表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/128

第百二十三話 おかえり

 巨大な装飾の美しい鏡のような物が、神社のおヤシロの前に出てきました。

 そこに、はりつけにされている男が2人映し出されました。

 2人とも、とげの付いたこん棒のような物が体中に刺さっています。

 大量に吐血したのでしょうか、口からアゴにかけて血が付き、胸まで真っ赤です。


 一人の男の肌は透けるように真っ白で少し青みがかっています。

 美形ですが体は筋肉が発達していてボーディービルダーのようです。

 もう一人は、寒気がするような恐ろしい顔をしています。

 肌は赤黒く筋肉もパンパンに隆起しています。

 でも全体の大きさは青白い美形の人より少し大きい程度です。


「やあ、魔王様。お加減はいかがでしょうか」


 メイヤさんが鏡に向って話しかけました。


「がっ、ゴブッ」


 赤黒い体で恐い顔をした男が口を開きました。

 何かを話そうとしたのでしょう。

 でも、胸にも太いとげ付きのこん棒が2本刺さっています。

 大量に血を吐き、話す事が出来ませんでした。


 ――きっと、この人が魔王様なのですね。


「ああっ! これは失礼しました」


 メイヤさんは頭をペコリと下げて、右手を前に出すと手のひらを上に向けて指を曲げました。

 すると、魔王様の体からとげ付きのこん棒が、スルスルっと抜けていきます。

 続いてゴトンゴトンと硬い岩の上にこん棒がぶつかるような音がします。


 青白い肌の人の体からも、魔王様と同じようにこん棒が抜け落ちます。


「ふふふ。この程度、我が国の魔人達の苦しみを考えれば、たいしたことではありませんな。ガフッ」


 魔王様はメイヤさんを見ると笑顔で言いました。

 そのあと、もう一度大量に血を吐き出しました。

 笑顔も迫力があって、こ、恐いです。


「そうですか。実はこちらのお方が、あなたとお話がしたいとおっしゃっている」


「お、おしゃっている??」


 魔王様が、驚いた表情をしています。


「こちらは、姫神マモリ様だ。どうぞマモリ様。お話ししたいことがあれば存分に」


「はい。少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」


 マモリちゃんが鏡の前に進み出ました。


「ほう。これは美しいお嬢さんじゃ。わしに何のようでしょうかのう?」


 魔王様が柔らかい表情になりました。

 美しい顔というのは、誰にでも通用するのですね。

 うらやましいです。とても……


「魔王様は、あの日「世界を手中にしたら、半分を与える」と言っていましたが、それは、世界を手中にしたら人間に世界の半分を、もう一度譲り渡すという意味だったのですか?」


「なにっ!? なっ!!!!!! そっ、そなたは!?」


 魔王様がとても驚いた表情になりました。

 驚き過ぎて、唇が震えています。


「くふっ」


 マモリちゃんが、いたずらっぽく笑いました。


「ふふふっ。そうじゃ。アッガーノ王国のボナード王は、強欲で無慈悲な男じゃ。あの男を滅ぼさねば、人間も魔人も幸せにはならぬ。アッガーノ王国を滅ぼした後は、もう一度領地を人間に返還し誰かふさわしい者に、統治をしてもらうつもりじゃった。正しい判断の出来る強き者に。候補はおった、だがその者は無欲すぎた。国王になって人々に幸せな生活をもたらすことより、自分だけのんびり暮らせれば良いなどとぬかしおってのう。期待外れじゃった。期待していただけに腹がたった。ぶち殺そうと思ったが、簡単に返り討ちじゃ。その者は今頃どこでどうしておるのかのう、なあ、マモリちゃんとやら」


 魔王様の顔から驚きの表情は消えて、今度は余裕の表情になり、仕返しのようにいたずらっぽく薄気味悪く笑うと、マモリちゃんを見つめました。


「ぐはっ。そっ、そうですか。そうだったのですか。そうとは知らずに。わっ、わかりにくいですよ。わかりにくすぎます。誤解していました。――あなたは、天国へ行く選択もあったようですが、なぜ地獄に?」


「そなたには、わからんじゃろうなあ。わしは王じゃ。国民の暮しを豊にし、幸福に暮らせるようにしなければならん。それが、政治を司る者の義務じゃと思っておる。じゃが、戦争の途中で死んでしまっては、国民にどんな苦しみが待っておることか。わしはここで、国民と同じ苦しみを味わうことにしたまでじゃ。おお、そうじゃ、そなたは知っておるのか、魔王国の国民がどうなっているのか?」


「はい。魔王様の想像通り、アッガーノ王国のボナード王によって、次々虐殺されています」


「おおっ! やはりか!!」


 魔王様は苦しげな表情になり、悲しみの表情になりました。

 体中にとげ付きのこん棒がささっている時より悲痛な表情です。

 涙は出ていませんが、泣いているように見えます。


「レイゾールトさん、あなたも天国の選択肢があったと聞きましたが、なぜ地獄に来たのですか?」


「ふっ! なにをわかりきったことを! われは魔王様に忠義を捧げた者。魔王様が行くところにお供するのが当たり前の事だ。わかりきったことを聞くな!」


「すごい忠誠心ですね。魔王様がうらやましいです。そんな二人に質問があります。二人とも生き返りたいですか?」


「なんじゃと!?」


 魔王様が驚きの表情になりました。

 レイゾールトさんは、黙って魔王様の表情を見つめます。


「ただし、条件があります。別人として、生まれ変わることになります。ですが、記憶か、能力か、そのどちらかはメイヤさんの力で残してもらえるそうです。どうしますか」


「なるほどのう。いやな選択じゃ」


「レイゾールトさんはどうしますか」


「われは、すべて魔王様と同じで良い。魔王様のなされるがままでよい」


「さすがですね。で、魔王様はどうされますか」


「どちらが、魔人達の力になれるかじゃ。力の無い偉そうな子供より、力のある子供の方が役に立つじゃろう。能力を残してくれ」


「メイヤさん、お待たせしました」


「はっ! それでは転生の儀、執り行いたいと思います」


「――ゴクリ」


 静かに見守っていた人達一同がツバを飲み込みました。

 メイヤさんが両手を挙げると、その体が輝きます。

 そして、鏡が消えるとその後に少女が2人立っています。

 ゴスロリの黒いメイド服の少女と、白いメイド服の少女です。


 ――滅茶苦茶かわいいです。


「あの、女の子が2人いますが、魔王様とレイゾールトさんは何処にいるのでしょうか?」


「ふふふ、転生です。性別も運です。この二人こそが魔王様と、七剣の一人氷のレイゾールトさんですよ。年齢は八歳ほどおまけしておきました」


 2人の少女は、いきなり恐い顔のおじさん達に囲まれて震えています。


「恐がらなくてもいいのよ。お帰りマオちゃん、レイコちゃん」


 幸魂学園の制服姿に戻っているユウキちゃんが、とても美しい笑顔で近寄ると、二人を優しく抱きしめて言いました。


「ふふっ、ユウキにはやっぱりかないませんね」


 マモリちゃんがやさしい笑顔になり、ユウキちゃんの横でマオちゃんとレイコちゃんを抱きしめました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「頑張って!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ