第百十七話 サイコーの友達
私が意識を取り戻すと誰かの背中のようです。
ピンクの服を着ています。
これは、キュートルピンクこと、姫神マモリちゃんの背中ですね。
道路の真ん中を堂々と歩いています。
すでに、このあたりの街は安全になっているということでしょうか。
「マモリちゃん、重くはありませんか?」
この声はナナちゃんです。
そうですよね。
なにもマモリちゃんがおんぶしなくても、大きな体の男の人が大勢います。
「ちーちゃんなら、ずっとおぶっていられます。地球1周だってできそうです。ちーちゃんはすごい人ですね。僕は感動しています。口で他人の為とか言える人は大勢いますが、本当に行動できる人は少ないと思います」
「そうです。ちーちゃんはすごい人です。いつも困っている私を助けてくれます。幼い時からずっと助けられてきました。今日も、力の強い男の人から私を助けてくれましたし、その時に負ったケガで頭が倍位に膨らんで高熱が出ていても、ずっと一緒に走ってくれました。痛くて苦しかったと思います。でも我慢出来る限界まで一言も泣き言を言いませんでした。私なら10歩だって歩けなかったと思います。それは、少しでも安全な時間帯に、私を一歩でも遠くまで逃がそうとしてくれていたのです。もし私が男なら、絶対ちーちゃんと結婚しています」
「うふふ、ナナさんはちーちゃんが、とっても好きなんですね。僕も男ならちーちゃんみたいな人と結婚したいから。ナナさんとはライバルですね」
――えーーっ!?
この二人が男なら、絶対ちょー美形のイケメンです。
でも2人が男なら、わたしなんか絶対に相手にしてくれないと思います。
絶対にそうです。
2人が女の子でよかった。心からそう思います。
――あれっ、そういえば、体が痛くない!
最後にナナちゃんの突進で肋骨までダメージを受けていたと思いますが、全然いたくありません。
頭の熱もひいているみたいです。
とても楽になっています。
「マモリちゃんがライバルかー。勝てる気がしませんねー。でも、私とちーちゃんには幼い頃からの絆があります。あれ、あれれ、いけません。私は男の子からよくいじめられました。その時いつも、ちーちゃんに守られていました。私にはちーちゃんを助けた記憶がありません。やばいです」
ちがいます!! 断じて違いますよ!!
何度か、ナナちゃんとは違うクラスになりました。
その時には、クラスメイトから「きもい」「きたない」「ちかよるな」と言われ続けました。
ナナちゃんがいないと私は、誰からも相手にされず、ひとりぼっちでした。この顔ですからね。
ナナちゃんがいてくれたおかげで、どれだけ心強かったことか、すごく感謝しています。
昨日だって、一人でベッドの上で布団をかぶってメソメソ泣いていたのですよ。
ナナちゃんが来てくれて、世界が少し明るくなりました。
停電になって不安になっていました。心が落ち込んで暗くなっていました。
でも、ナナちゃんの顔を見たら、いっぺんに電気が付いたくらい明るくなったのですよ。
ナナちゃんに守られていたのは、わたしの方です。
「うふふ、違いますよ。ナナさんは危険をかえりみず、こんな危険な東京の街を一人で助けを求めて走っていました。こんなことは誰にでもできる事ではありません。たまたま僕達が近くにいたから良かったのですけど、そうじゃなければ殺されていたかもしれません。ナナさんくらい美人だと、敵は侵略軍だけでは無いはずです。命をかけて、無心に友達を助けようとすることはとても尊いです。僕はナナさんにも感動しているのですよ。僕が男ならナナさんとも結婚したいです」
「あらまあ、告白ですか? でも私は、性別はあまり気にしませんのよ。ちーちゃんとマモリちゃん、二人とも奥さんにしちゃおうかしら」
うふふ。
わたしは、ほっとして眠くなりました。
マモリちゃんの背中から伝わる振動は、幼い頃におんぶされていた頃を思い出します。
心地よい揺れが、私を眠りにいざないます。
もう少し2人の会話を聞いていたいのですが、私は深い眠りに落ちていきました。
「おはよう。ちーちゃん」
ぐはっ、目覚めたら、いきなりナナちゃんの美人の笑顔が目の前です。
もし、私が男なら幸せに1日を過ごせると思います。
まわりを見るとわたしは、見知らぬ白い部屋のベッドの上です。
病院でしょうか?
「ナナちゃん、おはよう。ここはどこですか」
「ここは、地球防衛義勇軍幸魂支部の医務室です。ちーちゃんは2日間眠っていましたよ」
「えーーっ! 2日間!」
「きっと、疲れていたのですね。毎日深く眠った事が無かったですからね。昼は侵略軍、夜は暴走族。安心出来る時間はありませんでした」
「ナナちゃんは、ずっと看病をしてくれていたのですか?」
「うふふ、5分前にきました。ああ、でも目覚めたのは30分前ですよ。お風呂とお腹が空いたのでご飯を食べてきました」
その言葉を聞くと私のおなかが鳴りました。
「うふふ、お風呂にしますか、お食事にしますか」
「では、お風呂から」
「うふ、ご案内いたします」
ナナちゃんは私を浴室に案内してくれました。
入浴が終わると、幸魂女学園の新品の制服を用意してくれました。
「お食事はこちらです」
ナナちゃんは食堂に案内してくれました。
大きな部屋に、テーブルが沢山置いてあります。
「今は、全員出払っていますので、冷凍食品くらいしかたべられません」
私は、冷凍庫から冷凍食品の唐揚げを選びました。
電子レンジで唐揚げを温めていると、ナナちゃんが作り置きのご飯とお味噌汁を持って来てくれました。
ご飯からは新米の美味しそうな香り、お味噌汁からもだしとお味噌の良い香りがします。
唐揚げを皿に移すと、唐揚げからも湯気が出て良い香りがします。
こんなに落ち着いて普通に、ご飯が食べられるなんて夢の様です。
少し涙が溜まりました。
「おいしいー! ねえ、ナナちゃん。出払っているって、皆さんはどこに出かけたのですか」
「はい、今日は侵略軍と決戦があるというので、全員観戦のため、橋へ向いました」
「け、決戦!?」
「はい、皆さんは、今日はマモリ様が戦うと言っていました」
「た、大変。わたし達も行かないと」
「あー、生卵もありますよ」
「えっ、じゃあ頂こうかしら」
わたしは、ナナちゃんにご飯の上に生卵を割ってのせてもらい、自分でその上に醤油を垂らしました。
「玉子ご飯サイコーー!! じゃなくて、急いで行かなくちゃ」
わたしが「サイコーー!!」の所で拳をあげると、ナナちゃんも拳を上げてくれました。
サイコーの友達です。
わたしはいそいで食事を済まそうと思いましたが、まともな食事が久しぶりだったので、ゆっくり噛みしめて味わって、ご飯のお替わりまでして食べました。
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