

 それどころか誰も出入りが出来ないように回りが高い鉄板のような物でぐるりと覆われています。


「……すごく恐い……」


 ユウキがそう言ってブルッと体を震わせます。私も恐いです。

 私は様子を見るだけなので、ユウキの肩の上に二頭身の分体になって乗っています。

 何の力も出せませんが、私の力は山以外では発揮できませんのでこれでいいでしょう。


「ここは、うちの持ち物になりましたが、何故か解体工事で事故ばかり起きるので、解体を中止している物件です。これがここの鍵です」


 そう言うとエイリは、厳重に閉じられている出入り口の扉の鍵を次々開けていきます。

 学園と同じぐらいの敷地の大病院です。

 病棟は学園の校舎よりも大きくて、それが不気味にわたし達を見下ろして笑っているように見えます。

 キィィィィーーーーと嫌な音をたてて扉が開きました。


「きゃっ!」


 余りにも音が気持ち悪かったのでユウキが小さく悲鳴を上げました。

 ついでに私も悲鳴が出てしまいました。


「どうぞ」


 エイリは中へ入るようにうながします。


「ば、ば、ばかじゃ、ありませんの。どうして、『ありがとう』って入ると思うのですか。こんな恐ろしい扉の中へはいれる訳がありませんわ」


 ノブコが少し震える声で言いました。

 ユウキがしきりにうなずいています。

 扉の左右は大きな鉄板が壁になり、中の様子がまるで見えません。

 大きく開かれた扉の中は真っ暗で、とても恐くて入れるわけがありません。


「では、神様を呼んで入ってもらいましょう」


 エイリがうれしそうに言いました。

 ひどい!!

 こんな恐ろしいところに神様を放り込もうという算段のようです。


「かみさまーー!! いらしてくださーーい!!!!」


 エイリとノブコ、そしてユウキが右手を高く上げました。

 その右手は拳をつくり、小指だけが立てられています。

 三人は、その小指の爪をくっつけて少しずらしました。

 ほんの少しだけ、合わせた三人の小指が光ります。

 そして、あたりが眩しく照らされ、金色に輝く神様があらわれました。


「やあ、みんな。今日はどうしたんだい?」


 神様は呼ばれたことがうれしかったのか、ご機嫌で三人の方をみました。

 今日の神様は、弥生時代の神様の様な衣装を着ています。

 これが神様の正規装備です。神社ではいつもこの姿でした。

 ユウキもエイリとノブコもうれしそうな表情で神様を見つめます。

 エイリとノブコの目は完全にハートになっていますね。


「ここの調査を頼まれました。でも恐くて入れません」


 エイリは恐そうな表情になり、神様をじっと見つめます。

 三人の神様を呼ぶ口実はこれだったようです。

 相変わらず神様は美しい中にあどけなさも残る最高の顔をしています。

 神様は、扉の中をのぞき込みました。


「なるほど、中から良くない物があふれ出しているね。入る前に僕を呼んだのは良い判断です。僕は、先に中に入るからゆっくりついて来てください」


 そう言うと神様は、扉の中にパッと入り、走って建物の中に入っていきました。


「えええええぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!!!!」


 ユウキとエイリとノブコは、取り残されて驚きの声を上げています。

 どうやら三人は神様と四人で、ラブラブで肝試しをしようなどと考えていたのかも知れませんね。うふふ、残念!


「しっ……しかたがありませんわ」


 エイリが先頭になり、ユウキと手をつないで扉の中に入りました。

 既に神様が入った後なので恐さは三割くらい減っています。

 今日の三人は、こんな廃墟に入るのに短いスカートでおめかしをしています。

 きっと、神様にじっくり見つめられて、褒めてもらいたかったのでしょうね。

 でも、神様はおめかしをした女子高生三人より、この廃墟の方に関心を持ってしまったみたいです。

 神様は女性に感心が無いのでしょうか? 少し三人が可哀想になりました。


 ユウキとエイリとノブコは病院の大きな正面玄関に到着しました。

 三人はそれぞれ手に懐中電灯を持っていて玄関の中のロビーを照らします。

 受付と待合室のイスが照らし出され、影が妖しく動きます。

 何もいないはずなのですが、影が動くとなにものかの気配を感じて恐さが倍増します。

 パキッ、足元で石でも踏んだのでしょうか、小さく音がしました。


「きゃっ!!」


 三人がそろって悲鳴を上げました。

 静かな病院の中で声がこだまのように響きます。

 三人は体を寄せ合って手を硬く握り合いました。


「こ、こわいですわ」


 エイリが小さくつぶやきます。

 こだまが消えると、院内は静寂に包まれます。

 ゴクリと三人のツバを飲む音が聞こえます。

 先に神様が入っていますが、どこに行ったのか気配も小さな音すらも聞こえません。

 受付から伸びる、長い廊下を懐中電灯で照らします。


「い、行きますよ」


 エイリが声をかけました。

 ユウキとノブコは声を出さずに体を寄せ合ってうなずきます。

 そして長い廊下を、ゆっくり音を立てないように進み出しました。


「ふーーっ、ふーーっ」


 三人の呼吸音が、大きくなっていきます。

 ガタンという音が階段に続く死角で聞こえました。


「ひっ!!!」


 なにものかの気配がします。

 三人はその気配に聞こえないように悲鳴を、口を押さえて出ないようにしました。

 三人が緊張します。

 三人の足が止まりました。

 そして、ゆっくりゆっくり、死角に顔を入れてのぞき込みます。


「うぎゃああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」


 三人が大きな悲鳴を上げました。

 つられて私まで腹の底から悲鳴を上げてしまいました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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