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第百十八話 高笑い

「ここは治安が良いのですよ」


 食事が終わって、建物の外に出るとナナちゃんが教えてくれました。

 地球防衛義勇軍幸魂支部は巨大な倉庫でした。

 倉庫の門を出て、ナナちゃんと2人で道路を普通に歩いています。

 何にも怯えずに歩けるなんて、東京の街では考えられないことでした。


「こうして、明るい街をナナちゃんと2人で普通に歩けるなんて不思議な気持ちです」


 まだここには、昔の日本が残っています。

 まるで、タイムマシーンで過去にもどったような感覚です。

 私は治安が良いことがどれだけ大切か実感しながら、一歩一歩かみしめるように歩きました。


「そうですね。ちーちゃんと一緒に、死ぬかも知れないと思って走り回ったのがまるで遠い昔のようです」


 わたしとナナちゃんが、のんびり会話をしながら歩いていると大勢の人の姿が見えてきました。

 川沿いに集っている群衆に、花火大会のような雰囲気を感じます。


「おお、ちーちゃんだ!!」

「そうだ。マモリ様におんぶされていたちーちゃんだ」

「道を開けろーー! ちーちゃんが来たぞーー」

「おーーい、道を開けろーー。マモリ様の使徒様のお通りだーー!!」


 群衆の中に声が響きます。

 それと同時に、人々が左右に分かれて一本の道が出来ました。


「うふふ、ちーちゃんはけっこうな有名人なんですよ」


「ええっ!!」


「ふふっ。ここの人達は、マモリ様を神様のようにあがめているのですよ。そのマモリ様が、みずからおんぶをしていた人ということで、ちーちゃんは特別扱いなのです」


「ここにいる人、皆が全員マモリちゃんをあがめているのですか?」


「そうです。皆さん信者さんみたいです」


「ええっ!? どうしてですか?」


「ふっふっふ。それは、これからの出来事を見ていただけばわかると思いますよ。失礼しました。俺はガンネスファミリーのアスランと申します。ここから先は俺がご案内いたします。マモリ様はこの橋の中央で御2人をお待ちです」


 東京都と幸魂市を分ける河にかかる国道の橋の手前で、アスランと名乗る赤髪で体の大きな、猛獣のような感じの男の人に声をかけられました。

 アスランさんは私とナナちゃんの前を先導してくれました。

 橋の中央まで来るととんでもない光景が見えてきました。


「なっ、なんですか!? これは!」


 わたしとナナちゃんの声がかさなりました。

 橋の上から見る東京の街は、まるで東京大空襲のあとの東京の街のように何もない大地が続いています。

 東京ドーム10個は入りそうなくらいの焼け野原が広がっています。

 広い焼け野原の後に、大勢の人の群れが見えます。

 その中央には焼け野原を作るため壊した建物の瓦礫を集めたのでしょう、丘ができあがっています。


「やあ、ちーちゃん。ナナさん。今日は良い天気ですね」


 マモリちゃんが私の顔を見つけると、美しい笑顔……その美し過ぎる笑顔で名前を呼んでくれました。


「はい」


 また、ナナちゃんと声がそろいました。

 ナナちゃんの顔を見ると頬がすこし赤くなっています。

 ナナちゃんほどの美人が、乙女になってしまうほどマモリちゃんは超美形です。

 美しい顔というのは、性別を超えますね。


「アスラン! 2人の護衛、御願いしますよ」


「はっ! マモリ様、このアスラン命にかえましても!」


 アスランさんが頭を下げて返事をすると、マモリちゃんがうれしそうにうなずきました


「ふふっ、じゃあ、僕が橋から降りたら。全軍橋の終わりまで前進して下さい」


「はっ!」


「じゃあ、リリイさん」


「はい」


 リリイさんは、マモリちゃんに呼ばれるとマモリちゃんの横に並びました。

 リリイさんは私と、ナナちゃんに軽く手を振ってくれました。


「ちーちゃんとナナさんはリリイさんともお知り合いなのですね」


 アスランさんが少し驚いています。


「はい。リリイさんとは新潟以来の知り合いです」


 懐かしいですね。

 皆で行った新潟旅行。

 あーでも、あれはオカルト旅行でした。


「リリイさん。姿と気配を消してついて来て下さい」


「はい」


 リリイさんは、返事をすると姿を消しました。

 マモリちゃんはキュートルピンクの姿で橋の上を歩きます。


「えっ!? 2人で行くのでしょうか」


 わたしは、思わず言葉が口からこぼれました。


「ちーちゃん先輩。こんにちは、今日はマモリ様が一人で行くと決めましたのでお任せしました」


「この声はノブコちゃんですね。1人で大丈夫なのでしょうか?」


 ノブコちゃんは、キュートルグリーンの姿になって顔を隠しています。

 でも、わたしは部活でいつも聞いている声なので間違いは無いはずです。

 わたしの独り言に、ノブコちゃんが答えてくれたようです。


「わかりません。敵の侵略軍は私の想定よりはるかに多いので心配です」


「そうなのですね」


 焼け野原の後方の丘のまわりに集っている敵の侵略軍は、ドームのコンサートの人数より多く見えます。

 広く開けている焼け野原は、地球防衛義勇軍にここまで出てこいと、さそっているようです。




「キュートルピンクーー!! 何をしに来たーー!! 降参の使者で来たのかーー!! それともまた、パンツでも見せに来たのかーーっ!!」


 丘の上には大きな旗を立てて男がえらそうに座っています。

 きっと司令官でしょうね。

 その、司令官が大声でマモリちゃんに言いました。


「ぎゃはははははははーーーーーーーー!!!!!」


 侵略軍からバカ笑いが聞こえて来ました。

 侵略軍は前面にキラキラ銀色に輝く鎧を着た歩兵隊、その中にガードされるようにフードをかぶった魔導師隊、それを守るように弓隊がいます。さらに丘のまわりには、騎兵隊が整列しています。

 マモリちゃんは、侵略軍と橋の中間位まで来て足を止めました。

 地球防衛義勇軍は、橋を渡り切らないで全員橋の上で止まりました。


「おおっ!!」


 マモリちゃんのスカートが風もないのに、不自然にバサバサめくれ上がります。

 侵略軍から、声がもれました。


「こらあぁーー!! ミミイさーーん!!」


 マモリちゃんがスカートをおさえて叫びました。


「くふっ!!」


 わたしの横で、かわいい銀髪ツインテの少女がいたずらっぽく笑っています。

 銀髪なのですが、光を反射すると少し、ほんの少しだけ薄くピンク色に輝きます。

 不思議で幻想的な髪の毛です。


 ――き、緊張感が全くありません。


「ちっ、相変わらず、バカの一つ覚えでパンチラかよ。おい! 魔導師隊、あのビルを破壊して見せてやれ!!」


 司令官が指をさして言うと、フードをかぶった魔導師達が、広く何もなくなった焼け野原の横にある1番大きなビルに一斉に手を向けました。

 魔導師達は、数百人規模で配置されています。

 ビルは炎と雷、爆発が同時に起り轟音と共にあっと言う間に粉々になって崩れ落ちました。

 このあたりの建物はすべて、今のように壊されたのでしょう。


「おっおおおっ!!!!」


 地球防衛義勇軍から、感嘆の声が漏れました。


「ひゃあぁぁぁーーはっはっはっ!! 見たかー!! これが我軍の魔導師隊の実力だ。わかったかーー!!!! ひゃあぁぁぁーーはっはっはっ!!」


 司令官は有頂天になり高笑いです。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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と思ったら


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