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村人と吸血姫と魔族②

いつも『いいね』ありがとうございます。

 






「ひぃっ!?速いぃぃぃっ!!?」


 魔の森を突破した三人は、現在山を登っている。

 魔の森はレビン、ゲボルグ、ミルキィの順番で並び走破したが、山に入るとゲボルグの足が遅れ出した。

 時間がないのは理解していた為、レビンはゲボルグを担いで移動する事にしたのだ。


「もう少し声のボリュームを落としてください!レベルが高い分だけよく聞こえてるので!!」


 高レベルでも良いことばかりではないようだ。


「レビン。もう気を失っているわ。このまま北へ行けるところまで行きましょう?」

「なんて迷惑な……そうしよう」


 レビンの男らしい口調は時と場合によるらしい。

 ゲボルグやミルキィの両親など、前から関わっていた人達には変わらぬ対応をしている。


 意見が一致した二人は北を目指した。人外の速さで。















「う、嘘であろう?」


 寒さで目覚めたゲボルグは自身の目を疑う。


「ここはどの辺りですか?もうすぐ夕刻を迎えるのでここで野営の準備します?」

「こ、こ、ここは…アース王国…我等魔族の住む国だ……」


 ゲボルグがエルフの国まで旅した期間は一週間。それも荷物を持たずに着の身着のまま駆けつけてそれだった。


「たった二日で……しかも我をおぶっていたのに…」


「おっ!じゃあ目的地ですね!ここが先輩の作った国かぁ…」


 先輩とは同じ魔王種の先達である魔族の国の建国者の事だ。


「雪ばかりで何もないわね」


 幾つかの山を越えると平地へと出た。その平地はかなりの広さがあるように思えるが、人が住んでいるとは思えないモノだった。

 辺り一面の銀世界。

 気温は氷点下を大きく下回っていて、殆ど氷の世界だった。


「こんな所に住めるのですか?」

「うむ。魔族であってもその実、人と大差ない。もし着の身着のままここへ放り出されたら1日と持つまい」


「えっ?じゃあどうやって…?」

「魔法だ。魔法により魔の森と似たような気温を一年中保つ場所を作って、そこで暮らしているのである」


(流石未踏の土地。人が住めないんじゃ、襲って奪う事もないから安全だな)


 しかし、今は襲われている。それもレビン達が住む大陸とは別の大陸のモノ達に。


「ここから一番近い街に向かうのである。日暮までには着けるからな」


「わかりました。道案内お願いします」「わかったわ」


 ゲボルグと出会ってから、道案内以外でゲボルグが活躍した事があっただろうか?

 レビンはそう思うが、もう一つだけゲボルグの活躍はあった。

 それは、ミルキィの症状と同じモノをレビンに伝え、安心させたという、聞く人が聞けば『ゲボルグって、別に要らないんじゃ…』という哀しい活躍があった…










 雪景色の中に突如街が現れた。

 街は高さ六メートル程の外壁に囲まれていて、四隅には塔の様なモノが建っていた。

 ゲボルグの説明によるとその塔から温度調節の魔法が街に張り巡らされているとのこと。

 街から街への移動は今のゲボルグと同じように個人で自分に保温の魔法を掛ける必要がある。


 レビンとミルキィは人外のレベルの恩恵により、寒さ暑さには強い為、何もしなくともこの銀世界を歩く事が出来た。


「ここが魔族の街……人の街と変わりないですね…」


「魔族も人と同じなのは感性もって事のようね」


「…其方らは何を期待しておったのだ」


 あからさまに残念がる二人を見て、ゲボルグはこの二人は観光にでも来たのか?と、目的を失いそうになっていた。


「あれ?でも他国に…別の大陸の人達に攻め込まれているんですよね?なんかそんな感じには見えませんが…」


 レビンの目から街は平穏そのものに見えた。


「ここは魔族の国の端であるからな。それに別大陸の者達はまだ上陸していないはずなのである。

 とにかく、今日はここで休むのである!説明は宿でするのである!」


「わかりました。魔族のお金を持っていないのでよろしくお願いしますね」「世話になるわ」


 宿を取り、二人はゲボルグの部屋で事情を聞いた。


 その説明によると、別大陸の者達はいきなりアース王国を攻めてきた。

 その時に魔族達が受けたモノは、知らない武器による殺戮。そして蹂躙。

 一つの街を滅ぼした敵は、一度海に停泊してある船へと戻る。そして使者が訪れた。


『我が祖国の軍門に下るのであれば、これ以上の攻撃はしない。

 二十日待ってやる。それまでに結論を出せ』


 そう告げて去っていった。


「じゃあ後十日程で再び攻めてくると?」

「そうなのである」

「負けを認めると?」

「その国の身分の最下層『奴隷』に魔族皆落とされる。そして国は無くなる」


 最早議論の余地は無かった。


「相手の見た事もない武器ってどんなものなんですか?」


「うーーん。聞いた話なのだが、破裂音が轟くと鉄の小さな粒が射出される武器のようだ。

 なんでもその武器からは魔力を感じられなかったと聞いたから魔導具でも魔法でもないということだ」


 魔族の祖王である魔王が聞いていたら、その武器の名前がわかった事だろう。

 敵はこの大陸の文明力では作れない銃を作成し、扱っているのだった。

 別の大陸からやってこれた事からもその文明力の高さが窺えた。


「ふんっ。そんな子供騙しの武器なら私達には通用しないわっ!でしょ?レビン」

「そうだな。俺達の脅威はミルキィの100日睡眠とまともに扱える武器が無いくらいだな」


「…うん。其方らの事は心配しておらん。それなら助けを求める事もないのである」


 ゲボルグは遠くを見つめて呟いた。


 レビンの武器が無い発言は、愛剣が壊れた事に起因する。

 最早、人族が造る武器でレビンの力に耐えられる物は存在しないのだ。


 三人は翌日に備えて、早々に休む事にした。













「あそこがアース王国の王都である」


 翌日、白銀の世界をさらに北へと進んだ一向は山の頂きへと辿り着いていた。

 そこから見下ろす景色はまさに絶景というに相応しいものである。


「凄い…海が凍っている…」

「…いいえ…あれは氷の山よ。海の向こうに見えるのが、別大陸からやってきた船のようね」


「そうなのである。そしてその手前にある巨大な都市が王都なのだ」


 大きな街はすでにそれなりに見てきた為、それにはあまり二人の興味は惹かれなかったようだ。


「まだ無事みたいですね。行きましょうか」


「うむ」「ええ」


 三人は山を下る。










 厳戒態勢の街に着いた三人は閉ざされた門の前に立っている。


「何奴だ?…ゲボルグ様!?」


(ゲボルグ…様?えっ?ゲボルグさんって魔族の中でお偉いさんなのか?)


「うむ。予定より早く帰る事が出来たのである。これより城へと向かうので門を開けてくれ」

「は、はいっ!ただ今!」


 城壁の上からレビン達を見下ろしていた兵士は、門の内側にいる兵士に向けて指示を飛ばした。


 すぐに門は開き、レビン達はアース王国の王都へと足を踏み入れたのだった。


 レビンとミルキィは先導するゲボルグの後を追いながら街を観察していた。


「前の街は普通だったが…ここは人が出歩いていないな」

「そうね。全くいないわけじゃ無いけど、漸く戦時中なんだと理解出来たわ」


 地球でいうところのシャッター商店街のような雰囲気を王都は醸し出していた。


 10分ほど街中を行くと、視線の先に城を捉える事が出来た。


「あれがこの国の城か…変わった形をしているな」

「ええ。丘の上の白い外壁に変わった屋根のお城…丘の周りは堀になっているようね」


 恐らく初代国王である魔王が建てたのだろう。

 見た目は日本の城そのものである。







「ゲボルグ様っ!よくぞご無事で!」


 城の門に辿り着くと、門番がゲボルグに駆け寄ってきた。


(ゲボルグさんって慕われているんだな…)


 レビンは失礼な感想を持っていた。


「うむ。陛下は?」

「お待ちです。こちらへ」

「二人とも行くである」


「「は、はい」」


 これまでのゲボルグの印象と真逆の現実を突きつけられていた二人は、何故かゲボルグに緊張していた。


 門をくぐると城が姿を現す。

 遠くで見ていた時よりも存在感を増した白亜の城に二人は圧倒され、中に入るとさらに驚くことに。


「靴を脱ぐのですか?」

「そうである。他の建物は土足だが、城だけは靴を履いて上がってはいけないのだ」

「変わっているけど…郷に入っては郷に従えというわね」


 木の床に石材でも木材でもない壁が迷路のように続いている。

 先を行くゲボルグを見失わないように、二人は後を追った。








「陛下!ゲボルグにございます!」


 障子と呼ばれる扉の前にやってきたゲボルグは、中にいる人物に声を掛けた。


「おおっ!!よくぞ帰った!!入られよ!」


 スッ


 障子を引くとレビン達にも中の様子が窺えた。


「えっ?紫?」


 中にいた人物の髪の色は綺麗な紫色をしていた。

 色々な髪色が存在するこの世界でも、レビンは未だに見た事のない色だった。

全く違う話ですが『クリスの魔法陣』という小説が完結しました。GWの隙間時間の暇つぶしに如何でしょうか?

新連載もいくつかあるので読んで頂けると嬉しく思います!!

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