第二章 終話 感謝。
「デザート王領かぁ。どんな街なんだろうね!」
手紙を託し、次の目的地まで決めてもらったレビン達は領都ミラードでの最後の夜を迎えた。
「楽しみね。ダンジョンっていうモノを初めて聞いたわ。レビンは知っていたみたいだけど、どうせあの本でしょう?」
「あの本って…冒険録の本だよ!僕のバイブルなんだからね!」
レビンはプリプリした…
「えぇ…ごめんなさい…それでダンジョンって何なのかしら?」
若干引き気味に謝るミルキィ。誰しも侵してはならない領域があるのだ……
「ああ、そうだったね。ダンジョンは簡単に言うと魔物の巣窟だよ!
色んな魔物が一箇所に存在しているんだ!」
少し考えたミルキィが質問した。
「それって可能なの?湿地帯みたいに広いところならわかるのだけど、レビンの口振だとそうじゃないのよね?」
「そうなんだよ。ダンジョンっていうのは元々古代遺跡を指す言葉だったんだけど、今では少し意味が違ってきているんだ」
レビンの説明はこうだ。
ダンジョン=古代遺跡だったものが今では
ダンジョン=古代遺跡の中でも魔物が沢山いるところ。
となっていた。
他の古代遺跡の事を今ではそのまま古代遺跡と呼ぶ。
「魔物が沢山いるってどういう事なの?まさか遺跡が管理しているわけじゃないでしょうし」
「そのまさかだよ。古代の文明はどうにかして魔物を生み出して管理する事が出来たみたいなんだ。
今でも何の為にダンジョンが造られたのかは誰もわからないみたいだね。
そしてそのダンジョンが生み出した魔物は僕達が戦ってきた魔物とは少し違うんだ」
レビンはダンジョンの魔物との違いを説明した。
地上では倒した魔物の肉体は残るが、ダンジョンでは魔物は死んでから一定時間が過ぎるとダンジョンに吸収されてしまう。
その際に何も残さない。経験値以外は。
「じゃあお金は儲からないのね?」
「うっ…そういう事になるね…でも、ダンジョンに吸収されちゃう前に剥ぎ取れば魔石くらいなら持ち帰れるって書いてあったよ」
「そう。お金はそこそこあるのでしょう?それならそれが無くなるまでは良いのじゃないかしら。流石に一文なしになるのは止めるわね」
ミルキィはどこまでもレビンに反対しない。
「ははっ!流石に生活できなくなるまでは無理をしないよ。ミルキィもレベルが上がれば今の剣が使えなくなるだろうし、出来ればそれを買うお金を貯めれるくらい魔石を集めたいね」
「そうね。壊さないように気をつけて剣を振るわ」
二人で和気藹々と話をしながら夜は更けていった。
翌日二人は街の入り口である門の前に来ていた。
「あれ?あれって…」
「ええ。シーベルトのようね」
門に向かう二人の視線の先に護衛を何人かつけたシーベルトが待っていた。
「おはようございます。レビン。ミルキィ」
「おはよう!あれ?もしかして見送りに来てくれたの?」
「そうです。お二人に渡したいモノがあったのでここで待っていました。
シーベルトはそういうと、護衛の者から封書を受け取った。
「これです」
封書を渡されたレビン。
「これは何?」
「それは辺境伯が身元を保障する書類になります」
「えっ?僕達は銀ランクのタグがあるから必要ないんじゃ?」
当たり前に思った事だが、好意であるのなら黙って受け取っておけばと、レビンはすぐに後悔した。
「そうです。ですが、二人には何やら事情があると…詮索はしません。
ですが、私のようにお二人の良さがわからない者は必ずいます。
その時にその封書が助けになるはずです」
二人の事情が何かはわからない。
ただ友人である自分にすら言えない事であるなら隠したいはずだ。
そう考えたシーベルトは昨日の夜に父である辺境伯に頼み、書類を作成してもらっていたのだ。
健気…
全ての点が線で繋がったレビンは、嬉しさと話せない悔しさがその胸を締め付けた。
「……あ、ありがとう。シーベルトと友達になれた事が、ミラードに来て一番嬉しい事だったよ…」
声を何とか搾り出したレビンであったが、顔を上げる事は出来なかった。
そんな相方の代わりに。
「ありがとう。シーベルト。何だか助けられてばかりね。次に会う時には友達のシーベルトを助けられるようになっておくから何でも言ってね?」
「ははっ。二人とも大袈裟ですよ!私は父に頼んだだけです。次は私自身の力で助けて見せます!」
ミルキィとシーベルトはかたい握手を交わした。
「じゃあ行くね。また必ず会いにくるから!」
漸く顔を上げたレビンが泣き笑いのような表情でシーベルトに手を振り、ミルキィもそれに続いた。
「はい!命を大切に!いつまでも待っています!」
この世界では旅は命懸けである。
シーベルトの優しさ、思いやりを胸に二人は領都ミラードの門を来た時とは反対方向にくぐった。
「レビン。もしかして…泣いてるの?」
ゴシゴシッ
「な、泣くわけないでしょ!?」
「そう。……ふふっ」
「あっ!?笑ったなぁ!?」
ミラードの街の外に元気な声が響いた。
「えっ!?支援してくださる!?」
ここは山の中の小さな村。そこに野太い男の声が響いた。
「ああ。辺境伯様から難民の受け入れと支援を言い渡されておる。
血の盟約という冒険者からの情報で支援方法は既に決めてある。これが内容だ」
村長代理であるガスは役人から書類を受け取った。
「防護柵の補修…拡張…食糧支援…開拓開墾支援…嘘だろ…」
今のダド村に足りないモノが全て書かれてあった。
「一先ずは難民達には軍用テントが貸し出される。
開拓と開墾が終わり、難民用の新たな住居が出来たら返還するように」
「も、勿論でございます…ありがとうございます!」
ガスは悩んでいた。
自身が生まれた時は200人程の村人が居たが、大人になるにつれて周りから若者が消えていった。
その理由は簡単に想像つくモノではあったが、改善は簡単な事ではなかったのだ。
親からいずれ村長を譲り受けるのは決まっていた。
しかし、寂れていくこの村を維持していく力も、出て行く人を引き止める言葉も持ち合わせていなかった。
自身が幼い頃に楽しみにしていた村の収穫祭も近年取り止めの声が大きくなっていた。
(これで収穫祭どころか新しい村の事業も出来る!)
ガスはこの小さな村に希望という光を齎した、あの小さな二人の英雄に心から感謝した。
「ああ。それと。その血の盟約の二人だが、ミラードを出て行った」
役人から告げられた言葉にガスは目を見開き驚いた。
「ど、どうして…?」
あの二人ならまた来てくれるモノだと勝手に思っていたガスは敬語を使うことすら忘れて、役人に問う。
「理由は知らない。辺境伯様とその二人に感謝して頑張るんだな」
「はい!ありがとうございました!」
またも小さな村に男の野太い声が響いたのだった。
レベル
レビン:7(45)
ミルキィ:38




