第百二十一話 君の名は
いけません。
吹き飛んだ丘の上に浮かんでいる悪魔のような男の目がギラリと赤く光っています。
そうです。
今、マモリちゃんはデェスさんをお姫様抱っこしています。
両手はふさがり、スリムな女性ですがデェスさんの重さは、数十キロはあるはずです。
「くらいやがれえぇーーっ!!」
悪魔のような男は、そのまま重力を無視してマモリちゃんに突っ込んできます。
300キロ、400キロのスピードなら目で追えると思うのですが、悪魔のような男のからだは消えたように見えなくなりました。
でも、マモリちゃんには見えているようです。
横に一歩ほど移動して首を少し傾けました。
悪魔のような男の姿はマモリちゃんの後にあらわれました。
完璧によけたように見えましたが、マモリちゃんの頬から耳にかけて真っ直ぐに赤い細い線があらわれました。
そして、耳は細い線で二つに割れて血が飛び散りました。
頬の線からも血が垂れてきます。
「ふふふっ!! さすがに、6……70キロの重さの女を抱きかかえていては動きがかんまんになるようだな」
「むっきーーっ!! デェーース!!」
デェスさんが怒っています。
そうですよね。いくら何でも70キロは言いすぎです。
「デェスの体重は200キロを超えているデェーース!!」
駄目です。
マモリちゃんは、200キロを超える重りを持っているようです。
「ふふっ」
悪魔のような男は、笑いながら攻撃を再開しました。
でも、マモリちゃんは最初の攻撃で見切っているのか。
悪魔のような男の攻撃を、デェスさんを抱きかかえたままでも次々かわしていきます。
「なっ、なにっ!! その状態でもなお、われの攻撃を全てかわすのか!! ちっ! らちがあかねえ」
悪魔のような男はそう言うと、ポーーンと一気に距離を取りました。
「マモリ様、デェスはもう大丈夫です。降ろしてください」
デェスさんはマモリちゃんに言いました。
マモリちゃんは心配そうな顔をしながら、地面に立たせました。
まだ、デェスさんは足に感覚がうまく戻っていないのか、ぐらりと体勢を崩しました。
「だ、大丈夫ですか?」
すかさず、キュートルブルーがデェスさんを助けています。
さすがですね、用意していたみたいです。
キュートルブルーがデェスさんに肩を貸します。
「2人とも、ここは危険です。少し離れていてください」
マモリちゃんが言うと、キュートルブルーはうなずきました。
そして、ゆっくり歩きだしました。
「このままでは、らちがあかない。われの最強の攻撃を使わしてもらおう。奥義冥装!!」
悪魔のような男が右手を天にかざすと、あたりを暗くしていた闇が悪魔のような男に吸い寄せられて行きます。
そして、漆黒の鎧をまとったような姿になりました。
「では、僕も真似をさせてもらいましょう。冥装!!」
マモリちゃんの体のまわりにも黒いモヤが集ります。
「ひゃーーっはっはっ!! われの冥装は、われの強さを8倍にする。お前の冥装はせいぜい2倍だ。おまえさんのショボイ冥装とはわけが違うんだよ!! 死ねーーっ!!」
「あーーーーっ!!!!」
「バカがやっちまった!!!!」
「あああーーっ!!!!」
「知らんぞ!!!!」
声の方を見ると、マフィアのボスの様な人達と、マフィアの幹部の様な人達、マーシーさんが居ます。
マフィアの幹部のような人の中にはアスランさんもいます。
この人達の顔が恐怖に歪みます。
どういうことでしょうか。
――ああっ!!
悪魔のような男の攻撃は、こともあろうにマモリちゃんを無視してデェスさんに肩を貸して避難している、キュートルブルーの背中を目指しています。
悪魔のような男は拳を振り上げ、その拳をキュートルブルーの背中に振り下ろしました。
そんな攻撃を受けたら、キュートルブルーは即死ではないでしょうか。
わたしはかたく目を閉じてしまいました。
パーーーーン、と乾いた大きな破裂音が響きます。
「ユウキ、デェス、ケガはありませんか?」
マモリちゃんの声がします。
わたしはおそるおそる目を開けました。
キュートルブルーの背中の直前で、マモリちゃんが悪魔のような男の拳を手のひらで止めています。
ユウキちゃんとデェスさんはコクコクうなずいています。
それを見るとマモリちゃんは、うれしそうにニコリと笑顔になりました。
「うぎゃあああぁぁぁーーーー!!!!」
急に悪魔のような男が悲鳴を上げました。
マモリちゃんが悪魔のような男の拳を握っています。
その拳からボキバキと音が聞こえます。
そして、その手をクイッと動かしました。
「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
バキッという音と共に悪魔のような男が悲鳴を上げます。
数回マモリちゃんが手を動かすと、悪魔のような男はその都度悲鳴をあげます。
そして、悪魔のような男の腕はグニャグニャになりました。
「ぐっ、ぐぞぉぉぉーー」
悪魔のような男は、片膝をつき、うなりながら腕を押さえます。
「あっ、ありえない。くそっ!! われは今、8倍の冥装をしているんだぞ!!」
「くふっ、あなたは勘違いしています。あなたの強さを例えるなら100です。でも、神様は500です。あなたが力を8倍にしても800です。神様は2倍でも1000です。負けるはずがありません」
「なにーーっ、やかましい!! 小娘がーーっ!! 勝手にわれに話しかけるナーー!! 下郎がーーっ!!!! 殺すぞーーっ!! あががっ!!」
マモリちゃんは、悪魔のような男のアゴをつかんで高く上に上げました。
そして、眉毛をつり上げてじっと悪魔のような男を見つめます。
その顔はとてもりりしくて、超美形の男の人に見えてきました。
「かっこいいデェス」
「はーーっですわ」
「すごい、かっこいい」
「かっけーーっ」
「すてきですぅー」
チラチラパンツが見えていますが、とてもかっこいいです。
「はがーーっ、はぐぅーーっ、がはーっ!」
悪魔のような男が何かを訴えています。
「あなたは、僕をバカにしているのですか? 何を言っているのかわかりません」
「あのー、神様。アゴを押さえつけていては話す事は出来ないと思います」
「ああ、そうですね。……次にユウキに暴言を吐いたら、このアゴはつぶします。いいですか」
悪魔のような男は涙目でうなずいています。
マモリちゃんが手を離すと、悪魔のような男は無事な方の手でアゴを撫でています。
「ところで、あなたはいったい誰なのですか?」
キュートルブルーが質問しました。
「なにーっ!! この下郎がーーっ!! はなし、はな、はなしぃ――」
悪魔のような男がキュートルブルーに、暴言をはこうとしました。
この人も、たいがいですね。
でも、マモリちゃんの視線を感じて、途中でやめました。
ほぼ、アウトですが、マモリちゃんは途中でやめたので、にらむだけで許すようです。
「で、あなたは、いったい誰なんですか?」
今度はマモリちゃんが聞きました。
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