難民の事情。
「じゃあお前らは国境を越えてきたっていうのか?」
訝しげに村長代理であるガスが聞いた。
「ああ。今更嘘をついたってどうせ死ぬんだから一緒だ」
「そうか…他の仲間は?」
その問い男は口をつぐむ。
「危害を加えるつもりらねーぞ。ただ敵対してしまったらやるしかねぇ。言ってる意味わかるな?」
「………あぁ」
観念した男は仲間のことを話す。
「俺達の村からは全員で逃げた。ここの村と同じ様な人数だ」
「なに!?」
ガスは思っていたより多かったことに焦るが
「お前さんが何に心配しているのかはわかるが、それはない。無事にここまでこれたのは50人もいない。魔物にやられたり、餓死したりして殆ど死んでしまった」
「…そうか。この近くにいるのか?」
「…あぁ。だが手荒な真似はやめてくれ。勝手を言っているのはわかっているが、隠れているのは殆どが女子供なんだ。頼む…!」
男は藁にもすがる思いでガスに訴えた。それをみて他の元賊達も頭を下げた。
「こちらからどうこうする気はない。だが、牙を剥かれては困る。その辺どうにかならんか?」
「こっちとしては頼むことしか出来ない。みんな何でも出来る!働かせてやってくれないかっ!?」
ガスは考えるが、いい答えを見つけられそうもない。
そこで
「レビン達はどう思う?」
「えっ?」
まさか自分に振られるとは思ってもいなかったレビンは驚いたが…
「その場凌ぎですが…肉があります。皆さんで食べませんか?もちろん元賊であるこの人達も含めて」
人…動物はお腹が空いていると攻撃的になる上に頭も回らない。
そんな意図があったかはわからないが、恐らく同情心が大きかったのは言うまでもない。
「肉?お前達は薬草採取に来たのだろう?」
「はい。その時に狩った魔物の肉ですが…美味しいらしいので皆さんで食べましょう!」
レビンがそう言うと全く予想していなかったところから声が掛かった。
「レビンちゃんっ!」
「うわっ!?と…村長さん?」
レビンを後ろから抱き締めたのは村長だった。
レビンは老婆の身体が小刻みに震えているのを感じ取り、暫く好きにさせるのであった。
「無事でよかったです。怪我はありませんか?」
「レビンちゃん達が無事でえがったぁ…」
レビンの身体をまさぐって怪我がないことを確認した老婆は話を聞かない。
レビンはミルキィを見たが少し衣服に乱れがある為、どうやら自分の前に老婆から手厚い挨拶を受けた様だと理解した。
「しかし良いのか?ダド村は決して裕福じゃないから肉代なんて払えないぞ?」
「それは気にしないでください。恩を返す事が出来る機会に恵まれてありがたいくらいなんですから」
これもダド村の人達が無事だったから言えることだけど。と、レビンは自分の事をしっかりと理解していた。
こうしてレビン達の肉提供による侵略者合同食事会が開かれることになった。
元賊達の事情聴取により明らかになった事を村長代理であるガスがこの村を管理している役所へと提出する為の書類を作った。
特に力を入れて書いたのは、動機、理由、環境、状況などの向こうの事情ばかりであった。
【賊は国境を越えて密入国してきた。下手人は隣国の国境付近の村や町で飢饉が発生して、賊に落ちた隣の国の国民だった、ここに来るまでに魔物にやられたり、飢えて死んだりして数は三分の一以下に。隣国では何処も頼れず、治安も悪く多くの兵士がどの街にもいる為、襲えない。よって助かる道を模索した結果こちらへと向かう事になったようだ】
レビン達は食事会(BBQ)の為に肉と依頼の為の薬草を取りに戻り、帰ってきた。
「こんな感じだが…どう思う?」
村の人達は殆どが村を出た事がない人ばかりでガスが相談できるのはレビンたちだけだった。
「これはお役人の方に報告する為の文書ですか?」
「そうだ。嘆願書や税の報告書は書いた事があるんだが、こういったものは初めてでな…自信がないんだ」
それを読んだレビンは考える。
(ダド村の人達は最優先に守る人達だから加勢したけど…元賊の人達も守らなければならない弱者の気がしてならないなぁ…)
簡単に言うと、レビンはこのまま引き渡して良いのか迷っているのだ。
今回の件に関して言えばそれが一番簡単な解決方法であり、間違いどころか正解である。
しかし、自分の故郷の人が…と、親身になりすぎた結果。
「もう少し待ってもらえませんか?どちらにしてもこの人達の仲間である女性や子供達も連れてこなければいけないので」
「わかった。迎えには着いてきてくれるのか?」
「もちろんです。いいかな?」
「もちろんよ」
ミルキィに確認を取った二人は、捕虜とした元賊の一人に案内を頼み、村人10人と共に村を後にした。
15分程道なき道を歩いた一行は女子供で構成された30人くらいの集団を見つけた。
「お前達の仲間は捕まえた。悪いようにはしないから着いてきなさい」
ガスの言葉を聞いて、大人の女性は泣き崩れた。
「みんな。済まない。俺達は捕まってしまった。だが、この人達が食べ物を恵んでくれる。着いてきてくれないか?」
連れてきた案内役の男が説得に協力した。
以前説明したようにこの国では犯罪者は死罪でない限り奴隷に落とされる。
近隣国も同じ様な制度のため、大人の女性は悲観に暮れた。
生きる希望である男達が捕まった事は大きかった様で、その集団は大人しく着いてくることになった。
「どうせ野垂れ死ぬだけです。わかりました。みんな行きましょう」
年配の女性が皆に指示した。
レビンが逃げない様に最後方から着いて行き、ミルキィは若い女性が安心できる様にその側の見張りについた。
そして一行は村へと帰還した。
「じゃんじゃん食えよ!肉はこの兄ちゃんが取ってきてくれたんだ。お礼を言うんだぞ?」
「「「うん!」」」
ここまで来れた子供達が揃ってレビンにお礼を伝えた。それに倣う様に女性達もお礼を伝える。
もちろんレビンは嬉しくもあり気恥ずかしくもあった。
食事会も落ち着いてきた頃、村長がレビンの元へ来て話し始める。
「こんなちっせぇ子達を奴隷にせにゃならんのけぇ?」
それにはガスが答えた。
「お袋。犯罪は犯罪だ。一歩間違えたら俺達の方に死人が出ていたんだ」
「そりゃわかってるさぁ。でもなぁ…」
そんな二人の話に割って入るモノがいた。
「無かったことにしませんか?」
「「え?」」
その言葉に二人が目を丸くした。
「あの人達は飢饉が理由で仕方なく食べ物を探す為に彷徨っていました。
それで不可抗力で国を跨いでしまい、無事なこの村に救いを求めました。
あの柵が壊れたのは今、皆んなが食べている魔物の仕業です。
それを依頼の為にきた僕達が偶々討伐して、お肉を運ぶ手段がない為、村に提供しました。
それを焼く為に壊れた柵で火を焚き、みんなで美味しくいただきました」
レビンは一呼吸置くと
「これではダメでしょうか?柵は壊した人たちに直してもらいましょう」
「レビンちゃん!アンタ天才だぁ!」
「お袋!……村のみんなを集める。レビン。悪いけどまたそこでそれを説明してくれねぇか?奴隷制度の事も含めて教えればみんな納得するかもしれない」
「もちろんです!頑張ります!」
レビンは二つ返事で答えた。
「私も話すわ」
「えっ?!いいの!?ありがとう!」
ミルキィはミルキィで思うところがあったようだった。
レベル
レビン:7(41)
ミルキィ:34
賊達に対して二人はあまいと思いますが、二人は基本的に激アマなのです。
二人の自分ルールになりますが、二人にとっての悪以外にはと注釈が付きます。




