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第百十二話 影の長官

 日本政府からはテロリストと呼ばれ、侵略軍からは目のかたきにされて、旧仲信作長官はさみしそうな表情になりました。


「お爺さま、しばらくは大きな変化はないと思います。少し休憩をしましょう。皆さんも休憩してください」


 ノブコが休憩を提案すると全員が疲れた表情になりました。

 皆、集中しすぎて疲れすら忘れていたようです。

 僕は、椅子にすわりモニターをボーッと見つめました。

 巨大モニターには、西側の防衛ラインと東側の防衛ラインが対比しやすいように左右に分けて映し出されています。

 壊れた建物も兵器も、人的被害も圧倒的に東側に多いように見えます。


「国民の皆さん。こんにちは、突然の報告恐縮でございます。ただいま、東京都が大変な事態になっております。国賊、旧仲信作によるテロ活動により、東京都は完全に占拠されました。自衛隊による奪還作戦は失敗に終わりましたが、自衛隊の被害は軽微であります。こん後、戦費の拡大は避けられませんので、国民の皆様には大変恐縮ではございますが、消費税を25パーセントに引き上げさせて頂きます。今晩の零時をもちまして税率の引き上げとなりますので、国民の皆様ご協力のほど、どうぞよろしく御願いいたします」


 巨大モニターが、激戦の終わった映像を映す配信映像から、地上波のテレビ映像に切替えられました。

 映し出された映像は、各社まったく同じ映像を流しています。

 違うのは八州テレビだけです。


「何という事じゃ。事実はなにも言わず、消費税を上げおった。消費税を下げるのには一年も二年もかかると言いながら、上げるのは数時間で出来るのか。不思議なもんじゃのう」


「これでは、国民がいまから物資を買いあさります。物資がお店から消えますわ」


 エイリが言いました。

 そうですね。消費税が上がる前に、必要な物を買い占めます。

 お店から、商品が消えますね。


「昼からどっこいテレビ、番組内容を変更してお送りいたします。いやあ、大変な事になりましたねえ。許せないのは、国賊のテロ首謀者旧仲信作ですね。では、東京の状況を見てみましょう」


 各社、特別メニューで放送を開始しました。

 どの放送局も、テロ首謀者を旧仲信作長官と決めつけ大悪党扱いです。

 そして、消費税アップはすべての局の出演者全員が賛同しています。

 侵略国については、どこの局も何も言いません。まるで、無かったことです。

 自衛隊は大被害を出していますが、それも何も言わないようです。

 消費税の肯定とテロ首謀者、旧仲信作長官の非難ばかりを繰り返します。


「ふふふ、きっと、明日の朝刊は、わしの悪党顔が大アップだろうのう」


 新聞とテレビだけを信じる人は、旧仲信作長官を大悪党だと信じて疑わないのでしょう。


 しばらく時をおいて、また巨大モニターの映像が切り替わりました。

 日本各地からのライブ配信です。

 日本各地のスーパーやホームセンターに人が群がっています。

 レジーに行列が出来ています。


「いよいよ、パニックが始まりましたわ」


 そう言ってエイリが、ブルッと体を震わせました。


「お米のように商品が消えていきますね」


 ノブコがいいます。


「こんな時に消費税アップって、買い占めに拍車をかけると気がつかないのかしら」


 ユウキが言います。


「ふふふ、政府の大臣達は高級料亭で、祝杯中じゃろうて。政治家の仕事は国民からいかに税金を搾り取るかじゃ。きっと、タラバガニでもムシャムシャ食っているころじゃろうのう」


「報告します」


 巨大モニターの映像が切り替わります。

 ネットの配信動画から見つけたもののようです。


「ふむ、申してみよ」


 侵略軍の司令官です。


「東部前線の第一師団の被害状況です」


「うむ」


「死者、行方不明者無し。重傷者も無いとのことです。軽傷者は数百名、その全ては魔導師の魔法に巻き込まれたものということです。敵軍は司令官とその護衛数千人を逃したのみとのことです」


「すると、自衛隊からの攻撃で受けた被害は無かったということか?」


「はっ!」


「ぷふっ! はあぁぁっはっはっ!! 被害ゼロ!! 被害ゼロ!! 信じられん!! こんな完全勝利は初めてだ!」


 司令官は器用に笑いながら驚いています。


「報告します」


「ふむ」


「西部前線、第二師団の状況です」


「うむ」


「死者、行方不明者無し。重傷者も無いとのことです。軽傷者は数百名、その全ては魔導師の魔法に巻き込まれたものということです。敵軍は司令官の撤退命令で半数ほどが撤退しました。司令官は自決したとのことです」


「おい、聞いたか旧仲信作さんよう。テロの首謀者、大悪党の旧仲信作長官さんよう。我が軍は、丸々無事だ。まあ、半数は見張りに残すとして、残りの全軍であんたを責める。魔導師隊は全員連れて行くからな! なにか――」


 おかしな事に配信がここで切れました。


「うふふ、どうやら、政府が恐れていたことを実施したみたいですね」


 ここまで、一人でモニターの映像の切り替えをしていたシノブさんが言いました。


「シノブ、どう言うことじゃ?」


「はい! 政府が東京都への電力の供給を止めたのでしょう。ガス、水道も止めていると思います。東京都に残った人達の命のタイムリミットが近づきましたね」


「なんじゃと、ぐぬぬー!! おのれぇーー!!!! 日本政府!!!! 日本国民を何処まで苦しめる気じゃ!! 政府のために日本国民がいるのでは無い!!!! 日本国民の為に政府があると言うことを忘れおってぇー!!!! よかろう!! テロの首謀者旧仲信作!!! 日本国民の為、この命尽きるまで戦ってやろう!! まずは侵略軍じゃ!! わしも戦うぞー!!」


「お爺さま、まずは訂正してください!!」


 ノブコがきびしい口調と、きびしい表情で言いました。

 そうとう怒っているみたいです。

 こんな恐いノブコは初めてです。


「ふむ、なにをじゃ?」


「わたし達は、テロリストではありません!! 断じて違います!! わたし達は、地球防衛義勇軍です!! 地球の平和と人々の幸せを守るため立ち上がった組織です。決して私利私欲の為に戦うのではありません。お爺さまがテロの首謀者を認めてしまっては困ります!!」


 さすがはノブコです。

 その通りです。


「う、うむ。で、あるな!!」


 長官はノブコの剣幕に押されてタジタジです。


「では、ノブコ! 僕からも言いたい事があります!」


 僕はノブコの真似をしました。

 今度はノブコがタジタジになっています。


「は、はい。なんでしょうか?」


「次の侵略軍との戦いは、僕が出ます。僕は義勇軍の姫神マモリです。地球の平和と幸せをマモリ戦います。そこに、そんたくはいりません! リリイと2人で行かせてください」


「わかりました」


 ノブコが言いました。

 その顔には貫禄と威厳があります。

 まるで、あなたが長官のようですよ。

 たのもしいです。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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