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第百十三話 東京大停電

 私はその日見た光景を忘れられない。

 日が暮れると、窓の外に光が無くなっています。

 東京の街が真っ暗です。

 街の街灯も、高いビルの赤い光りも消えました。


「うそでしょ」


 一人ですごしたこの数日はとても心細かった。

 あの日、幸魂女学園の理事長から緊急に家に帰るように言われて家に帰りました。その日はいくら待っても、両親は帰ってきませんでした。

 テレビは、テロが起きたと言っていました。

 ネットでは侵略軍が攻めてきたと言っています。

 もう、何を信じていいのかわかりません。


 家に帰った翌日から、マンションの前の道路に鎧を着た兵士が小隊を組んであらわれるようになりました。

 兵士は、道を歩く人を手当たり次第に殺します。

 私は、マンションの部屋の窓からその光景を見ました。

 矢で射られた人は、パシッと破裂します。


 矢とは、あれほどの破壊力が有る物なのですね。

 時代劇で見た矢は刺さるだけでしたが、兵士達が射る矢は人の体をバラバラにします。

 その光景を見ようと窓際に出ていた人達も次々犠牲になりました。

 私の家は、マンションの上層階なので、私はたまたま見つからずに済みました。

 もし、下の階なら見つかって殺されていたのかも知れません。


 ――恐い


 私は全身に恐怖が走りました。

 こんなことが、現実に起きることなんて考えてもいませんでした。

 でも、もっと悲惨なのはその夜からでした。


 昼間は、兵士が見回りをします。

 見回りの兵士達は家の中までは調べません。

 歩いているときに、見つけた人を殺すだけです。

 でも、夜のお客さんは違いました。


「ぎゃはははははははーーーーーーーー!!!!! ころせーー!! うばえーー!! 女をさがせーー!!!!」


 バイクに乗って叫びながら、近所の家に入ります。

 その規模は1000人以上いるように見えます。

 私は、部屋に明かりも付けられなくなりました。

 警察のサイレンも、消防車のサイレンも聞こえません。

 既に、全員殺されてしまったのかもしれません。


「ぎゃあぁぁぁーー!!」

「きゃあああああああぁぁぁーーーーー!!!!!!」

「うぎゃあああぁぁぁーーーー!!!!」

「ぐえええぇぇぇーーー!!!!」


 悲鳴が続きます。

 女性の甲高い悲鳴や、断末魔のような悲鳴があちこちから聞こえます。

 ガチャン、ドスン、物を壊す音も続きます。

 このマンションにも何十人か、侵入してきましたが私の住む階までは来ませんでした。

 バイクの轟音は、明るくなるまで続きます。

 ひょっとすると兵士に殺される数より、このお客さんに殺された人のほうが多いのかも知れません。


 私は、ふと我に返り蛇口をひねってみました。


「出ない!」


 ガスも出ません。

 絶望的です。

 冷蔵庫の物はもう食べ尽くしたのでいいのですが、これではカップ麺もたべられません。

 買い置きのミネラルウォーターが、まだ有りますが節約して飲んでもあと何日持つか。

 でも、少しずつ飲んで長く生きてなんになるのでしょうか。

 また、バイクの轟音が聞こえてきました。


「もう、このあたりはあらかた奪い尽くした。今日はこのマンションの上の方を調べるぞ!!」


「おおーー!!」


 最悪です。

 ターゲットが、このマンションになりました。


「ぎゃあぁぁぁーー!!」


 下の階から悲鳴が聞こえます。

 少しずつ、悲鳴が近づいて来ます。

 私は、全身が震えてきました。

 両手で押さえても震えがぜんぜん止まりません。


「うっうっうっ」


 駄目です、ここまで耐えてきた涙がとうとう我慢出来ずに流れてきました。

 両親が帰ってこなくて、きっともう会えないとわかったときも泣くのをこらえたのに。

 泣いてもしょうがないじゃない。

 なのになんで。


「きゃあああああああぁぁぁーーーーー!!!!!!」


「ひゃははははーーーーー!!!! 女だ!!!! 食い物もあるぞ、運び出せーー!!」


 大きな声が聞こえます。

 かなり、近くの階です。

 私は、ベッドの上で布団をかぶって声だけは出さずに泣きました。

 全身がガタガタ本当に大きく揺れます。

 不安と悲しみと恐怖が全部いっぺんに襲いかかります。


「うぎゃあああぁぁぁーーーー!!!!」


 悲鳴と同時にドンドンと扉を叩く音がしました。

 とうとう、うちの番です。

 でも、扉がガチャガチャされません。

 静かになりました。

 私は、気になって震える足でベッドを降りました。

 扉まで音を立てないように慎重に進みます。


 扉の、のぞき穴に目を恐る恐る近づけます。

 私は呼吸も止めました。

 そして、外の様子をみます。

 おかしい。

 誰もいません。


 ――よかった。誰もいない。


 私は安心しました。

 コンコン、今度は小さな音でドアが鳴りました。


 ――ぎゃあああぁぁぁぁーーーーーー!!!!


 声を出さずに悲鳴を出しました。

 口だけがパクパクします。

 誰もいないのに扉が鳴りました。

 恐怖で、また涙がポロンポロンと玉になって落ちました。


「ち、ちーちゃん、ちーちゃん。私、ナナ。いないかなぁーー」


 小さな声がします。


「ナナちゃん!!」


 ドアを開けると、ドアの前に姿勢を低く、寝そべるようにしてリュックを持ったナナちゃんがいました。


「しーーーーっ!!」


 ナナちゃんが口の前に人差し指を立てました。


「ふわあぁぁぁーーーっ!!!!」


 私の涙腺はもう、ゆるみまくっています。

 ナナちゃんにすがりついて、まるで幼児のように泣きました。


「よしよし」


 ナナちゃんは私の頭をなでながらいいます。


 私と、ナナちゃんは同じ高校の軽音部で幼馴染みです。

 2人ともこのマンションで育ちました。


「ぷふっ」


 私は安心して泣きながら吹き出してしまいました。

 ナナちゃんのおかげで少し落ち着けたみたいです。


「ここも、あぶないわ。機械室に逃げましょう」


 このマンションの屋上には機械室があります。

 エレベーターの機械室です。

 南京錠で施錠されていますが、古い鍵なので壊れていて鍵が無くても開けられるのです。

 これは、私とナナちゃんだけの秘密です。

 私とナナちゃんは手をつないで、屋上に向い非常階段を目指します。

 非常階段についたとき、お客さんが丁度この階に来たみたいです。


「おい、見ろ!! 誰か非常階段に行ったぞ!!」


 ほとんど同じタイミングだったのに見つかってしまったようです。


「本当かよ!? なにも見えなかったぞ!」


 普段なら廊下にも照明がついているのですが、今日は停電です。

 月明かりだけなので、わたし達を見つけることが出来たのは一人だけのようです。


「だったら、俺一人で行く。いい女だったら独り占めにしてやる」


「ちっ! しかたがねえつきあってやるよ!!」


 男達が追いかけてくるようです。

 私は大丈夫ですが、ナナちゃんは女優さんの様に美しいので、捕まったら何をされるかわかりません。


「チーちゃん! 早く!」


 ナナちゃんがあせっています。

 わたし達は、階段を必死でのぼりました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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