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第百八話 戦い前夜

 地球防衛義勇軍の幸魂支部の作戦司令室に幹部が招集されました。

 後の巨大モニターの画面が、世界地図から幸魂市の地図に変ります。


「明日の陣立てについてご説明いたします」


 ノブコが涼しい顔で説明をはじめました。

 ガンネスファミリーの幹部もファルコンファミリーの幹部も、元々はマフィアの男達です。

 恐ろしい顔をした人ばかりです。

 彼らが、緊張した表情で指示を一言も漏らさないようにと耳を澄まします。

 そのため余計に恐い顔になっています。


 ノブコは、そんな恐ろしい男達に見つめられても、全く動じる様子もありません。たいしたものです。

 ノブコの祖父の旧仲信作じいさん、地球防衛義勇軍の長官がその様子を、目を細めて見ています。


「まず、東京都に隣接する3本の橋はダニー隊長、ズラー隊長、そしてデェス隊長に守ってもらいます。同行する部隊はガンネス隊です。いつものように半分は、東京都の難民の救助です。救助隊は、アスランさん、カブランさん、クートさんに指揮を御願いします。会長とお母さんも同行して下さい」


 ノブコは、会長とお母さんにも仕事を御願いしました。

 僕は、会長とお母さんにも後で小指に紋章を付けることにしました。


「さて、西側を見てください。自衛隊はこの国道を利用するでしょう。こちらには、ファルコン隊に向ってもらいます。隊長はコングさんです。ミミイさんも同行してください。そして、キュートルスリーも一緒です。わたしもキュートルグリーンとして同行して指揮をとります。ですが、前面に出るのはキュートルピンクのマモリ様だけです」


「えっ、僕だけ?」


 実は、僕は侵略軍より自衛隊と戦う方が、気持ち的に嫌だったのです。

 国民のお米が無いときには、ご飯を食べる事は出来無いとパンを食べるような人達です。そんな人達とは戦いたく無いと、すでに情が移っています。


「不安ですか?」


「いいえ、大丈夫です?」


 でも、これは戦争です。

 命令されれば私情は捨てなければなりません。

 戦えと言われれば戦います。


「うふふ、戦わないでください」


「えっ??」


 ノブコには僕の考えが見えるのでしょうか。

 戦う気になった瞬間、戦わないでくださいと言いました。

 でも、どうするのでしょうか。


「自衛隊の前で、一人で立っていてください」


「は、はいぃー??」


 わかりません。

 返事はしましたが、返事が疑問形になりました。


「自衛隊を、あおって攻撃を受けて、立っていてください。大丈夫ですか?」


 なるほど、ようやくわかりました。

 僕が、一人で出ていって自衛隊の攻撃を一身に受けて、弾切れにさせて追い返す作戦のようです。


「もちろん大丈夫です。任せてください」


 見事、弾切れにさせて見せます。と言おうと思いましたが、作戦が何処からバレるかわかりませんので、それは言わないようにしました。

 でも、さすがはノブコです。見事な作戦です。

 これなら、どこにもケガ人が出ません。


「では、皆さん、部隊ごとに別れて打ち合わせをして下さい」


「ノブコ、僕は現場を見ておきたいのですが」


「はい、後の事は私がやっておきます。どうぞ行って来てください」


「うん、御願いします」


 僕は、会長とお母さんに紋章を付けると、夜食にしようと牛丼を二つ持って、幸魂市の西側の国道に向うことにしました。

 幸魂市はグルリと東西南と川に囲まれています。

 川が無いのは北側だけです。

 西側の河にかかる国道の橋につくと、既に対岸の河川敷に自衛隊は来ているようです。


 既にあたりは暗くなっているので、ライトがいくつも点いているのが良くわかります。

 橋を渡る義勇軍を道の両側の河川敷からクロスファイアで狙うつもりのようです。

 明日僕は、その射撃を一身に受けることになるようです。

 片側2車線の50メートル程の幅の橋の上に立って、広い対岸の河川敷を見つめます。

 しばらく、対岸に動くライトをボーーッと見つめていました。


「まったく、すぐに一人で行動するのですから」


 ユウキが隣に来ました。


「危険だよ」


 僕が心配して言うと。

 ユウキは笑顔で首を振った。


「あそこにあるのは団地かしら」


 堤防があるため、橋は少し高い位置にあります。

 だから街の光がよく見えます。

 集合住宅は、眩しいほど光輝いています。


「そうみたいだね。あそこには、まだ普通の生活があるみたいだね。家族の団らんが見えてきそうだ」


「みんな、それがずっと続くと思っているのかしら」


「きっと思っているのだろうね」


「まったく。すぐに2人だけで行動するのですから、ずるいですわ」


 今度はエイリが来ました。

 本当は一人になりたくて、抜け出して来たのですけど。


「うふふ」


 ユウキがうれしそうに笑いました。


「明日は大勢自衛隊の人がここで死ぬのでしょうか?」


 エイリが心配そうな顔をして、僕の顔をのぞき込んで来ました。


「たぶん、死者は出ないと思います。ノブコがなんとかしてくれるでしょう」


「ほんとうですか??」


 ユウキとエイリが一緒に声を出しました。

 2人は不安だったようですね。

 もうすでに僕は、弾切れで帰っていくことを知っていますが、言わないようにしました。そのほうが、きっとノブコの凄さをわかってもらえると思ったからです。


「自衛隊は河川敷で野営のようです。僕達も橋を降りて河川敷で野営しましょうか」


 2人はコクンとうなずいた。




「ずるいですね。3人でこんな所で楽しそうにキャンプですか?」


 僕が、河川敷で準備をしているとノブコがやって来ました。

 堤防には、ファルコンファミリーも来ているようです。

 コングとミミイさんの姿もあります。

 トラックに本格的な野営の資材を積んできて準備をしはじめました。

 対岸で、こちらの様子を見ている人影が確認出来ます。


「向こうも、こっちに気が付いたようですね」


「うふふ、心配ないですよ。隠す気はありませんから。一応奇襲には備えますが、今の自衛隊がそんな汚い真似をするとは思えませんので大丈夫です」


 ノブコは言いました。

 でも少し気になります。ノブコの言った「今の」という言葉がひっかかります。

 たぶんノブコは、今のこの状態ならきちんと軍規を守って、正々堂々と戦える。でも戦局が悪化すればどうなるのかわからない。

 ノブコは既にそんなことまで考えているように感じます。


 僕はぐっすり眠って目を覚ますと、東の空が少しオレンジ色になっていました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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