25・初めての街
ようやく最初の街ですわ。ゲームやってましたわ。すみません。
「んっ? あれは…」
飛行するサクラの目先に、中規模の街が見えてきた。
「街だ…あの規模なら、冒険者ギルド的な物はあるかな?」
『余程小さな村や街でなければ、ギルドは存在します』
サクラの疑問に、ルーチェが答える。
「ならあそこで、手に入れた魔石を換金するかな…そうだ、街に近づいたら、着陸しないと…僕がヴァンパイアだってバレてしまう…」
ルーチェの話では、この世界のヴァンパイアは六百年前に滅びたらしいが、現在でも退治方法は一部に伝わっているらしく、それを聞いたサクラはハンターやスレイヤーに注意する為に、ヴァンパイア・ロードである事を隠す事に決めた。
「まあ、まさかヴァンパイアが真っ昼間に白昼堂々と歩いているなんて、ラノベやゲームの吸血鬼を知らないと、誰も想像出来ないから、バレないと思うけど…」
そう思いながらも、サクラは注意に越した事はないと考えた。
やがて街から二百m程離れた所まで行くと、サクラは地上に着陸し、翼を消した。
「此処からは歩くか…ルーチェ、僕はこの世界の事が良く分からないから、サポートをお願いね!」
『了解しました』
サクラはルーチェにサポートを頼むと、街へと歩き出した。
少し歩くと街の入り口が見えてきた。入り口は小さな城壁の様になっており、その手前には小さな詰所の様な小屋と、番兵らしき姿が見えた。
「…この世界に於いての、初めてのコンタクト…」
サクラは深呼吸し、足を進めた。
番兵は別の方角を見ていたので、サクラがやって来た事に気付いていない。
「あの…」
仕方が無いので声を掛ける。
「んっ? 何…」
気付いて振り向いた番兵が、サクラに答えようとした時、番兵が目を見開いて言葉を詰まらせる。
「?」
不自然な番兵に、サクラは首を傾げる。
「……」
番兵は顔を赤らめながら、サクラから目を逸らした。
『何だ…? この番兵…僕の顔に何か付いているのかな?』
銀色の長い髪に透き通るような白い肌、それに合っている紅い瞳と口元から見える八重歯(牙)、真っ黒なベストを押し上げる豊満な胸、魅了する様なニーハイブーツを履いた美脚と太股…そして何より整った顔の絶世の美少女…サクラの容姿に番兵は戸惑ってしまったのだ。
サクラがそれに気づかないのは、自分が美少女という考えは、あくまで地球…強いて言えば、サクラの美感覚の判断であった為に、この世界でも同一とは考えていなかったのである。
「あの、すみません?」
「んっ!? ああ、何だ?」
不審に思いながらも再度尋ねると、今度は応じてくれた。
「僕は旅の者なんですけど、この街に冒険者ギルドみたいなものは、ありますか?」
「ギルド? いや、この街には無いな…もう少し大きな街ならあるが」
「そうですか…」
番兵に言われて、サクラは考える。
『どうするかな? 魔石とかってラノベでは、冒険者ギルドみたいなのしか買い取ってくれないよね…』
『番兵なら相場より低いですが、買い取ってもらえます』
ルーチェの助言に、サクラは決めた。
「『…背に腹は代えられない…なんせこの世界では僕は、無一文なんだから…』すみませんが、此処に来るまでの間に、魔物を何体か倒したので、魔石を買い取って欲しいんですが?」
「魔石を?」
「駄目…ですか?」
「!!!」
意図した訳ではないが、サクラは番兵の顔を覗き込む様な仕草をし、番兵を誘惑する様にする。
「い、いや…大丈夫だ! じゃあ査定をするから、詰所に来てくれ」
「! ありがとうございます!」
サクラは喜んで、礼を述べる。
「じゃあ此方へ…それから、ようこそ『ファルマ』へ」
街の名前は、『ファルマ』というらしく、サクラは番兵に案内されて、詰所へと向かった。
ある意味無自覚美少女のサクラ。
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