第一章 終話 村人は剣が買えない。
「昨日は8体で今日は15体も討伐しているのよ?いくらなんでもレベル1のままなんて…」
アイラの指摘にレビンは焦らずに答える。この疑惑がもたれるのは織込み済みだったからだ。
「実は理由は不明ですが僕はレベルが上がりづらい代わりに強いみたいです。もちろん口では何とでも言えると思うので、試されてもいいですよ」
どうせいつかはバレるのであれば大丈夫な方をバラそうと考えていたのだ。
(ここではヴァンパイアの事もミルキィのレベルもバレるわけにはいかない)
もちろんタグを見ればミルキィのレベルはバレるがもちろん見えるところには出していない。
街の門の出入りも知り合いの門番の時はタグのレベル欄を隠して簡単に見せている。初めて街を出る時にしっかりと確認している為、2回目以降はほぼ顔パスで済んでいた。そして知り合いの門番がいない時はお金を払い街に入っていた。
「そうなの…でも大丈夫よ。納品しているのは普通にゴブリンのものだし、問題はないわ。ただ心配なだけよ。ごめんねお節介して」
「いえ。心配して頂きありがとうございます。そういう事なので明日からもゴブリンを倒して来ますね!」
「ええ!レビンくんが強くても気をつけるのよ?後、レベルが1のままだとランクアップが難しいの。もしミルキィちゃんがレベル10を越えたら教えてね!直ぐにでもランクアップの申請をするから」
二人は心配と情報をくれたアイラにお礼を伝えてギルドを出た。
「今度は坊主の番か」
そう二人に告げたのはこの武器屋の店主キルギスである。
「はい!丈夫なロングソードはありますか?」
レビンには解体にも使える短剣があるのだが、強度に不安を感じた為、他の武器を買う事にした。
出来ればミルキィと同じ物の方が緊急時にどちらでも使える為、ロングソードにしようと決めていた。
「予算はどれくらいだ?」
「…金貨2枚です」
ここに来て、旅の軍資金と今まで稼いでいたお金が底をつきかけていた。理由はミルキィの剣であるがそれは口に出さない。…出せない。
「金貨2枚!?そりゃないぞ?嬢ちゃんのロングソードで相場はしってると思うが、金貨5枚はするからな」
「そ、そうですよね…ちなみにここにあるロングソードで一番丈夫なのはいくらですか?」
「丈夫さか…ロングソードは元々肉厚に造られるからそもそも丈夫さを念頭に置いて買うやつは居ないんだよな。
だが、勧めるならこれだな」
店主が見せたそれは普通のロングソードに見えた。
「これは刀身が普通のとはちがうんだぜ?」
そういうと店主は鞘から剣を抜いた。
「綺麗ですね…」
「だろ?こいつが丈夫な理由でな。値も張るがいいもんだな」
そこには黒色の刀身に刃は銀色に輝くロングソードがあった。
「黒曜鉄って素材で出来てる剣だな。値段は金貨30枚だ」
「さ、30…出直して来ます」
元々手も足も出ない金額が6倍にもなってしまった為、すごすごと退散した。
「残念ね。金貨30枚貯まるまでは私の剣を使えばいいわ」
食後、自室にて意気消沈しているレビンにミルキィが優しい言葉で慰めた。
「ダメだよ。その剣はミルキィの安全の為に買ったんだから」
「でも30枚は今の稼ぎだと時間がかかり過ぎるわ。心配してくれるアイラさんにも疑惑があるのよ?私達の事を何とも思っていない人にはさらに疑惑が出るわよ?」
ギルドも何も人がいないわけではない。何処かの冒険者が自分達の異常を知るかもしれないし、ギルドの職員もアイラ一人ではない。
「そうなんだよね…別の街に行こうと思うんだけどミルキィはどう思う?」
「良いんじゃないかしら?いつ出るの?」
「明日は午前中に旅の資金を稼ごう。昼からは次に向かう街の情報収集だね。いいかな?」
「もちろんよ。頑張りましょうね」
二人は明日の予定をたてて眠りについた。
「えっ!?明日ここを出て行くの!?」
次の日の夕方、ギルドにアイラの声が響いた。まだ早い時間の為、人が少なかったのが幸いした。
「はい。ミラードの街に行く用事が出来てしまいました。アイラさんには良くして頂いたのに申し訳ないです」
「それは良いのよ。でも寂しくなるわね。二人の事は街の人達もよく話ていたのに…」
(えっ!?なにそれ!?僕らは知らないよ!?)
「な、何を噂されていたのですか?」
「ミルキィちゃんよ。あんなに可愛くて冒険者なんて出来るのかってもっぱらの噂よ?私はそれを聞く度にレビンくんも可愛いって広めておいたわ!」
(ほっ…そんなことか…いや、実際に目立って居たのなら安心は出来ないな。早めに出る事を決めて良かったよ)
「僕の事はどうでもいいですが…わかりました。
次の街でも頑張るのでアイラさんもお身体に気をつけて頑張ってください」
二人は今までのお礼を言ってギルドを後にしようとしたら後ろから声をかけられた。
「待ってください!ミルキィ・レーヴンさんですか?」
知らないギルド職員だった。
「はい。そうですが…」
「やっぱり!噂通りの美人さんだったのですぐにわかりましたよ!こちら手紙です!受領にサインをお願いします」
噂が役に立つ事もあるんだとレビンはサインしているミルキィを見つめた。
手紙を受け取った二人は今度こそギルドを後にした。
「誰からだったの?」
宿に帰ったレビンは手紙の送り主を聞いた。
「まだ見てないけどママしか有り得ないわ」
「そうだよね」
そう言いながらミルキィは手紙の封を切った。
「これは…うそっ…」
手紙を読んで絶句したミルキィ。それを不安な目で見つめるレビン。
静寂が部屋を包んだ。
「ごめんなさい。驚く事が書いてあったの。見てみる?」
「いいの?じゃあ遠慮なく…読めない…」
静寂を破り声を出したミルキィは手紙をレビンに渡すが…
「そうでしょ?これはママから教えてもらった文字なの。何処の文字か知らなかったけど、その手紙でわかったわ」
「えっ…どこの文字なの?」
「それよりも翻訳した方が早いわね」
そういうとレビンから手紙を受け取り読み上げていく。
『頑張っているかしら?この手紙には貴女に黙っていた秘密を書くわ。
貴女のお父さんのことよ。貴女にはバーンと言っていたけど正確には『バーンナッド・レーヴン』エルフの王族なの。
エルフは人族の街では目立つ上に自分は王族であるため、姿を隠していたの。そこでお母さんと会うのだけどそれは割愛するわ。この小さな紙には書ききれないもの。
本題よ。貴女のお父さんは生きているわ。貴女が産まれてからすぐにトラブルに遭い、エルフの国にどうしても戻らなければならなくなったの。
もし探すのなら気をつけてね。レビンくんと末永く幸せに。
貴女の幸せを願って。レイラ・レーヴンより』
「エルフ語なんだね。お父さんがエルフだったのか。お母さんも美人だったけどお父さんがエルフならもしかしたらミルキィはお父さん似なのかもね」
エルフが美形揃いなことは世界共通の知識だ。掛ける言葉が見当たらずそんな冗談が口をついて出た。
「パパは死んだと聞かされていたわ。生きていたのね…」
「どうする?お父さんを探すならもちろん一緒に行くよ」
今更離れてなど暮らせない。レベルの事もあるがミルキィのいない生活が考えられなくなっていた。
「ふふっ。安心して。居なくなったりしないから。それに探しになんて行かないわ。向こうが会いに来るのが筋よ!」
「わかったよ。確かにミルキィからすればどんな理由があったにせよ許せないよね。じゃあ僕らは予定通り次の街を目指そう」
翌日から始まる旅を考えると早く寝てしまいたかったが、ミルキィは中々寝付けなかったのであった。
『追伸。初めての吸血衝動前後は情緒不安定になるけどレビンくんと喧嘩しちゃダメよ?』
(通りでイライラしたりしたわけよね…まぁレビンは気にしてなかったからいいけど)
レベル
レビン:1→0→1→0→1→0→1(34)
ミルキィ:30→33
第一章を読んでくださりありがとうございました。
この後も続くのでよろしくお願いします。
もういつくっ付いても良さそうなのですが、どうやらこの二人にはそんな事をしている暇はなさそうですね。
二章はテンプレ回になる予定ですので好きな方は是非楽しみにしていてください。
好きじゃない方は…是非!読んでください!←
本日1話目という事は、そうです!この後も投稿があります!しかし二章ではないのです。が!物語に重要な話となっています。
以前にも書きましたがこの世界の金貨(500円硬貨より一回り以上小さい)の価値は10,000円くらいの設定です。物価の違いはあれど、地球では10万円以上の価値はありそうなサイズ感ですが、あくまでもわかりやすい設定にこだわっただけなのであまりにも不評であれば変えるかもしれません。
この世界の金や銀の埋蔵量が多いと考えていただければ整合性は取れます。
それを踏まえてもご納得頂きづらい場合は感想にてお願いします。




