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終話 村人と吸血姫と魔族。

本日二話目です。お間違えなきよう。

 





 ドドドーーーーンッ


 これまでで最大の爆発音を残し、全ての艦隊から主砲が放たれた。

 レビンの視線は放たれた砲弾を追い、その着弾を見守る。砲弾はすぐに目標へと着弾した。


 王都が爆炎と爆煙に包まれる。主砲の砲弾は着弾と共に爆発するようだ。

 遅れて着弾の爆発音がレビンの耳にも届いた。


『はっはっはっ!!見よ!お前の帰る場所が無くなったぞ!!今ならまだ間に合う!我等と共にこ……えっ?』


 爆発を確認すると、アイスバーレー元帥はすぐにレビンへと言葉を告げるが、それは視線の先の光景により止まることとなった。


 王都は無傷だったのだ。






 時は遡り、連合国の使者が港に訪れる前。


「提案があります」

「何なのだ?」


 城壁の上にいるレビンは隣にいるゲボルグへと話しかけた。


「戦いが始まればミルキィはここに残していきます」

「何故なのだ?」

「ミルキィに人殺しをして欲しくないのもあるけど、もう一つ理由があります」


 今回の敵の数は10倍。それならば手は多い方が良いのではないかとゲボルグは疑問に思う。

 確かに以前のやり方では最初の方に海に落水した者達は助からないだろう。しかし、理由はそれだけではないようだ。


「ミルキィの魔法であれば敵は全員助からないですが、すぐに終わらせられます。まぁその手段は最終手段なので使う予定はないけど」


 レビンの言葉の続きをゲボルグは無言で待った。


「だけど、最初のやり方だと間に合わないんです」

「何に間に合わないのだ?」

「敵の攻撃にです」


 レビンの不安は自分達の殲滅速度が遅れて、王都に例の主砲が放たれる事。

 捕虜から聞いた威力と射程は王都が無事に済むものでは無かったのだ。


「なのでミルキィを王都防衛の為に残します。時間さえ余裕があれば、敵の殲滅は俺だけで充分ですしね」

「それはそれでどうなのだ……」


 ゲボルグは呆れるが、レビンの実力は疑っていない。

 この方法であればこちらに被害はなく、得るものは多いと判断した。


「任せたのである」

「任されたのである!」

「!!?」


 実はこの喋り方をしてみたかったレビンなのであった。






 そんなやり取りがあり、それが王都の光景へと繋がっていた。ミルキィはその膨大な魔力と母から教わった魔法を使い、王都を守り切った。


「攻めたのは確かに俺一人だけど、守りに同じくらいの強さの者を残したんだ」

『…………』


 レビンの語りかけに連合国海軍は静まり返った。


「今度はこちらから告げよう。そちらが逃げようとすれば船を全て沈める。こちらの強さはわかっただろう?そっちの攻撃は全て無駄に終わり、抵抗したところでなんの障害にもならない。それに無駄な抵抗は戦後に影響すると思ってくれ」

『………』


 これまではレビンの強さもミルキィの防衛能力も相手にはわからない事だった。

 しかし、戦う内にレビン達の脅威が相手に伝わったと考えて、交渉(脅し)する事にしたのだ。

 本音は…

(まだ半分も残っているから面倒なんだよな…船を沈めてもいいけど、溺れたり凍えたりで死んじゃうだろうし……)


『……。命は…「取らない」…ならば投降しよう』


 王国はある程度まで行くとハナから交渉に持ち込むつもりだった。

 理由は船や諸々の資材を無傷で手に入れたいから。

 これは戦中に失ったモノの補填に充てる為である。戦後交渉しようにも、相手は海の向こうにいる。そこまで交渉に行く事は叶わず、国民感情的にもただのやられ損は避けたかったのだ。


「ではここで待機しろ。変な動きをすれば海の藻屑になると思ってもらって構わない」

『…わかった』


 レビンはそう告げると港へ向けて船を飛び出した。







「げ、元帥閣下!今なら逃げ切れるのでは?!」


 レビンが居なくなった事を確認した軍人がアイスバーレー元帥に伺いを立てる。


「無駄だ。敵がどうやって海を越えてここまで来たのかすらわからんのに、そんな甘い考えは持てはせん。よって、儂はまだ死にたくないからここに残る。気に入らないのであれば、別の艦に逃げたい者だけを集めて逃げればいい。それは許可しよう」

「……」


 伺いを立てた軍人は叱責されるか同意を得られるかのどちらかだと思っていたが、返答は『好きにしろ、自分は巻き込むな』である。

 逆に説得力を増した返事に全てを諦めて、その軍人は部下に武装解除を命じた。


『全艦に命じる!誰一人逃亡を企てるな!たった一人のその行動が、全滅に繋がる事を今一度肝に銘じるのだ!』


 ユーポート連合国艦隊は本国から遠く離れた極寒の海上で、それ以降静まり返ったのだった。









「お帰りなさい」「ただいま」


 戦争を終わらせたレビンは、ミルキィの元へと帰ってきた。

 今回の戦争は、戦勝ムードの国民には知らせる事なく終わりを迎えた。

 つまり凱旋パレードもないということ。レビンはその事に大きく安堵していた。


「良くやったのじゃ。最早其方らには全てを差し出す所存。どうじゃ?魔族の国を率いてみないかえ?」

「冗談はやめてください。俺は冒険者が一番合っていますから」

(冗談ではないのじゃがのぅ…まぁ過ぎたる力は身を滅ぼす。レビン達はその器じゃが、国という枠に収まるはずもないか……)


「良い。それが其方にはあっておるわ。無粋な申し出であった」

「いえ。過分な評価です」

(村長ならまだしも、国王って…なにするんだ?)


 知りたい病が発病しかけたが、すぐに知らなくてもいい事だと結論付け、意識を現実に戻す。


「彼らの処遇はどうするつもりですか?」


 この質問も他国民がするのであればかなり踏み込んだものだが、王国の英雄であり今回の戦での活躍を顧みれば問題はなさそうに思い、聞いたようだ。


「奴等は王国で暮らしてもらうつもりじゃ。何せ向こうに帰しても再び敵となり攻めてくるやもしれぬ。命令に従っているだけの軍人に本質的な罪はないのじゃが、実際に我が臣民に手をかけたのは奴等。罪を償わせるという意味でもそうするつもりじゃ」

「そうですか。わかりました」

「ん?聞きたいのはそれだけかのぅ?」

「はい。ありがとうございます」


 これで全員処刑であれば、レビンも思うところがあった事だろう。しかし、話を聞く限り真っ当な処分に思えた為、それ以上は過干渉になると思い、それで終わりにしたようだ。


 伝える事は伝え、聞きたい事は聞けたレビンは、レビン以外に興味のないミルキィを連れて王都に出掛けて行った。










「此度のユーポート連合国との戦の論功行賞を行います」


 数日後、以前の会議室の何倍もある大広間にて、行賞が行われていた。

 その場にはゲボルグは勿論のこと、レビンもミルキィもいる。


「此度の戦にて、多大なる貢献をしたことをここに表彰する。ゲボルグ公よ、よくぞ英雄達を連れて来てくれた」


 数々の人達が名前を呼ばれていき、ゲボルグの番がやって来ていた。どうやら後半に行くにつれて貢献度が高いようだ。


「はっ!有難き幸せにございます!」

「うむ。これからも王国を頼むぞぇ?」

「はいっ!」


 ゲボルグは嬉しそうに賞状と副賞らしき物を受け取った。


「最後に、この国の新たな英雄を紹介します。レビン・カーティス様、ミルキィ・レーヴン様。こちらまで御足労願います」


 名前を呼ばれたレビンとミルキィは仲良く壇上へと向かう。

 この広間は地球でいえば体育館のようになっている。これも祖王の遺したものなのかもしれない。


「レビン並びにミルキィ王女。此度は良くぞ駆けつけてくれた。そして聞いていた以上の力をアース王国の為に振るってくれて、感謝の言葉もない」

「いえ。助けになれたのなら良かったです」「右に同じく」


 女王は二人に最大の賛辞を贈るがその二人はどこ吹く風である。ミルキィに至っては何を言ってもレビンと同じと言わんばかりだ。

 綺麗にカーテシーを決めて、見ている限りではレビンよりも様になっているが……


「二人には何を贈ればいいのか……勿論権限は全て渡す。その上で欲しいものはないかえ?ここで断るのは失礼だと思って、遠慮なく言って欲しいのじゃ」

「そう言われても……」


 元々物欲は無く(剣に憧れていた時は除く)、欲しいものは自分達で手に入れたいとすら思っている。むしろその過程が楽しいとも。

 しかし、女王の発言にあったように断るのは忍びない。国としてのメンツもあるのはレビンもミルキィから聞かされて重々承知していたのだ。


「あっ!」

「何かあるか?」


 そんなレビンに天啓が舞い降りた。

 あるなら教えて欲しいと女王は前のめりになり、ミルキィは不審がった。世界一信頼していてもレビンにそう言った信用はないのだ。


「別大陸に行く方法が出来たら、教えてください!あっ、出来なくても、距離や方角とかがわかればそれでいいです!」

「はえ……?そ、そんなことかえ?」

「そんな事ではないです!まだ誰もなし得ていない事ですよ!?これはすごい冒険ですっ!!」


 連合国はしているが、それは向こうから来ただけ。レビンの脳内は都合よく出来ているのだ。



 アース王国がレビンとミルキィに与えたものは、王城であろうがどこであろうがこれからもいつでもどこでも立ち入る事ができ、内政だろうが外交だろうが口を出す事が出来るという権利。前者は有り難かったが、後者はいらないと二人は心から思っていた。

 勿論そんな二人だからこそ女王もその権利を与えたのだろうことは言うまでもない。

 他は先程レビンが要求した事が判明すれば与える事と、王国内での二人の出費は生涯国費で賄うといったものだった。






 数日後。二人の姿は王都正門にある。


「次は何処にいくのかえ?」


 二人の見送りに、女王自らが門まで出張ってきていた。これは歴史上初めての事。アース王国は鎖国しているのだから当然とも言える。


「一旦、エルフの国に帰ります」

「では、その後にでも?」

「恐らくは。それでは、お元気で」「失礼します」


 来た時には誰からも知られていなかった二人だったが、去る時には国中から惜しまれて旅立っていった。









「本当にいいのか?」


 道中、レビンはミルキィに伺いを立てる。


「しつこいわね。良いって言ってるじゃない!」

「いや、でもなぁ。いけるかどうかもわかんないし、帰って来れなくなるかもしれないんだぞ?」


「それでもいいわ。私の居場所は生まれた時から貴方の傍だけ。その事以外望んだこともないし、これからも望まないわ」


 レビンは冒険者に憧れた。その想いは強く、そしてここまで来れた。

 しかしレビンのその想いよりも、この美しく気高い幼馴染の想いの方がより強いのかもしれない。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

魔族の国編完結です。


レビンやミルキィの口調は所々昔に戻っています。興奮すると戻る使用です。


最後に別大陸へと向かう描写を残したのはその内書く予定という事です。(その内)


この話で一旦完結として、再び皆様にお見せできるようになりましたら更新します。


それではその時まで暫しお待ちを。多謝。

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