10・バトル&リザルト
今回で第一章は終了ですわ。(厳密に言えば、次の登場人物にて)。
森の中を歩いている桜…ふと桜は、ある事を考えて、ルーチェに尋ねた。
「ねえルーチェ…僕はヴァンパイア・ロードだけど、僕以外にもヴァンパイアは居るの?」
『嘗ては大勢居ましたが、今はヴァンパイアハンターやスレイヤーズに退治されて、殆ど残っていません』
「そうなんだ…やっぱりハンターとかは居るのか…もう一つ質問、ヴァンパイアって血を吸うけど、それって僕も血を吸うんだよね?」
『そうです』
「…吸わないと、死んじゃう?」
正直、元・人間である為に、桜は吸血行為に抵抗を感じていた。
『大丈夫です。この世界のヴァンパイア・ロードであっても、人間と同じ食事で空腹は満たされます』
「えっ? そうなの? じゃあ何の為に吸血を?」
『人間でいう、飲酒の様な物です。ですからマスターが望まなければ、特に問題はありません』
「あ、そうなんだ…僕は未成年だから、酒の気持ちは分からないけど、必ず吸う必要性は無いんだ…でももし吸ったりしたら、その人もヴァンパイアになるんでしょ?」
桜は前世で見た映画で、ヴァンパイアに血を吸われた人や、ヴァンパイアに殺された人がヴァンパイアになるというシーンを沢山見てきた為に、そう考えてしまった。
『それも大丈夫です。マスターによる吸血・殺害により、相手がヴァンパイアになる事はありません』
「そ、そうなんだ…吸血は兎も角、人は殺したくないよ…」
そう言った桜であったが、此処は異世界である為に、前世で見てきたラノベでも、転生者や転移者が、人を殺すシーンはあった為、何時かはその様な事が起きてしまう不安があった。
『でも…出来れば、殺したくない…』
そう思う桜だったが、それは無理な願いではないかという考えも思いながら、
森の中を歩いて行った。
※ ※
それから暫く、森の中を歩いている時であった。
「!」
前方の茂みから、複数の気配を感じた。
「ルーチェ…」
『マスター、敵です!』
ルーチェの肯定する言葉を聞くと、腰のヴァンパイア・ハートを取り出して、振りながら広げる。
『マスター、ライブル・ゴーグルを目に装着して下さい。其れには敵の残数や位置を確認する機能があります』
ルーチェの指示を受け、桜は素早くライブル・ゴーグルを装着する。その時…
「キキィィィィ!!!」
おぞましい雄叫びと共に、茂みの中から木の棍棒の様な物を持った、小鬼の様な生物が、三体飛び出て来た。
桜はライブル・ゴーグルで、小鬼を見てみる。其れには『ゴブリン』と表示されていた。
「やっぱりゴブリン…」
桜はゲームで出て来たゴブリンと、目の前のゴブリンが酷似していた為、直ぐに気付いていた。
「キィイ! キィイ!」
ゴブリンは興奮する様に、桜を見ていた。桜は無自覚であったが、ニーハイブーツを履いた純白の足は、ゴブリンの欲求を刺激するのに充分だった。
そんな事を知らない桜は、ライブル・ゴーグルに表示されている、敵の数を確認していた。
「数字は…三…って事は、これ以上は居ないって事か…」
「キキィイ!!!」
伏兵等を居ない事を安心した時、一体のゴブリンが襲いかかってきた。
「ッッ!!!」
咄嗟に桜は、ヴァンパイア・ハートをゴブリンに向かって振るった。
バシィィン!!!
「ギィイ!?」
弾かれる様な音と共に、ゴブリンはヴァンパイア・ハートに当たって弾かれ、そのまま近くの木に当たって動かなくなった。
桜は覚悟を決めて、残りのゴブリンに強い視線を向ける。
「キィイ! キィイ!」
仲間が殺された事に腹を立てたのか、残りの二体が同時に襲いかかってきた。
桜は素早くヴァンパイア・ハートを振るった。ヴァンパイア・ハートの鞭先は、激しい音を立てながら、その内一体のゴブリンを滅多打ちにした。
やがてゴブリンは絶命し、動かなくなった。
「ギャギィ!!!」
「!」
すると時間差で、最後のゴブリンが襲いかかってきた。桜が持っているヴァンパイア・ハートは、二体目のゴブリンを滅多打ちをした反動で、反応が出来なかった。
咄嗟に桜はヴァンパイア・ハートを手放して、拳で殴り掛かった。
「ダメ元だけど…やってやる!」
勢いに任せて桜は、ゴブリンの横っ面を殴った…殴られたゴブリンは、回転しながら十m程吹き飛んで、倒れて動かなかった。
「えっ…? 何で…あんなに飛んだの…? 桃華姉から色々教わってたけど…幾ら何でも、あそこまで飛ぶ程、僕の力は強くないのに…」
予想を遥かに上回る威力に、桜は戸惑う。するとルーチェが…
『マスターはヴァンパイア・ロードです。その為にマスターの身体能力は、人間だった時より、大幅に強化されています』
「そういえば…映画とかの吸血鬼って、確かに凄い力だったな…それは兎も角…初戦闘は、自己評価では四十点くらいかな…」
桜は落としたヴァンパイア・ハートを拾って丸める。
「鞭を使うゲームのイメージで攻撃したけど、まだまだ練習が必要だね」
『マスターなら、すぐに戦闘慣れをします』
ルーチェから背中を押される。
「ありがとう…うん?」
その時桜は、死んでいるゴブリンの体内に、光る物が見えた。近づいて取ってみると、それは石であった。
「ルーチェ、これは?」
『それは魔物の体内に存在する、魔石と呼ばれる物です。此れ等は売って金銭となります。但しゴブリンのは低価格です』
ルーチェの説明を受けて、桜は納得する。
「ラノベでもあったな…やっぱりゴブリンのは安いか…この先二つの鍵を見つけるには、お金が必要だし…となるともっと強い魔物を倒さないと…自身ないけどね」
『マスターは…』
「最強の吸血鬼、ヴァンパイア・ロードでしょ?」
ルーチェの言葉を遮る様に、桜が言った。
「じゃあ、仰せの通りに頑張るとするよ…必ず地球に帰る…その為にもね…」
そう決意し桜は、森の中を進んでいった。
鞭の攻撃のイメージは、『キャッスルヴァニア』というゲームから来ていますわ。ヴァンパイア・ハートも、そのゲームから来ています。
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