26・ガンナーの旅の途中
今回はカイルサイドですわ。
区切りが良い為に、今回は短いですわ。
チーン…
ベルの音が、店内に鳴り響く。
チーン! チーン! チーン!
何度も鳴り響く。
チン! チン! チン!
短い間隔で、鳴り響く。
ガン! ガン! ガン!
とうとうベル自体を、店のカウンターに叩きつけ始めた。
「うっるさいわね! 一体何なの!?」
あまりのしつこさに、店の奥から中年の女性が、文句を言いながら出て来た。
「一回鳴らせば聞こえるわよ! 何度も何度も…一体何の用なの!?」
激しい口調で叫ぶ中年女性…
「何って、飯買いに来たに決まってんだろ? 俺がリンゴでも売りに来たように見えるか? 目開けたまま寝言言ってんじゃねぇよ、このババア」
それに対して冷静な口調で返したのは、ウェスタンハットを被った黒猫獣人・カイルであった。
「…そうね」
至極当然な内容だったからか、はたまたカイルから威圧でも感じたのか、先程とは打って変わって、女性は落ち着いた口調で返した。
※ ※
食べ物が入った二つの紙袋を持って、店から出てくるカイル。向かう先には自身が乗ってきたオートモービルのジープ、そして武器や道具が積まれたトラックがあり、その傍らでは、トラックに給油作業をしている、ローベルの姿があった。
「どうだローベル? 給油は終わったか?」
「今終わった所だよカイル。食事は買ってきた?」
「ああ、変なババアが店番だったけどな」
そう言いながらカイルは、紙袋の一つをローベルに投げ渡す。
「それにしても危なかったね、あとちょっとでガス欠だったよ」
ローベルが、紙袋の中のパンを取り出して食べながら言った。
「ガソリン売ってる所が、この辺り全然無いからな…この国は俺達の国より、オートモービルが普及していないらしい」
カイルもパンを食べながら言った。
「それで、これから本国に戻る訳だけど…」
「ああ、今日中には着かないな。野営が面倒くさかったら、行く時に立ち寄った街で一泊しようぜ。行きと違って今は俺達二人だけだから、ボスが選んだ安宿よりマシなヤツに泊まろうぜ」
そう言いながら、紙袋に入っていた瓶の果実水を口に含むカイル。
※ ※
カイルが運転するジープが先導し、その後をローベルが運転するトラックが追走する形で走る二台のオートモービル。
カイルは舗装されていない道の為に、尻を痛くしながら付近の地図を取り出して、行きの途中で寄った街を調べる。
「えっと…ああ、此処だな」
カイルが近くにある街を突き止めて、其方へとハンドルを切る。ローベルが運転するトラックも順ずる。
そのまま少し走り続けると、目的地の街が見えてきた。
「あれだな…『ファルマ』って街は…」
見えてきた街を見ながら、その名を呟いたカイル。
ヴァンパイア・ロードのサクラ、黒猫獣人のカイル。二人は近づいていた。
近づいているサクラとカイル。
カイルの店のやり取りは、あるヴァンパイア映画のシーンを元にしていますわ。因みにそっちはモーテルですわ。
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