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第百四話 悪魔の所業

 集った非難民は、お腹一杯になると少し休んで、それぞれ移動をはじめます。

 親戚がいる人はそこに。

 身寄りの無い人は大阪に。

 現在、日本国の政府は大阪の高級料亭に避難しているそうなので、東京の非難民も大阪に避難するのが良いだろうということです。


「お金の無い人は、貸し出します。1人2万円までです。借用書は取りませんがきっと返して下さい」


 うふふ、それって、もうあげると言った方がいいと思います。

 ガンネスファミリーは、日本人の恩人ですね。


「ほ、本当によいのかね」


 避難民のお爺さんが驚いています。


「ふふふ、我々はいままで、日本人からお金を沢山巻き上げ、ごほん、ありがたくいただいていました。日本政府はこんなこともあろうかと、外国人を大切にしていたのでしょう。外国人だって我々のように感謝をしている者も沢山います。今度は俺達が恩返しをする番だ。それにあげるわけじゃ無い、貸すだけだ。どこかで誰かに返してやってくれ」


 カブランさんが、お爺さんに言いました。


「はあーーはっはっ!!!! それならケチケチせずに10万ぐらいよこせばいいだろうがよぉ!! 恩着せがましいんだよ!!」


 太った、外国製のスーツを着た頭の良さそうなおじさんが、そう言ってカブランさんの手から2万円をもぎ取りました。

 私は、同じ日本人としてはずかしくなりました。

 ガンネスファミリーのように、日本人を大切にしてくれる外国人もいれば、日本人でもちゃんと感謝の出来ない人がいるみたいです。


「すまんのぉ、おにいさん。日本人もこの30年ですっかり変ってしまったようじゃ」


 お爺さんは、カブランさんの差し出したおかねを両手でうやうやしくいただくと、大切にしまいました。


「じいさん、なるべく遠くに避難するんだぜ」


「おおっ、この恩は一生忘れん。にいさん、ありがとうな!」


 お爺さんはニコリと笑うとさみしそうに歩きだしました。

 そういえば、うちもお母さんと2人暮らし、行く当てはありません。

 急に不安になりました。


「はい、どうぞ!!」


 ユウキさんがおにぎりを私の前に出してくれました。


「えっ!?」


「あら、飲み物の方でしたか?」


 ユウキさんはお茶のペットボトルを出してくれました。


「えーーと。私、そんなに、ものほしそうにしていましたか?」


「えっ?? あの、おにぎりを食べ終わったら悲しそうで、さみしそうな顔になったので、もう1つ欲しいのかなと」


「うふふ、両方いただきます。でも悲しそうでさみしそうな顔をしたのは別です。私はお母さんと2人暮しで、他に身よりがありません。だから、不安になってしまったのです」


「うふふ、それなら、幸魂女学園の寮に来れば良いですよ。食堂のおばちゃんがすでに避難しています。そこも危なくなれば、夏祭りをした。私のふるさとに行きましょう。会長なら歓迎です」


 ユウキさんは、可愛いキラキラ輝く笑顔で言ってくれました。


 ――だめだ、可愛いすぎるぅー。


 この子も、マモリ様と同じで私の心をわしづかみにします。

 やばい、涙が出そうです。

 そして抱きつきたい。この超美少女のユウキさんに。


「だいたい、みんな移動が終わったみたいですね」


 はーーっ!!

 マモリ様です。

 ユウキさんに抱きつくのをやめて、マモリ様に抱きつきました。


「えっえっ??」


 マモリ様が突然のことで驚いているみたいです。


「ふふふ、会長さんが、行き先が無くて困っていたみたいです」


「そうですか。それは、不安だったでしょう。すみません。気がつかなくて」


 マモリ様は、優しく両手を後ろにまわしてくれました。


「マモリ様、良かったですね。日本政府のおかげで、避難がスムーズに行きますね。私が子供の頃に見ていたアンナダメダーマンというアニメでは、巨大隕石が落ちるという情報で、人々がパニックになって、食料の奪い合いがはじまって、そこからドンドン争いが激しくなって世界が崩壊するというお話でしたけど、日本政府は、そのアニメで学習したのでしょうね。人々がパニックにならないようにしてくれました」


 ユウキさんがうらやましそうに、私を見つめながら言いました。


「そんなことはありませんわ。政府の人間はお金を数えるのにいそがしいから、アニメなんて見ていませんわ。ついでに庶民の生活だって見ていませんわ。今回の事はたまたまですわ。不幸中の幸いというところですわ」


 エイリさんが言いながら、こちらへ近づいてきます。


「東京が占領されたとわかれば、日本中から食料品が全部消えそうですね」


 マモリ様が私の頭を撫でながら言いました。頬が熱くなります。

 日本という国は、地震が起きるという情報でパニックになり、お店からお米が無くなり、価格が2倍にも3倍にもなりました。

 少し前には、マスクが無くなり価格が5倍にも10倍にもなりました。

 なのに、戦争が世界中で始まっていても、政府が発表しなければあわてることもありません。


 もしも政府が、戦争で東京が占領されたと発表すればどうなるのでしょうか。

 日本中から、物資が消えて日本人同士の戦いが起きそうです。

 私は、恐くなってもう一度ギュッとマモリ様にしがみつきました。


「ちょっとー!」

「長すぎですわ!!」


 とうとう、ユウキさんとエイリさんにマモリ様から引っぺがされました。

 駐車場に避難民の姿が無くなると、ガンネスファミリーも建物に戻ります。

 駐車場に人影が少なくなると、ゾクゾク寒気がします。

 それは、気温のせいだけではなさそうです。


「僕達も、ノブコの所に戻りましょう」


 私とお母さんもマモリ様に同行します。

 行き先は、巨大倉庫の中の義勇軍幸魂支部の作戦司令室でした。


「あら、智子さん」


 司令室には、オカルト研究部の顧問の吉田先生がいて声をかけて下さいました。

 初めての場所に、顔見知りがいると急に緊張がほぐれて落ち着きます。

 部屋の中にはモニターが並んでいて、その中のいくつかが侵略軍の様子を映し出しています。


「こ、これは!?」


 マモリ様が驚きの声を上げました。


「マモリちゃんの恐れていた魔導師隊がついに出て来たようじゃ」


 旧仲信作衆議院議員こと旧仲先生が言いました。

 マモリ様が大きくうなずきました。


「敵司令官も本気のようですね」


「ふむ、自衛隊の中に石原莞爾のような者がおればよいのじゃが、今の自衛隊は良くも悪くも真面目じゃからのう。いや、日本人がもう昭和の心を失っておるからのう。どうなることやら」


「昭和の心??」


「もう、昔のことじゃ。日本人は滅私奉公、自分の為は二の次に考えて家族や国家を第一と考えて行動してきた。今ならブラックといってやりたがらんことでも、昭和の人間は耐えて踏ん張っていたのじゃ。それが日本を支えてきたのじゃ」


「……??」


「ピンとこない顔じゃのう。わかりやすく言えば、硫黄島の戦いや、特攻隊じゃ。今の日本人には出来ないじゃろうのう。欧米化してしまって、個人が大事になってしまったからのう。まあ、今はそれがよいのじゃろうのう」


 旧仲先生はさみしそうな顔になりました。

 先生にとって、今の日本人は日本人らしく無いのでしょうか。

 私は、特攻隊の話は耳にしたことがあります。

 でもそれは、悪魔の所業の様に教わってきました。

 そして、そう思ってきました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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