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レベルアップの代償。





ギルドに着いた二人はダンジョン入り口と案内されている場所へと向かっていた。


「それにしても建物の中をこんなに歩く日が来るとは思わなかったよ」


「そうね。この建物は一周がどれだけあるのかしら…」


永遠と緩やかなカーブを描くギルド内を二人は看板の案内通りに進んだ。

もし案内がなければずっと同じ景色のせいで入り口に気付かずに何周もする羽目になりそうだと二人は恐々していた。


「あれじゃないかな?」


「多分そうよ!あそこだけカウンターがないもの」


二人の視線の先、凡そ20m程のところで穴が空いていた壁がなくなっている場所を見つけた。

そこに近づくと『←迷宮(ダンジョン)入り口』と書かれた案内看板があった。


「あってたね!貰ったタグを見せれば良いんだよね?」


「そうね。どちらに見せればいいのかしら…」


そう言ったミルキィの視線の先にはギルド職員と思わしき制服を纏った男性と領境にいた兵士と同じ鎧を纏った兵士がいた。


「わかんないから両方に見せればいいんじゃないかな?」


「それもそうね」


ダンジョン入り口の通路は3メートルほどの幅の為、どちらにも見せれる。


「こんにちは!入りますね!」


右と左に立つそれぞれの人物にレビンは赤いタグを見せた。


「お気をつけて」


「若いな…頑張れよ」


二人を見た職員と兵士はそれぞれ声を返した。


(うん。二人とも良い人みたいだけど…なんで態々二人も?)


レビンはギルドと国は仲があまり良くないと印象を受けていた。

ギルドがちょろまかさないようにと見張っている形なのでそう印象付けるのも仕方ない。


確かに上層部には様々な利点や利権があり思惑も無数に存在している。

しかし、現場の人達さえそうかと言われると一概にはいえない。


(仲が悪いから別々に管理したがっているのかな?)


こう思うのも致し方ない。そして的外れではない。



この砂に囲まれた街では冒険者が一番でかい顔をしている。何せ、街にお金や仕事をもたらしているのは自分達であると自負している為だ。


そうなると街の中ではギルド職員や兵士は冒険者と会いたくない。

すると冒険者のいない飲食店などに自ずと足が向いてくる。

そこでは職員と兵士がお互いの仕事の愚痴(冒険者の事)を言い合う場所が出来上がる。


人は味方かどうかはさておき、敵が同じだと仲良くなる人種のようだ。


閑話休題


「あれが入り口なのかな?」


「そうみたいね。何だか吸い込まれそうよ…」


タグを見せた二人はダンジョン入り口まで辿り着いていた。

目の前には砂漠の中に高さ5m程の岩が鎮座していて、二人の正面に直径2.5m程の穴が空いている。


穴は光すらも通さない漆黒の闇であり、ミルキィの感想からわかるように何らかの人を惹きつける魅力があるようだ。


「行こうか」「ええ」


二人は手を繋いでその闇へと足を踏み入れた。






「凄い…」「ホントに森があるのね…」


穴に飛び込んだ二人を待ち受けていたのは洞窟…ではなく森林地帯であった。


「確か太陽と反対に進むとさっきの洞窟前に出るんだよね?少し前に進もうか」


「ええ。そう聞いてるわ。着いて行くわね」


ギルド職員の説明を再確認したレビンは森の奥へと向かった。

そして…何よりも優先する事を行う事に。




「ここだと木が密集しているから人には見られないよ」


「確かに見られたらまずいけど…何か嫌な言い方ね」


人には言えない事をするのだが、二人にとっては当たり前の事の為、ミルキィはそうしなくてはならない現実に嫌気がさす。


(それに何だか…秘密の逢瀬みたいじゃないっ!)


ただの耳年増だった。


「はい。7回ちゃんと吸ってね!」


現実は輸血ならぬ吸血の為、ムードも何もない。




「よし!『レベル0』これですぐにあげられるよ!」


レビンは嬉しそうにそう伝えるが伝えられたミルキィはそれどころではない。


(ハァハァ。凄い高揚感…何だかおかしくなっちゃいそうだわ)


短時間での7レベルものレベルアップを体感して息が荒くなり、不思議な感覚に身体が支配されそうになっていた。


「大丈夫?」


顔を紅潮させて息を荒げる幼馴染を心配そうに見つめた。


「大丈夫よ…別にしんどいとかじゃないから…さっ。行くわよ」プイッ


真っ赤な顔を隠すように応えたミルキィはレビンの返事も聞かずに森の中を行く。


(うーん。僕はレベルが急に下がっても中身は変わらないから良いけど…次からは気をつけなくちゃ)


「あっ!?ミルキィ!待ってよぉ!」


ミルキィの異変が急激なレベルアップによるものなのかヴァンパイアだからなのか、ハーフだからなのか。答えが出ない為、結局気をつける事しか出来ないと結論付けてレビンは後を追った。






「どうしたの?」


後を追ったは良いものの、すぐに立ち止まった幼馴染に声を掛けた。


「あれはゴブリンよね?」


ミルキィが指差した方にいたのは醜い小人であった。

小人といっても150cmないくらいのサイズだ。


「そうだね。まだ気付いていないみたいだから奇襲しよう。向こうは3体だから逃げそうになった奴は任せる……ね!?」


レビンがゴブリンを見ながら説明していると話しかけていた幼馴染がいなくなっていた。


視線をゴブリンに戻すとすでにミルキィが肉薄していた。


ザシュッザシュッザシュッ


剣を鈍器のように振り回したミルキィはゴブリン3体を瞬く間に屍に変えた。


「ど、どうして…?」


レビンは疑問だらけだったが、考えても仕方ない為、ミルキィの元へと急いだ。



「ふふふっ。やれたわ…」


「ミルキィ!何で勝手に動いたの!?ううん。勝手に動くのはこの際置いといて、何でこんな事をしたの?」


レビンはブツブツ言っているミルキィの肩を掴み目を合わせて問いかけた。


「えっ……?」


ミルキィは黒髪の年齢よりも幼く見える顔立ちの幼馴染の瞳に映る自身の表情を見て愕然とした。


(ど、どうして魔物を倒して笑っているのよ!?)


そして徐々に正気を取り戻していった。


「ごめんなさい…急なレベルアップの高揚感でおかしくなっていたみたい…もう本当に大丈夫よ」


「…そう。それならいいけど無理なら無理ってちゃんと言ってね?沢山血を吸わせた僕が言うのもなんだけどね?」


レビンは沈んだ空気を持ち上げる為に舌を出しておちゃらけて見せた。


「えぇ。ホントに大丈夫よ。レベルアップの為に来たのに私が倒してたら世話ないわね。話し合った通り、レビンに任せるわ」


「うん!危なくなったり、逃げそうになった魔物はよろしくね!」


二人はここに来る前に基本方針を話し合っていた。

まずはレビンのレベルを7→0→7にする。

そしてそれに掛かる時間によって後で相談する事にしていた。


「ええ。あっ!?」


「どうしたの?」


「魔石を取る前に消えてしまったわ…」


二人の周りにあったゴブリンの死骸はいつの間にか消えていた。


「……こういうこともあるよ。次からは二人で急いで剥ぎ取りしようね!」


「ええ。頑張りましょう」


唯一の収入源が消えてしまい。今回の戦闘で得たモノは無くなってしまった。正確にはミルキィのレベルアップにならないごく僅かな経験値を残して。





それから3時間余り森を歩き回った結果。


「やっとレベル5かぁ…」


「魔石も33個ね」


レベル0であればゴブリン1体でレベルアップする。

レベル1であればゴブリン2体でレベルアップする。

レベル2であればゴブリン4体でレベルアップする。

レベル3であればゴブリン8体でレベルアップする。

レベル4であればゴブリン16体でレベルアップする。


(このまま行くとレベル7になる為には後94体も倒さないいけないって事だよね?)


1日動き回っても出来るか出来ないかの数だ。


(普通の人がレベル10を超えるのって凄い事だよね…)


あくまでもゴブリンの経験値計算では。と、注釈が入る。

レベルに合った敵と戦えばやはりレベルは上がりやすくなるだろう。

そこまで考えたレビンは答えを出した。


「ここでレベル60まで上げよう。それで一度ギルドに戻ろう」


先には進まない事を提案した。


「任せるわ。どれくらい掛かるのかしら?」


「長くて2日。どちらにしてもミルキィがレベル60になるまでは小まめにレベルドレインしてもらいたいのだけど大丈夫かな?無理なら予定を延ばせば良いだけだから、気にせずに本当の事を言ってね?」


レビンは真剣な眼差しでミルキィを見つめた。


「この三時間で大分スッキリしたわ。でも一度に3レベルまでね。それならその後も問題ないと思うわ」


「わかった。じゃあ2レベル分吸ってね」


「?3回…3レベル分吸えるわよ?」


血を吸われすぎてレビンが馬鹿に…ではない。


「ミルキィは無理するからね。3回まで大丈夫だと自己申告するなら2回ならもっと安心だから」


過保護な程の心配に『子供じゃないわっ!』と喉まで出掛かったが、それだけミルキィ(自分)の事を理解してくれて心配してくれている事にミルキィは胸が詰まった。


「…ありがと」ボソッ


小さく呟くようなお礼を述べた。


レベル

レビン:7→0→5(51)

ミルキィ:39→46

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