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第百六話 是非もなし

 翌朝まだ薄暗い内に僕達はクートの運転する車に乗った。

 東京の中心地を大きく迂回して神奈川県に入り西側から、自衛隊の防衛ラインと想定される場所を目指した。

 国道を走り東京都に近づくと規制線が敷かれ、鉄条網とバリケードが道をふさいでいる。

 数人の銃を持った衛兵が僕達の乗る車を見つけると、銃をかまえて見つめている。


「とまれーー!!」


 一人の兵士が両手を広げて僕達の乗る車を通せんぼした。

 班長だろうか、歴戦の勇者のようなふうぼうをしている。


「怪しい者ではありません」


 クートが班長に答えるのを見て、僕達は車の窓から白旗をニョキニョキ3本出しました。

 その様子を見た班長が、白旗を持っている僕達に視線を移した。

 そのとたん、口をパカッと開いて驚きの表情になった。

 僕達はキュートルブルーとキュートルイエローとキュートルグリーン、そしてキュートルピンクに変身している。

 僕だけはノブコの指示で、なぜか顔を出している。


「キュ、キュートルプリンセス!!!!」


 すごい、班長は僕達4人を見て、的確にキュートルプリンセスと言いました。

 この4人の時はキュウトルプリンセスという呼び方が正解です。

 驚き方といい、呼び方の正確さといい、班長はキュートルプリンセスのファンなのじゃないでしょうか?


「なんだって、キュートルプリンセスだってーー!!!!」


 すぐに車が兵士に囲まれました。


「ふはーーっ!! キュートルピンクだ!! 滅茶苦茶かわいいぞ!!」

「ふむ、美人でキュートだ!」

「映像で見るよりはるかに可愛いなぁー」

「まさか、こんな所で本物に会えるとは」


 兵士達がそれぞれ盛り上がっている。

 僕にとってそれは、あんまり褒め言葉じゃ無いのですけど。

 一応、気分を害されないように、とびきりの笑顔を作りました。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! か、かわいいーー!!!」


 兵士達が喜んでくれた。


「マネージャー、慰問ですか?」


 班長が、クートに聞きました。

 言われて見れば、かしこそうなクートは出来るマネージャーに見えます。


「違います。義勇軍の正式な使者として来ました」


「使者??」


「はい、司令官とお話は出来ませんか?」


「少し待ってくれ。聞いてくる」


 しかし、このキュートルプリンセスというのは、見事な身分証明書になっている。

 僕が顔出ししている意味がやっとわかった。

 この顔を出していなければ、ここまでスムーズにことは運ばなかっただろう。

 軍師ノブコはここまでの事をきっと考えていたのでしょう。

 さすがとしか言いようが無いですね。




「どうぞ、お通りください。司令が冥土の土産に会っておきたいと言われました」


 すごいですね。

 みごと顔パスです。


「ありがとうございます」


 兵士達が車の前のバリケードをどかして、車一台分の隙間を作ってくれました。

 班長が自転車で先導して、本部の大きなテントまで案内してくれました。


「どうぞ!」


 班長がテントの入り口を開けてくれました。

 班長は、僕を1番に入れと無言で手招きをします。

 僕が中に入ると拍手喝采が起きました。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! 滅茶苦茶かわいいぞーー!!!!」

「なんまんだぶ、なんまんだぶ」


 すごい歓声です。

 何人か、拝んでいる人がいます。


「きゃーーっ!!!!」


 続いて黄色い声援が上がります。

 遅れて入って来たクートを見た女性兵士のようです。

 銀髪オールバックのスーツ姿のクートは、女性に「きゃーっ!」といわれるくらいにはナイスガイのようです。


 河川敷にある本部のテントの中は、やはり作戦司令室ですね。

 モニターが幾つもあり、配信動画も映し出され侵略軍の様子が丸裸にされています。師団長の姿まで映し出しています。

 ですが侵略軍にとっては、その位のことはどうということもないのでしょう。

 机の上には朝食でしょうか、パンと飲み物が残っている所があります。


「パン食なのですね」


 僕はつい口から出てしまいました。


「ああ、これですか。これは、国民がお米を手にできないときに、自衛官が米食するわけには行きませんので食べているのですよ」


「さすがですのぉ。日本の自衛官はすごいですのぉ。食にまで国民を思う気持ちがこもっているですのぉ。他の国の軍人は、お腹一杯贅沢な食事をしているですのぉ」


 キュートルグリーンに変身しているミミィさんが言いました。


「僕達は、侵略軍との戦いに参加をしたいと御願いに来ました」


 ミミイさんの言葉に僕も少し感銘して、つい用件が口から出てしまいました。


「おおっ!!」

「うおおおぉぉぉーー!!!!」


 司令官が言うと、まわりからも歓声が上がりました。


「それは、心強い。ぜ……」


「司令!! 防衛大臣から連絡が入りました!!」


 司令の言葉をさえぎって、緊急の通信が入ったみたいです。


「キュートルプリンセスは少しカメラの死角に入ってくれないか」


「はい」


 僕達は、言われるままにカメラの死角まで移動した。


「よし、映像をこちらへ送ってくれ」


 僕達の移動が終わるのを確認して司令は言いました。


「うん? つながったのか? そうか。こほん! 司令部の諸君! あー君達自衛隊は、毎年何兆もの予算を我々が取ってやっているんだ。こんな時こそ命を捨てて我々政治家の生命と財産を守る為に働きたまえ。ふわあはっはっはっ! おいっ! その松阪牛のカルビは俺のだ手を出すなーー!!」


 自衛官は質素な朝食を食べているようですが、画面の中の防衛大臣は朝から高級焼き肉店で松阪牛のカルビを食べているようです。


「あーーっ、もう良いのか?」


 総理大臣が画面に映し出されました。


「総理どうぞ!」


 秘書だろうか横から声が聞こえた。


「あーーっ、諸君! にっくきテロリスト旧仲信作の居場所が判明した。幸魂市だ。兵1万を出し、テロリスト共を皆殺しにしろ!! はぁぁーーっ、しかし、新潟県産コシヒカリの新米はうまいなあ。お替わりだーー!! 山盛りでたのむぞーー!!」


 自衛官が国民にお米を食べてもらおうとパンを食べているのに、総理は新潟県産コシヒカリを山盛りでモリモリ食べているようですね。

 でも、困りました。どうやら交渉は決裂ですね。

 ノブコになんともうしひらきをしたら良いのでしょうか?


「ふーーむ」


 司令がうなっています。


「お気になさらないでください。こうなっては是非もありません。自衛隊1万人、力一杯戦いましょう」


 はーーっ、交渉決裂どころか、自衛隊との戦争が決まってしまいました。

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