第百二十八話 別れの笑顔
「ちっ! めんどーくせーー!!」
メイヤがぶつくさ言っています。
「まあ、仕方が無いでしょう。一応国家の機密なのでしょうから」
マーシーさんがキーボードをたたきながら、パソコンのモニターを見つめたまま言いました。
英国陸軍にメールで支援の申し出の返信をして所在地を確認したら、その所在地は直接伝えたいと言ってきたのです。
仕方が無いので僕達は翌日、幸魂駅で英国陸軍のエージェントと会う約束をしました。
約束の時間に幸魂駅へ行くと、駅のロータリーに1台の黒塗りの車が止まっています。
いかにもという感じのワンボックスカーです。
ワンボックスカーの窓が開き、そこからニュッと手が出て来て手招きをして僕達を呼びます。
幸魂駅に出向いていた僕とファルコン、メイヤの3人はボックスカーに乗り込みました。
「いやあー、本物は画面越しより数倍美しいですね。キュートルピンクさん。本物は美しい香りまでするのですねえ」
りゅうちょうな日本語で、車内の金髪紳士が話しかけてきました。
全員で4人の紳士が乗っています。体は全員それほど大きくはありませんが強そうです。
これが英国の諜報部員という方達なのでしょう。
日本には色々な国のスパイが大勢いそうですね。
僕は、英国紳士に会うのだからと会長のお母さんと、シノブさんに勧められて香水まで付けてきました。
服装は幸魂女学園の制服にしているのですけど、顔だけで誰かはばれてしまっています。まあ、それが狙いの顔出しですから問題はありません。
「面倒くさいやりとりはいい!! すぐに場所を教えろ!!」
メイヤが既に切れ気味で言いました。
何を昨日からそんなに怒っているのでしょうか。
メイヤの怒りの表情に、経験豊富そうな4人の諜報部員が少したじろいているようです。
メイヤの怒りの表情はそれほどの威圧感があります。
「メイヤ殿。おさえて、おさえて」
ファルコンが、なだめ役です。
ファルコンもイケイケのギャングのボスで恐い顔をしているのですが、メイヤと比べると仏様に見えるようです。
4人の諜報部員は、ほっとした表情になりました。
「場所は、こちらになります」
金髪紳士が、英国の紙の地図を出すと位置を指さしました。
「ふん、こんなことのためにマモリ様の手をわずらわせるとは!」
「メイヤ! 僕の事はどうでもいいのです。それより行けそうですか」
僕はメイヤが余りにもふそんな態度をとるので、一言たしなめてから聞きました。
でも、メイヤが怒ったフリをしているのは僕のためだったようですね。
「はっ! 失礼しました。無論たやすいことにございます」
「そうですか。では、ファルコンファミリー2000と1名、1時間ぐらいで行けそうですね」
「はぁあーーーーっ!!??」
4人の諜報部員が声をそろえておどろいた。
僕はそれを無視して。
「ふふふ、僕達はすぐに準備をします。1時間で全員、目的地につきますので出迎えの方よろしくとお伝え下さい。お願いします」
驚きを笑い飛ばすように言いました。
それから僕達は、車を降りるとすぐに準備をして、きっちり1時間後にファルコンファミリー2000人とファルコンを英国に送り届けた。
その時に英国陸軍には、新規で作った金玉とチンコ玉2000個を貸し出した。
そして、ファルコンに「くれぐれも無茶をしないように、司令官や団長クラスには勝てません。場合によっては隊長の中にも、ずば抜けて強い人がいる可能性があります。そんな時には迷わず僕を呼んで下さい」そう念をおして帰って来た。
ファルコンファミリーを英国に送り届けた翌日、僕はダニーとリリイとメイヤの4人で新潟駅に来ています。
本当は3人で来たかったのだけど、草履取りから配送係に出世したメイヤが来ないと、新潟に来られなかったので仕方なしで同行を許可しました。
ユウキはこの旅行の意味がわかったのか、暗い笑顔で送り出してくれました。
でもユウキ達は今日、地球防衛義勇軍本部の巨大リゾート温泉で楽しんでいるはずです。
地球防衛義勇軍本部は、巨大資金で地下1500メートルにある温泉を掘り当て、その温泉をかけ流しでお風呂にしています。
今日は、その温泉を使った巨大浴槽で美女軍団が全員ほっこり楽しんでいるはずです。
僕達が既に鉄道も動かなくなった新潟に来た目的は、そう、新潟名物黄金焼きそばを食べるためです。
エイリに確認したら、十田家の新潟の豪華ホテルは食材が入手出来ないため営業できなくなったとのこと。
可能性は低いのですが、駅前でやっている本場の黄金焼きそばのお店を探そうと考えているのです。
「これは、ひどいダニ」
駅前のロータリーのまわりの建物は、大きく損傷しています。
「激しい戦闘があったのでしょうか」
僕は、言いながら大通りの1本横の路地にむかった。
ここも、ガラスなどが手当たり次第に、まるで八つ当たりのように壊されている。
「日本人同士がたたかったのダニなぁ」
たぶん、今の日本中が似たようなものなのだろうと背筋が寒くなった。
「日本は食料自給率が極端に低い。昔、日本国にお金がいよいよ無くなったら政府が刷ればいいと言った人がいましたが、食料はどうでしょう。外国からの輸入がストップして食料がいよいよなくなったら飢え死にするしかありません。そうならないように手をうっておかないと、いけませんでしたねぇ」
メイヤが、冷ややかな目を酷く壊れた一軒のお店に向けながら言いました。
駅前の一等地にすでに人の気配はまったくありませんでした。
「都会の方が、人数が多いので食料が無くなるのが早いのかも知れませんね」
僕がしんみりしていると、笑いながらこっちを見てリリイが話題を変えてきました。
「うふふ、私はしょうが無いとして、ダニーさんまでのこしていくのですか?」
リリイは黄金焼きそばを、あきらめてしまったのか少し楽しそうです。
「そうですね。僕には日本にマモリたいものが沢山出来ました。むこうに全部持って行ければ良いのですけどそれは無理です。なので1番信頼のおけるダニーに、僕の代わりに守ってもらおうと思っています」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーーダニィーー!!!!!」
ダニーが雄叫びを上げました。
「ど、どうしたのですか?」
「マモリ様!! こっちの大切なものはダニーが必ずや、死守して見せますダニィー!!」
「死守はだめです。ダニーも僕のマモリたいものの一つなのですから」
ずいぶん、駅から歩くと道路のまわりに田んぼが見えてきました。
そこに一軒、黄金焼きそばの看板があります。
営業中ではないようですが、おばあさんの姿がみえました。
「あのぉ、すみません」
「はい、どうなさいましたかのう」
「ここは、黄金焼きそばのお店のようですがやっていますか」
「ふふふ、黄金焼きそばの店じゃが、材料がないのでなあ。食べ物は悪党共が全部持っていってしまったからのう。ふふふ、ばばあの命はいらんかったみたいじゃ。ひゃはははは」
おばあさんは、一人でおおうけしている。
みたところ、八十歳前後にみえる。
僕はこの昭和のおばあさんには勝てないと思いました。
「材料は僕達が用意します。お願い出来ませんか?」
「なに?? 材料があるじゃと。ふふふ、こんなこともあろうかと。こんなこともあろうかと。師匠直伝の黄金ソースは隠してある。今日は黄金焼きそばぱーていじゃ」
僕達は、おばあさんのおかげでとても美味しい黄金焼きそばにありついた。
もちろんリリイは、大好物の黄金焼きそば丼にして、何度もお替わりをして泣きながらたべていた。
食後には少し溶けかけたバニラアイスも、何度もお替わりをして食べていた。
僕はこの旅が出来て本当によかったと思っている。
日本を旅立つ前に、日本の現状を知ることができたし、美味しい黄金焼きそばをうれしそうに食べる、ダニーとリリイの笑顔がみられて。
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