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第百十五話 空白の時間

 この東京には空白の時間があります。

 暗い間は夜のお客様の時間。

 明るくなってからは、侵略軍の時間です。

 でも、侵略軍は夜明けから朝食と軍備の為か2時間ほど巡回をはじめません。

 この2時間ほどが安全な空白の時間となっています。


「さあ、安全な時間にどれだけ幸魂市に近づけるかが勝負です。そろそろ行きましょうか」


 ナナちゃんが言いました。

 ナナちゃんも空白の時間がわかっているみたいです。

 さすがですね。


「おなかも一杯になりました。行きましょう」


 わたしとナナちゃんは、手をつないで玄関を出ました。

 わたしの足は扉の外でピタリと止まりました。

 ナナちゃんはまるでそれが当たり前の様に、いっしょになって足を止めました。

 ほんの数日前までは平和に、毎日ここから学校に通っていました。

 数日前の事が何年も前のように感じられます。

 お母さんとお父さんも、この時間なら家にいました。


 ――お母さん、お父さん。さようなら。


 私は振り返って、ゆっくり深く頭を下げてお辞儀をしました。


「ごめんね。急いでいるのに」


 私が言うと、ナナちゃんは首を振りました。

 そのため、遠心力でたまっていた涙が一粒目から落ちました。

 そして、ナナちゃんもお辞儀をしました。




 階段を降りて駐車場に出ると、大人の人が10人以上集っています。

 わたし達は、時間が惜しかったので気がつかないふりをして道路に向います。


「おいっ!! 君達!!」


 わたしは、ナナちゃんの顔を見ました。

 ナナちゃんは、わたしの顔を見ます。

 わたしはあきらめの表情をします。


「はい、なんでしょうか?」


 ナナちゃんが答えてくれました。


「ああ、心配しなくても良いよ。僕達はここの住民だ。いま、今後について話し合っていたところだ。君達は何をしているんだい?」


 関心を持って見ると、全員大きなカバンを持っています。

 話しかけてきたのは真面目そうな学校の若い体育の先生のような人です。


「私達は、これから友達の所へ行くところです」


「なんだって、こんな大変な時にお友達だって!? しかも手ブラじゃないか!」


「はい」


「今がどんな状況かわかっているのか」


「わかっているから行くのです」


「駄目だ危険すぎる!! 君達も僕達と一緒に来なさい!! その方が絶対安全だ!!」


 男の人は、ナナちゃんの手をつかみました。

 力が入りすぎているのか、ナナちゃんの顔が苦痛に歪みます。


「あなた達は何処へ行く予定なのですか?」


 ナナちゃんは、腕を引っ張られながら聞きました。


「僕達はこれから、自衛隊の所へ行こうと思う。テレビでは自衛隊の被害は軽微だと言っていた。自衛隊の所まで行けば助けてもらえるはずだ」


「あなた達は、まだそんなことを言っているのですか」


「何だと!!」


 真面目そうな男の人の顔色が変りました。


「東京の街がこうなったのは、政府と自衛隊のせいです。テレビはもう全く信じられません。自衛隊の被害が軽微。そんなわけがありません。それなら、ここに自衛隊が大勢来ているはずです。自衛隊の被害は甚大だったはずです」


「バカな事をいうな、政府やテレビが嘘など言うわけが無い!」


「そうやって、あなた達大人が政府を甘やかすから、こんなことになったのです。東京がこんな地獄になったのは、結局はあなた達大人のせいです。離して下さい。わたし達はわたし達の信じる行動をします。行こう! ちーちゃん!!」


「勝手な事を言うなーー!!!! ガキは大人の言うことを聞いていれば良いんだーー!!!!」


 男の人は、拳を振り上げるとその拳を思い切り振り降ろしました。


「きゃっ!!」


 その拳は、わたしのこめかみの少し後に当たりました。


 ――なんで、わたし??


 大きな硬く握った拳が当たった場所は、ハンマーで殴られたみたいに痛みます。

 不意打ちだったのでまともに当たりました。


「こっちに来い!!」


 男の人はナナちゃんの腕をつかんで引っ張ります。

 その顔には狂気を帯びた笑顔があります。


 ――わかった。この人も結局ナナちゃんをおもちゃにするつもりなんだ。今晩楽しむつもりなんだ。


 そう考えると怒りがフツフツとわいてきました。


「はなせーー!!!!」


 わたしは言いながら男の人に飛びかかると、腕に思い切り噛みつきました。

 噛みちぎるつもりで思い切り噛みました。


「うわああぁぁーー!! いてぇぇーー!! 何をするーー!!」


 男の人はもう一度殴ろうとしましたが、それをよけて。


「いこうナナちゃん!!」


 私はナナちゃんの手を握ると思い切り引っ張って走り出しました。


「うふふ、あーはっはっ」


 ナナちゃんは、大声で笑いながら走ります。

 わたしは、大声で笑うナナちゃんに少し恐怖しています。

 しばらく全速で走ると、すぐに疲れてしまいました。


「もう、ここまで来れば大丈夫かな。ハアハア」


「うふふ、ちーちゃんはいつも私を助けてくれます。私の白馬の王子様です。――あっ!!」


 ナナちゃんの表情が驚きの顔のまま凍り付きました。

 いったい何があったのでしょうか。


「ナナちゃん、わたし、少し疲れちゃったみたい。ハアハア」


「うん。ゆ、ゆっくり、ゆっくり、行きましょう。ふぐうぅぅっ」


 ナナちゃんは、笑顔でそう言うと、我慢できなかったみたいに涙を流しました。

 泣くのを我慢しているみたいです。

 何があったのでしょうか。


 しばらくは歩けましたが、頭がクラクラして頭が熱くて倒れそうです。


「熱中症かな?? ハアハア」


「がんばろう、頑張ればもう少しだから。うっうっ」


 ナナちゃんに励まされると、もう少し歩けそうな気がします。

 でも、ほんの少し歩くといよいよ、体が動きません。


「ナナちゃん、ごめん。体調が悪いの。どうにも歩けないみたい。ハアハア」


「うっううぅぅ、がんばって、ちーちゃん。うっうっうっ。ちーちゃん」


「ナナちゃん、さっきから、おかしいよ。どうしちゃったの。ゼェーゼェー」


 すごく頭が熱く感じます。


「ちーちゃん、顔が腫れているの。きっと、2回も殴られたから、あたり所が悪かったのかも知れません」


 2回?? そっか、私は痛くなかったから当たっていないと思っていたけど当たっていたんだ。

 私は恐る恐る自分の顔に人差し指を……


 ――なにこれ!?


 顔が三センチ位大きくなっています。

 しかも触れた所が熱い。

 骨が折れているのかも知れません。

 もしそうなら、頭蓋骨が割れている事になります。

 道理で、体に力が入らないはずです。

 何だか意識が遠のきます。


 でも、気絶するわけにはいきません。

 右手の人差し指を、左手で握って後に曲げます。

 折る気で曲げます。

 少し痛みが来ました。

 もう少しは意識が保てそうです。


「ナナちゃん聞いて」


「いやだーー、いやだあぁぁーー!! ちーちゃーーん!! うわあああああああぁぁーーーーーーーーっ!!!!!!」


 ナナちゃんが子供の様に泣き出しました。

 だめな、高校2年生の美少女です。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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と思ったら


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