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     第三章 魔法使い。      目指せ!ダンジョン都市!





ミラードの街を出た二人は王領を目指し歩いていた。


王領というのは、王家が所有している領地の事を指す。

王都ももちろん王領であるが、デザート王領は王都からは離れた周りを他の貴族領に囲まれた飛び地である。


何故そんな不便な土地を王家が態々管理しているのかというと、ダンジョンがあるからだ。


ダンジョンは魔石しか手に入れられない。そして魔石はダンジョン以外からでも手に入れられる事が出来る。

しかしここで大事なのは数である。


魔石は魔導具や魔石魔法などに使われていて、この世界の住人には必要不可欠な資源である。

例えば食べ物を冷やして保存する冷蔵の魔導具や都市部では多く見られる街灯として使われている灯りの魔導具に魔石が使われている。


そして魔石は使い捨てである。

魔石と石の違いは魔力を内包しているかいないかである。

そして魔石は取り出した魔物により出力や持続力が違う。その為、数が必要な街灯などに使われているモノは数の多い弱い魔物ゴブリンなどの魔石が対応している。


冒険者などからしたらそこまで儲けが多くないダンジョンであるが、そういった事情により国からすればかなりの利益が見込まれる為、貴族ではなく王家や国が管理しているのだ。


そして儲けが少ないにも関わらず冒険者がひっきりなしに訪れる理由は経験値の多さの為だ。


魔物1匹でも普通の狩場であれば30分に一回も遭遇しない。

これが人が通る街道であれば一時間に一度遭遇すれば多いほどだ。


しかしダンジョンであれば狩場まですぐである上に多くの魔物がいる。

その為、1日の戦闘が何倍も多く、多くの経験値を獲得する事が出来るのだ。

もちろん勝てればの話であるが。。。




「あそこに見えるのが領都ターナーかな?」


レビンの視線の先には立派な石造りの壁が聳え立っていた。


「そうね。旅人さんの情報通りだわ」


「親切な人でよかったね!」


二人はここへ着く少し前に街道で人とすれ違っていた。

その人物に『後三時間ほど進めば領都に着くぞ』と教えられていた。


「ええ。そしてここがミラードとデザートの中間地点ね?」


「うん。もうそろそろ日が暮れちゃうから今日は宿に泊まろう」


「そうね。良いところなら何泊かしてもいいわね」


二人は未だ見ぬターナーの街に想いを馳せた。




「冒険者か…一人銀貨5枚だ」


門番から告げられた言葉にレビンは愕然とした。


「えっ…冒険者ですよ?」


「他の街は知らんが、ここでは何人であろうと金を取る。いやなら入らない事だな」


門番の毅然とした対応に何を言っても無駄だと悟ったレビンはミルキィに伺った。


「安い出費ではないけど、これも勉強だと思って入らない?」


「うん。そうしよっか。流石に宿で疲れを取りたいしね」


二人で金貨一枚の入市税を払い、領都ターナーへと足を踏み入れた。




領都に入った事を二人は激しく後悔していた。


「街は綺麗だけれど…あんまりだわ…」


「何も出来ない自分の無力さが許せないよ…」


街に入った二人がまず気付いたのは、綺麗すぎる景観だった。

それはいたってありがたい事だったが、何故ここまで綺麗なのか、その理由に気付いて後悔が募る。


「そこかしこで奴隷が虐げられてるわ…街の人達は何も思わないのかしら?」


襤褸(ボロ)を纏った奴隷と思われる人達が、ムチを振るう人達にこき使われていた。


「同じ人族なのに…ううん。人族であろうとなかろうと敵対しているわけじゃないのに、なんでこんなに酷いことが出来るんだろう……」


暫くその様子を眺めていた二人だが、何も出来ない事を悟るとその場から逃げるように宿を探した。


ターナーの街並みは前述したように土埃さえない綺麗な街並みだった。

道行く人達は今までの街と違い、皆良い服を着ていて、誰も走ったりしていない。

建物も街に必ずあると言っていい掘建小屋や古くなって朽ちて来ている建物すらなく、どれも綺麗な建物だった。


二人は街の中、至る所にいる奴隷達をなるべく視界に入れないように視線を上に持っていき、宿を探した。


「ここにしようか」


「ええ。早く休みましょう…」


一軒の宿の前に着いた二人は扉を開けて中に入った。


「いらっしゃいませ。お泊まりでしょうか?」


中に入った二人を出迎えたのは綺麗な服に身を包んだ、服に負けない美しい女性だった。

二人はその女性を見ると息を呑んだ。


(く、首輪をしている…この人も奴隷なのか?)


「は、はい。二人ですが空いてますか?」


「お二人様ですね。一泊金貨一枚と銀貨五枚になりますがよろしかったでしょうか?」


「はい。ではこちらで」


レビンはお金を払うと説明を聞いてすぐに部屋へと入った。




「受付の人も奴隷だったね」


部屋に逃げるように入った二人はため息と共に会話をスタートした。


「えぇ。綺麗な人だから受付をしているのね。外の人達と違って待遇は良さそうに見えるけど…」


ミルキィはこれ以上の想像はやめた。

もしかしたら客引きや接客の為に女性としての尊厳を奪われているかもしれないと想像してしまったからだ。


「この街は綺麗だけど上辺だけだね…」


「ええ。多くの奴隷に身を落とした人達の犠牲の上に成り立っているわね」


「うん。みんな裕福そうだったけど、それ以外の人達が見当たらないのはそういう事(・・・・・)だよね」


街を守る冒険者ですら入市税が掛かるのだ。

その税金の使い道は想像に難く無いが、そういった高い税金を払える者しかこの街では普通に(・・・)暮らせないと二人は考えた。


平均以下の収入の者達は高い税を支払えず街を出て行ったか、もしくは借金をして奴隷になったのだろう。


「お金が人の立場を作るのは僕には合わないよ…」


「そうね。シーベルトのように生まれながらにして権力を有する人達がいるのはわかるわ。そういった人達にはシーベルトと同様に権利も義務もあるから。

でもお金や両親がいるかで立場が変わるこの街は、違和感しか感じないわね」


理解は出来るが納得はいかない奴隷制度に二人はすでに折り合いはつけている。

そして自分達ではどうしようもない事も。

二人に出来る自己防衛は・・・


「明日の朝一でこの街を出ようよ」


「賛成ね。心がもたないわ」


自らの心の平穏の為に目を背ける事しか出来なかった。


(いずれ…)


二人は思い思いの理想を胸に、領都ターナーでの夜を迎えた。





領都ターナーを旅立った二人はついに王領に足を踏み入れようとしていた。


「身分証を出せ」


立派な鎧に身を包んだ兵士が二人に話しかけた。


ここはターナー伯爵領と王領の間にある関所(領境)である。

他の関所と違い、守っている兵士の装備が立派だった。

これは他の兵士の装備が悪いのではなく、ここの兵士の装備が戦闘向けというよりも、儀礼的な装備であるためだ。


「はい。こちらです」


二人はタグをそれぞれ見せた。


「ミルキィという女はいいが…レビン。貴様は銀ランクのレベルではないぞ。ここにあるのはダンジョン都市だけだから冒険者で入れるのは銀ランク以上のみ。よって入領を断る!」


「えっ!?ですが、僕は銀ランクですよ??」


「わかっている。このレベルで銀ランクになるのにどんな手を使ったのか知らないがこちらには関係ない。入る事は禁じる」


他の領地の兵士と違い、かなり上からの言葉と威圧感を醸し出した兵士だった。


「……あっ!」


この頑固者を説き伏せる事が出来ないと悟ったレビンは諦めようかと考えたが、思い出した。


「これを見てください。ミラード辺境伯様からの紹介状です!」


危うくシーベルトの苦労が水の泡になるところであったが、何とか思い出して、背嚢の底から手紙を取り出した。


レベル

レビン:7→8→7(46)

ミルキィ:38→39

レベルは道中に遭遇した魔物を倒して上がりました。

前回は記載していましたが、同じ話は不要と思い、端折りました。


領都と領境を結ぶ街道は一番大きな道であり、多くの人が行き交います。

交易、行商、運搬、兵士の巡回などです。

その為、魔物は殆ど遭遇しません。


逆にそれ以外の道は…お察しの通りです。

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