魔素の素。
ゲボルグというお荷物?を抱えてしまったレビンだったが、気にしない事にした。つまり……
「は、速いぃ…ぜぇはぁ…」
「頑張ってください!魔物が寄ってきちゃいますよ?」
「ひぃっ!?」
ある程度の移動速度は合わせるが甘やかさない。
レビンは間合いに入った魔物を斬り伏せながら魔の森の中心へと向かった。
(魔族ってみんなゲボルグさんみたいな感じなのかな?)
幻の種族としてレビンも『冒険録』で学んではいた。
しかし、幻の種族であるため、詳しくは載っていなかったのだ。
(もし個性じゃなくてみんながこんな感じなら人族が間違ってるよね?)
歴史書は常にその時代の勝者に有利な事ばかり記載される。
何かがあり魔族が排斥されたのだ。その何かは大昔のことのために詳しくは説明されていない。
しかしゲボルグを見る限りでは困っている子供を放っておけない気質というか、人の話を聞かないというか…
とにかくレビンにとって悪い印象ではない。面倒臭くはあるが……
(流石に魔族にも色んな人がいるよね?)
魔族に夢を見たい様だ。
(後、見た目だと人族との違いが全くわかんないなぁ。昔の人はどうやって判断したんだ?)
レビンは大好きな考察をしながらも足は止めずに魔物を屠っていった。
「ぜぇはぁ……な…に…?ま…ぞく、と…人族の…違い…だと?」
「呼吸を整えてからで構いませんよ。さっ。ゆっくり呼吸して下さい」
ここは大木の枝の上。
レビンは足が止まりそうになっていたゲボルグの為に休憩の時間を作ったのだ。
ゴキュゴキュ
「ぷはぁっ!生き返る!」
『いや、死んでませんよ?』とはレビンは言えなかった。まだそこまでの仲ではないと考えたようだ。
レビンから水を受け取り、それを一息で飲み干したゲボルグは会話の続きに入った。
「人族と魔族の違いだったな。答えは…そんなモノない。だ」
「えっ?ないんですか?」
何かあると思ったレビンは驚いた。
「見た目の違いはない。内側に違いがあってな。魔族は人族より魔力が多く、魔法の適正が高いのだ」
「えっ?それだけ…?」
「うむ。それだけだな。大昔に人族は我等魔力の高い魔族を排除したのだ。
我等もそうだが、人族とは自分より優れた力を持つ者を脅威に思うのだ。
明確に敵対していなかったが、潜在的な脅威を取り除く為に当時『魔女』や『魔法使い』と言われていた我らの祖先は住処を追われたのだ」
(えっ…じゃあ魔族は悪い事してないよね?片方の言い分を鵜呑みには出来ないけど…)
それでもレビンには心当たりがあった。
ヴァンパイアだ。
(ヴァンパイアも恐らく魔力が高いよね。吸血が必要でも、魔物や動物の血で賄えるし、ちゃんと管理していたら危険はない。なのに執拗に排除された)
見た目は魔族も人族もヴァンパイアも同じなのだ。
逆に力の強い獣人族や精霊魔法が使えるエルフは見た目が違う事から排斥されなかった。
そんな風に思ったレビンだった。
そして
(このまま行くと僕も排除されそうだな。でもミルキィも一緒だからいいかっ!)
結果明るい(能天気)レビンには関係なかったようだ。
魔族談義に花を咲かせたレビン達は休憩もそこそこに先へ進んだ。
そして一日後。
「禍々しい魔素であるな……これまでの魔素が海水であるならばここは塩湖である」
(よくわかんない喩えだなぁ。海水?塩湖?なにそれ?)
海という単語は知っていたが言葉で聞く海水にピンと来なかった。
ましてやそうそうお目にかからない塩湖などわかるはずもなかった。
「とにかく凄く濃いのですね?」
「そうだな。我のような魔力に頼った者には有難い所だが……ここから出た時の反動が恐ろしい」
レビンは多少の恩恵を受けるが困るほどではない為、スルーした。
ゲボルグはどうやら魔力を使い身体能力を上げていたようで、この辺りまでくるとレビンについて来れていた。
もちろんレビンはゲボルグに合わせていたので本気ではない。
「それにしても静かですね?動物は当たり前にいませんが、魔物もいない?」
「我の魔力探知の範囲は数キロに及ぶが捉えられんな」
ゲボルグの魔力探知は優秀だが、精々一キロ程度である。
ここに来て精度と範囲があがったようだ。
「ゲボルグさんがいうならそうなんでしょうね」
「ああ。だが何があるのかわからん。逆に気を引き締めて行こう」
お荷物だったのは自覚していた。
しかし、ここに来て自信を取り戻したゲボルグは保護者?らしい事を提案した。
レビンにもちろん否はない。
(ゲボルグさんは褒めて伸びるタイプだ)
(魔力探知が信頼されてる…そうだ!我は偉大なる魔導士である!)
レビンは人を使うのが上手いが、ゲボルグはあまり調子に乗らせない方がいいタイプな気がしてならない。
「なんだここ…?穴?」
恐らく魔の森の中心部に辿り着いた二人が目にしたのは……黒い球体であった。
「レビン。触れてはならんぞ!これから魔素が噴き出されている!」
「わ、わかりました。穴かと思ったけど…球体ですね」
二人の前には直径20m程の穴がある。そこに触れるかどうかというくらいギチギチに球体が収まっている。
半球の上部だけが地上に顔を出している形だ。
二人には見えないが恐らく穴の中も球体で埋め尽くされているように思えた。
「何だと思う?」
「全くわかりません。外側が黒く見えますけど、恐らく中も黒くて全く全容が知れませんね。
ここまで黒いと何もかも吸い込まれてしまいそうです」
得体の知れないものに恐怖するゲボルグ。対してレビンは興味津々だ。
「つついてみますね」
ゲボルグは止めようとしたが間に合わず、レビンは拾った枝で球体をつついた。
「うわっ。無くなった…」
レビンが持っていた枝は、黒い球体に触れたところが消滅していた。
「やめるんだ!こんなエネルギーの塊みたいなモノが破裂でもしたら辺り一帯ごと吹き飛んでしまう」
「いっ!?」
レビンは言うことを聞いた。
「結局わかりませんでしたね…」
考察も実験も出来ないまま、消化不良のレビンのテンションは駄々下がりだ。
それを見たゲボルグは可哀想だと思い、わかることだけを伝えた。
「恐らくだが…」
ゲボルグがそう前置きをして続ける。
「あの球体が魔素を放っているのは間違いない。そしてあの一帯に魔物が居なかったのは恐らく球体に呑み込まれたからだ。
呑み込むといってもあの球体に意志があるとは思えんから魔物の方から飛び込んだのだろう」
「えっ?なぜです?他の魔物が消えるところを見たりしたら流石に魔物と言えど警戒してあの球体には近寄らないんじゃ?」
レビンも枝が消えた時にそれは考えた。しかし魔物も馬鹿ではない事を知っている為、すぐに除外した。
「普通であればそうだ。しかし魔物はなぜこの場所に来たがる?」
「それは魔素が……そういうことか」
「気付いたな?恐らく魔素をばら撒いているあの球体は魔物にとっては抗うことができないほどの魅力があるものに見えるのだろう。
我でもあの濃い魔素の場は離れ難かった。
より本能で生きる魔物であれば尚更だろう」
『えっ?この人魔物寄り?』と思うレビンであったがもちろん言葉にはしなかった。
言葉にするしないで差別が始まるのだ。
まぁ単純に面倒臭い事になりそうだと思っただけだろうが。
中心部に辿り着いたレビン達はする事もないのですぐにその場を後にした。
中心部を越えるという事は、レビンは遂に反対側へと辿り着いたのだった。
レベル
レビン:66→72(171)
ミルキィ:99
クリスマスイヴにレビンはおっさんと二人きり…何も起きないはずもなく…
いえ。時間軸は全く違いました。作者の勘違いのようです。
本日から毎日投稿致します。




