第百二十六話 決別
「こ、これは!?」
地上波の民放、幸魂テレビを見ていたわたし達は、驚きの声を上げました。
「とうとう、恐れていたことが起ったのう」
旧仲信作長官が、困った表情でいいました。
わたし達は今、地球防衛義勇軍幸魂支部の作戦会議室で沢山並ぶモニターを見ています。
その中の一つのモニターが地方局の幸魂テレビの生中継を映し出しました。
幸魂テレビのカメラは幸魂駅前の映像を映し出します。
その映像の中に幸魂駅前に続々デモ隊が集結している様子が映し出されます。
デモ参加者は政府から交通費と食料が支給されるため、その数は数万に膨れ上がっています。
「ご覧ください。日本の国を混乱に落としいれた、にっくきテロリストに鉄槌を下すためこれ程のデモ隊の皆さんが集結いたしました」
幸魂テレビの現地リポーターが声を張り上げています。
地球防衛義勇軍幸魂支部の手が空いている人が全員モニターの前に集ります。
モニターを見た人達が全員不安そうな表情になりました。
「ちーちゃん」
震える声でマオちゃんが私の顔を見上げます。
マオちゃんは手探りで私の手を探して、私の太ももをゾワゾワしてから私の手を探し出すとギュッと握ってきました。
マオちゃんは、皆の不安を感じ取り不安になっているようです。
「大丈夫だよ。マオちゃんには、ちーちゃんが付いています」
マオちゃんは可愛い笑顔になるとコクリとうなずきました。
「だれかー! 門を固く閉ざし、全員建物の中に避難させるのじゃ」
「はっ!!」
旧仲長官の声を聞くと、慌ただしくガンネスファミリーの幹部の方が部屋を出て行きました。
「せっかく、休暇を楽しんでもらっていたが、そろそろマモリちゃんを呼ばねばならんのか。ガンネス君、金玉をこすってくれ!!」
「わかりやした」
ガンネスさんは返事をすると、目配せで金玉を持ってくるように指示しました。
マモリちゃんは、この三日ほどを安土の神社でのんびりしています。
いいえ、マモリちゃんは断ったのですが、旧仲長官やガンネスさんやファルコンさんに、強く休むように言われて渋々休んでいます。
わたしとナナちゃんが決死の大脱出をかんこうした、東京大停電の日は丁度政府が東京陥落の宣言をした日です。
その日から、日本中で食料品の買い占めが始まりました。
米は既に品薄で高値でしたが、他の食料品まで店頭から消えました。
消費税はとうとう40パーセントになり、日本中が大パニックです。
政府は事もあろうに、その責任をぜんぶテロリスト旧仲信作の責任と地上波テレビの全てのチャンネルで発表しました。
数時間おきに執拗に繰り返し流します。
日本中にテロリスト旧仲信作を憎悪する気運が高まりました。
それをあおるように政府主導のもと、デモの呼びかけがありました。
それが、今日爆発したのです。
「テロをゆるすなーーーー!!」
「テロリストに鉄槌をーー!!」
「旧仲信作を、断罪せよーー!!」
「東京を解放せよーーーー!!!!」
デモ隊が、大声を上げながら行進を開始しました。
やがて、地球防衛義勇軍幸魂支部の中までデモ隊の先頭の声が聞こえてきました。
幸魂テレビの生中継では、今なお続々デモに参加する人が駅から出て来ます。
「我々はテロリストではない。日本国を、日本人を助けようとして我々は戦っているのじゃ。デモ隊には手も足も出せない。岸破の奴、悪党としては天才的じゃのう」
旧仲長官は口以外の表情は泣き顔ですが、口だけ笑っているように口角を上げました。
「おおっ!! これは!!」
ファルコンさんが、大きな声を出しました。
デモ隊の先頭が地球防衛義勇軍幸魂支部の門の前に来ました。
さっき固く閉じたばかりの門です。
「全員、戦闘態勢だーー!!!!」
ガンネスさんが言いました。
「いや、その必要はなさそうじゃ」
旧仲長官がほっとしたように言いました。
「ガンネス、呼んだーー??」
いつも通りのマモリちゃんがあらわれました。
ガンネスさんは、部下の運んで来た金玉をやさしくサスサスしています。
「おお、マモリちゃんや。あれを見てくれ」
長官は金玉の横にあらわれたマモリちゃんを窓際に呼びました。
「すごい人ですね、あれは何ですか?」
「デモ隊じゃ。じゃが、地球防衛義勇軍の前を素通りしておる。どうやら、国会議事堂を目指しているようじゃ」
「そうですか」
マモリちゃんが、キッと眉毛を吊り上げ表情をこわばらせました。
りりしくて素敵です。
「あの、侵略軍の様子はどうなっているのでしょうか?」
マモリちゃんと一緒にやってきたユウキちゃんが聞きました。
「ふむ、侵略軍の様子は全くわからない。前の司令官は動画配信者を優遇していたのじゃが、今の侵略軍は配信者を排除してしまったようじゃ。動画配信者の生死すらもわからない状態じゃ。じゃから、兵士が増員されたのか、新しい司令官が来ているのかすら、侵略軍の状況は全くわからない状態じゃ」
「そうですか」
ユウキちゃんが悲しそうな顔になりました。
「既に侵略軍は、日本国に宣戦を布告している。そんな敵国の者が、向ってくればゲリラとして殺されても文句は言えんじゃろうなあ」
「では」
マモリちゃんは、キラリと目を輝かせて旧仲長官を見ました。
「いいや。わしらは直ちにここを捨て、地球防衛義勇軍本部に移動するとしよう」
旧仲長官は首を振ると言いました。
「では、会議を始めます」
旧仲信作長官の横でノブコちゃんが言いました。
あっという間に、引っ越しが終わると安土の神社の裏手にある地球義勇軍本部の会議室に、入れるだけの幹部が招集されました。
「わしは、日本国政府からも国民からも敵視されてしまった。残念じゃが、しばらく日本とは距離を置くことに決めた。これ以上無駄な労力を使うより、協力を求める世界に目を向ける事に決めた。何しろわしらは地球防衛義勇軍なのじゃからのう」
これは、旧仲長官の日本との決別宣言です。
「おおっ!!」
ファルコンさんが声を出しました。
「ふむ、ファルコン君はどこか協力したい先があるようじゃのう。遠慮せずに言ってみてくれ」
「はい。俺の生まれは香港なのですが、この血は100パーセント英国人だ。英国からの援助要請があれば、助けに行きたいと」
「マーシー君、英国からの援助要請は来ているかね?」
「はい。ちょっと待って下さい――ありました。英国政府からと英国陸軍からの要請が来ています。特に英国陸軍からは『危機的状況にある、直ちに救援を』との救援要請があります」
「マモリちゃんや、どうかね」
「ふふふ、ガンネス。あなたは救いたい所はありますか?」
「わしにはございません。すでに、日本こそが我が祖国と思っておりやす」
「うん、じゃあ、ファルコンには英国へ行ってもらいましょう。でも、手ブラではさみしいですね。ガンネス、新しい金玉と2000個のチンコ玉を用意できますか?」
「ふふふ、そんなこともあろうかと、用意してあります。アスラン、カブランここへお持ちしろ!」
「はっ!!」
「ふふふ、本当はノブコ様に言われたんでやすがね」
「さすがは、ノブコですね」
ノブコちゃんが、はにかんでうれしそうにしています。
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